中国・北京の道路。中国の1月の新車販売は不振だった


 2月13日OPECが公表した月報によれば、今年1月のOPEC全体の原油生産量は、前月比日量平89.2万バレル減の日量3213.9万バレルだった。この生産量は、2016年11月末にOPEC総会で決定(減産合意)した上限目標(日量3250万バレル)を下回っている。

 国際エネルギー機関(IEA)は2月10日、「OPEC加盟国の1月の減産遵守率は90%(サウジアラビアの遵守率は116%)」という調査結果を発表した。非OPEC加盟国の減産遵守率は40%と振るわなかったが、OPEC加盟国の減産遵守率の数字を受け米WTI原油価格は1バレル=54ドルに上昇した。

 だが、週をまたいだ13日の原油市場ではこの調査結果は材料とならず、米国のシェールオイルの生産活動が盛り返していることなどが嫌気され、原油価格は約3週間ぶりの大幅な下げとなった(1バレル=52ドル台)。

「OPECが夏までに達成できる減産と、米国のシェールオイル増産など、減産の効果を薄めてしまう他国の増産を秤にかけなくてはならない」とする市場関係者は多い。そのため、「『強材料』が続いても、レンジ圏(1バレル=50〜55ドル)の上値付近から続伸することなく調整の下げに転じる」との年初来のパターンが繰り返されたようだ。

「減産量をもっと拡大すべき」との声も

 クウェートの石油相は2月13日、「OPECの減産遵守率が100%に達すれば原油価格は上昇する」という楽観的な見方を示した。

 しかしOPECの月報のデータは、OPEC産原油の需給を均衡させるためには、現在の減産の規模が不十分であることを示唆している。データによれば、1月のOPECの生産量(3214万バレル)に対し、OPECが予測する今年第1四半期のOPEC産原油の需要量は日量3106万バレル、第2四半期の需要量は同3159万バレルとなっている。

「OPECは原油の減産量を今年下半期にもう少し拡大すべき」(イランの石油相、2月7日)との声もある。イラン石油省は9日には「原油市場の需給バランスを回復するには、OPECと主要産油国が年後半も減産を実行する必要が生じかねない」と指摘した。ちなみに同相は「OPECにとっては1バレル=60ドルの原油価格が望ましい」としている。

 OPEC事務局も「原油市場の需給が均衡するのは年後半であり、今年後半に加盟国が増産に動けば、市場の過剰供給の解消が遅れるおそれがある」と懸念している。

割を食いたくないサウジアラビア

 しかし、サウジアラビアは今年後半も減産を続けることには拒否反応を示す。

 ロシアのエネルギー相は2月11日、「3月にサウジアラビア政府と減産合意の延長について協議する」と述べた。だが、減産合意の主役であるサウジアラビアは「現時点で延長の必要はない」との考えを変えていない。

 サウジアラビアが1月の原油生産量(日量974.8万バレル、前月より71.8万バレル減少)を維持すれば、夏場の国内の原油需要の増加に対応するため原油の輸出を減らさざるを得なくなり、当然、輸出収入は減少する。加えて「仇敵」のイランが減産の対象から外れていることを奇貨としてアジア市場でのシェアを拡大しており、サウジアラビアが内心忸怩たる思いであるのは想像に難くない。

 OPECは、5月25日に開催する次回の総会で、減産延長の是非を最終的に判断する予定である。しかし、「かつてのような『スイングプロデューサー(需給の調整役)』を引き受けることで自国だけが『割を食う』事態は、なんとしてでも避けなければならない」との方針にサウジアラビア政府が固執すれば、OPECの協調体制は一気に瓦解する可能性がある(大手格付け会社フィッチは「減産合意の延長がなければ原油価格は急落する可能性が高い」としている)。

鈍化する中国の新車販売

 筆者が常に注目している需要面はどうだろうか。

 カタールのエネルギー相は2月9日、「シェールオイルの生産が増加したとしても、世界全体の原油需要がその増加分を吸収する」と述べた。IEAも10日、「今年の世界の原油需要は日量140万バレル増加する」としており、需要は引き続き堅調であるとの見方を示している。だが、はたしてそうだろうか。

 個別に見ていくと、中国の1月の原油輸入量は前年比27.5%増の日量804万バレル(前月比は3カ月振りのマイナスだった)と引き続き高水準であったが、低油価による国内の原油生産が低調であることがその主要因だと考えられる。

 中国で気になるのは、1月の新車販売の不振である。

 中国の業界団体(CAAM)が2月13日に発表した1月の自動車販売台数は、前年比0.2%増の252万だった。伸び率は昨年2月(0.9%減)以来最低となり、昨年12月(9.5%増)、11月(16.6%増)から大きく鈍化した。小型車に適用される減税幅が縮小したことなどが影響したとされているが、CAAMは今年の自動車販売は5%増となり昨年の13.7%増を大きく下回るとしている。1月の自動車在庫も390万台を突破し、2004年以来の記録的な水準に達した。2月はさらに増加することが確実視されている。

 中国では「茶壺」(ティーポット)と呼ばれる民間製油所の原油需要も大きく落ち込んだようだ。これまで2年近く、中国からの石油製品の輸出超過量が拡大を続けていたが、「茶壺」に対する石油製品の輸出枠が今年から撤廃されたため、1月の石油製品の純輸出量は44万トンと前月(200万トン超)に比べて大幅減になった。「茶壺」の石油製品輸出向けの原油輸入需要が消滅したことで、中国の原油輸入量が減少するのは確実だろう。

「第2の中国」と期待されるインドでは、1月の新車販売台数は約33万台となり、3か月にプラスに転じた。昨年11月の2種類の高額紙幣の廃止による経済の混乱の影響は四輪車では収まりつつある。一方で、現金決済が多い二輪車の販売台数は引き続き減少している(インド中央銀行は現金の引き出し制限を3月13日に解除するとしている)。

原油価格低下を招くかもしれない「伏兵」

 世界最大の原油需要国である米国の市場も、弱含んでいる。

 米エネルギー省が2月10日に発表した統計によれば、原油在庫、ガソリン在庫ともに過去最高となった。市場関係者が特に驚いているのは、ガソリン需要が直近1カ月で日量900万バレルから820万バレルに激減したことである。

 2月1日に発表された1月の米新車販売台数は前年比1.8%減の114万台となり、3カ月ぶりに前年比を下回った。過去最高を記録した昨年から一転、今年の販売は下向くとの見方が強まっている。

 このように需給が軟調になっている米国で、思わぬ「伏兵」が頭をもたげつつある。

 1月に米エネルギー省が、「2月末までに最大1000万バレル規模の『戦略国家備蓄(SPR)』の原油を市場に放出する」ことを決定したからである。

 SPRとは、1973年からの第1次石油危機の教訓から原油の輸入停止などの非常事態に備え純輸入量の90日分の原油を政府が備蓄する制度である(日本も政府が90日分の原油を備蓄している)。米国では現在約7億バレルの原油が備蓄されているが、シェール革命により原油の輸入量が激減したことや財政赤字の穴埋めを行うとの観点から、2015年10月の議会で「5800万バレル分の原油を2017年から8年をかけて放出する」ことを決定していた。

 SPR原油は、1991年(湾岸戦争時)に1720万バレル、2005年(ハリケーン「カトリーナ」の襲来時)に1100万バレル、2011年(リビア政変時)に3060万バレル放出されているが、いずれも原油価格の「沈静化」に役立っている。

 市場が膠着状態にあるときには「伏兵」が大きな変化をもたらすことが少なくない。過去の放出時と異なり、今回の放出は望まざる原油価格の低下を招くかもしれない。

市場で急速に「下げ」の動きが出る兆し

 最後に市場の動向を見てみよう。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、過去最高を更新していたヘッジファンドによるWTI先物とオプションの買越残高(7日時点)が1カ月ぶりに減少に転じている。

 これまで市場では「OPECが世界的な原油供給過剰を緩和する」との楽観的な見方が大勢だった。だが、それが縮小し始めているのである。1月の米消費者物価指数(CPI)が予想を上回る上昇になったことでFRBの3月利上げの可能性が出てきたことも、原油価格への下押し圧力になりつつある。

 2月14日付ブルームバーグは「投資家とOPECの蜜月関係に陰り」と報じた。現在の取引レンジに疲労感が出始めた市場で、急速に下げの動きが出る兆しが高まっているのではないだろうか。

筆者:藤 和彦