清水から新加入の石毛。新天地で一皮むけられるか。写真:寺田弘幸

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 2月15日に行なわれた広島とのトレーニングマッチ。石毛秀樹は攻守に関わろうと懸命にピッチを駆け回った。長澤徹監督に与えられているポジションはボランチ。「たくさんボールを触りながらリズムを作った方が自分の良さが出る。楽しくやれています」と背番号8は、生まれ育った清水を離れ、新天地で任されたポジションにやりがいを感じて取り組んでいる。
 
 しかし、広島を相手にしてボールを触る回数を増やすことは容易ではない。前半は守備に奔走することになって存在感を示せない時間が続いた。
 
 むろん、それは石毛ひとりだけの問題ではない。「守る時間が長くなるってことはみんなで話していた」という石毛は、チーム全体で我慢強く戦っているなかで、必死に相手に食らいついた。試合後、石毛が最初に口にしたのも守備面への手応えだった。
「ボックスの中で身体を張ることだったりプレスバックして守備をすることはやれていたと思う」
 
 しかし、前半の45分間は石毛にとって納得できるものではなかった。「前半は自分がボールを触る回数が少なかったから、1トップの(藤本)佳希君に入れるパスが長いパスが多くなった。なので、佳希君も収めづらかったと思う」と前半の問題点を感じて臨んだ後半は、積極的にボールを受けて打開策を提示していった。
 
「後半は(伊藤)大介君と(関戸)健二君と3人で細かいパスを回して全体のラインを上げながら佳希君にパスを出せるようになった。後半は良くなったと思うし、1試合の間で進化を感じられたのは良かった」
 石毛は試合中に起きた問題をピッチ上で解決できたことに確かな手応えを掴んでいた。
 
「本当に強い気持ちを持って岡山にやってきました。去年は自分にとって満足のまったくできないシーズンになってしまったので、勝負の年として今年は何事にも強い気持ちを持ってチャレンジしていって、自分が成長できるようにやっていきたい」
 新体制発表会見で語った言葉に嘘偽りがないことを石毛はプレシーズンから示している。
 石毛の覚悟を感じ取る長澤監督は、「カテゴリーを落として来たからもう後がないんでしょ」とニヤリと笑う。頭ごなしに要求を突きつけることをせず石毛の成長を施していくつもりだ。
 
「彼らしくプレーしてくれればいい。もっと自分で何ができるかを表現できれば、おのずと周りも認めてくるでしょう。そうなったら面白くなる」
 
 長澤監督をはじめ布啓一郎コーチや牧内辰也コーチら育成年代の指導に長く携わってきたスタッフが揃う岡山は、選手の個性を生かしながら成長を手助けしてくれる申し分ない環境がある。豊川雄太がレンタル期間を一年延長して今季も岡山でプレーすることを決めた理由も「テツさんとコーチの方々からもう一年学びたいと思った」から。昨年までの2年間を岡山でプレーした矢島慎也(浦和)がたくましく成長を遂げていったように、サッカーの本質にしっかりと目を向けながら自分の能力を開花していくには絶好のチームで、これから石毛には充実した日々が待ち受けているに違いない。
 
 矢島が巣立った後で、今年は石毛秀樹という才能が育まれていく。
「チームになくてはならない選手って言われたい」
 矢島が“言われていた”存在を目指す石毛が、シーズン経過とともにそう言われる存在になっていけば、岡山のJ1への挑戦も具体性を増していくことになる。
 
取材・文:寺田弘幸(フリーライター)