もしも人間の世界で起こったら…?

ニュージーランドが国鳥に指定している飛べない鳥、キーウィは深刻な絶滅の危機に瀕しています。昔はキーウィの楽園だった島も、人間が船で持ち込んだ外来種のオポッサム、ネズミ、イタチなどであふれかえり、身を守る術のないキーウィは次々と襲われ、減少の一途をたどっています。

この問題に取り組んできた多くの人々が、もはや尋常な手段では、キーウィをはじめとする貴重なニュージーランド本来の生態系を守れないと考えてきています。MIT Technology Reviewによると、このほど白羽の矢が立った計画は、なんと遺伝子編集を行ない、外来種の繁殖を根源から絶ってしまおうというもの。


空から毒を撒くなどの手段を使うことなく、遺伝子編集というアプローチで、外敵を駆除できるとの考えは、あまりにも楽観的すぎると思われることだろう。


同計画を発表したニュージーランド自然保護局のJosh Kemp氏は、このようにコメントしています。まだ計画は初期段階にあるため、効果には未知数の部分も多いものの、政府が全面的にバックアップするPredator Free New Zealandは、科学的な手法で外来種を撃退し、ニュージーランドの自然を守ることを宣言。遺伝子編集というアプローチは、大いに支持されているようです。

オーストラリアと米国の共同研究チームが提唱する同計画は、ネズミに遺伝子編集を行ってオスのネズミしか生まれないように操作するというもの。交尾相手を見つけられない世代が増えていくので自然と種の滅亡にいたるというシナリオが描かれています!


環境保護とは、自然界を大切に守ることです。人の手で作り変えたりすることではありません。


しかし、このように語った環境弁護士のClaire Hope Cummings氏をはじめとし、野生動物に遺伝子編集を施す同計画は、国内外で反対にも直面しています。実は過去にも、ハワイで蚊の駆除に遺伝子編集を用いる計画が持ち上がったことがあるのですが、多方面からの激しい反対にあって実現にはいたりませんでした。国連でも、遺伝子編集のあり方については、倫理的な制限を設けるべきだとの意見が大勢を占めるようにもなっています。

それに、たとえ同計画にゴーサインが出たとしても、そもそも意図的に遺伝子編集された動物は、その後も何世代にもわたって同じ特性を有し続けられるのかどうかは定かではありません。オスしか生めないはずが、数世代後になると、再び正常にオスもメスも生める個体が出現する可能性は高いんだとか。あるいは、せっかく遺伝子編集されたネズミを放っても、野生のネズミたちからは見向きもされず、結局は意図したような個体が広がっていかない展開もありえるとのこと。

いずれにせよ、勝手に人間が動物の遺伝子を編集し、望みの姿の子孫しか生み出せないようにするなんて、許されてよいものなのか? この問いをめぐっては、まだまだ議論が重ねられていくことでしょう。それにしても遺伝子編集で、生まれてくる子どもの性別を絞れてしまうとは、人間に用いられることのないよう願うばかりです。


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image: Christoph Burgstedt / Shutterstock.com
source: MIT Technology Review

George Dvorsky - Gizmodo US[原文]
(湯木進悟)