阪神のドラフト5位・糸原の評価が急上昇(写真・黒田史夫)

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 阪神の2人の新人野手が明暗を分けている。ドラフト1位の大山悠輔(22、白鴎大)とドラフト5位の糸原健斗(24、JX-ENEOS)の2人だ。16日、沖縄・宜野座で行われた韓国プロ野球サムスン・ライオンズとの練習試合で、大山は「8番・三塁」、糸原は「2番・二塁」で揃ってスタメン出場。大山は4打数ノーヒットで、ひとつ見逃しの三振を喫したが、糸原の方は初回無死一塁で右翼線に二塁打を放つなど、3打数1安打と結果を残した。

 守りでも大山が初回に先頭打者の三遊間を襲う打球がグラブの下をすり抜けるなどプロの打球に対する対応力不足を露呈したが(記録はヒット)、糸原は、3回に同じ打者の一、二塁間を襲う打球を横っ飛びで好捕してアウトにするなどアピール度は対照的だった。

 大山は、まだ紅白戦を通じて“プロ初ヒット”がなく、糸原の方は紅白戦から続けて結果を残している。

 佐野スカウト部長と、先日話をしたとき、「糸原は足が遅いと見られていて他球団からは敬遠されたようだが、見てたらわかると思うけど、そんなに遅くはない。守りはプロのレベルにあるし、バッティングも明治大から社会人に進んでから、スピードに負けない力強さが出てきた。それと一番は、島根の開星高校時代に野々村監督に鍛えられたハート。あの監督がお墨付きを与えたほどのメンタルの強さは、プロで成功する条件を満たしている」と、糸原の獲得秘話を教えてくれたが、まさに実戦向き。広島の田中や、横浜DeNAの倉本に代表されるように、大学ー社会人で経験を得た左打ちの内野手はプロで成功する例が目立つ。
 
 一方、大山に関しても、金本監督はキャンプ初日に「すぐに1軍では無理かもしれない」と本音を隠さなかったものの、ずっと「実戦向き。打球の角度はいいし、力をつけたらホームラン打者になれる」と、その潜在能力と対応力を評価してきた。
 だが、大山のこの日の最終打席の見送りの三振では、大きな不安が露呈した。ストレートを見逃し、カーブを見逃し、最後はインサイドのストレートに手が動かず、早くもプロの迷宮に入り込みつつあるのだ。
  

 キャンプで2人のバッティングを見た元千葉ロッテの評論家、里崎智也氏は、「大山は、動きの中でいわゆる体の左の壁がなく、ボールに衝突しにいくような形になってしまっていて、まだ時間がかかりそうな印象を持った。ボールとの距離がつまって、プロの揺さぶりに対応できなくなる。逆に糸原は、軸と壁をしっかりと作ることができている。逆方向にも打てるし、実戦向きかもしれない」と分析していた。
 
 大山は右ひざの送り方を金本監督から指導されているが、いざ実戦になると、左ひざが開きバッティングの“間”を作ることができていない。
 
 阪神キャンプをマークしている他球団スコアラーの大山、糸原評も、おおむね里崎氏の分析と重なっていて、糸原は「即戦力」、大山は「時間がかかる」と見ている。

 だが、これらの現状も阪神にしてみれば想定内。“嬉しい誤算”とも言える。

 ショートは北條と鳥谷が争っているが、北條がここまで成長&存在感を示している。若手育成を優先事項にしている金本監督が北條を使うとなると、浮いた鳥谷は、二塁か、三塁へ回ることになるが、三塁を予定している新外国人のキャンベルがまだ未知数。そして、上本らがいる二塁も、まだレギュラーが確定していない。それらの現状からすれば、そこに糸原という二塁を守ることのできるカードが一枚プラスされることは、金本監督の選択肢が増えることにつながる。あらゆるケースでのリスクマネジメントが可能になるのだ。

 しかも、三塁に関しては、大山が即戦力で使えなくとも、高知・安芸の2軍キャンプで調整中の陽川が、大規模な打撃修正に成功しており、見違えるような成長を遂げている。

 ドラフトの本当の答え合わせは、10年後に残っているかどうか。しかし、今季に関して言えば、ドラ1の大山がすぐに使えなくとも、ドラフト5位まで残っていた糸原が、大きな可能性をアピールしているのは、阪神にとって“嬉しい誤算”に違いない。

(文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)