どこでも眠るタフさ。フォトグラファー・ヨシダナギのアフリカ旅行術

写真拡大 (全10枚)

アフリカ少数民族を美しく、スタイリッシュに撮り続けるフォトグラファー・ヨシダナギさん。裸で暮らす民族の撮影を行うときは、自身も彼らと同じ姿で撮影するなど、郷に入れば郷に従う柔軟なスタイルで、現地の少数民族の姿を撮り続けています。
 
そんなヨシダさんがこれまでに旅をしてきたアフリカの国々は、日本の常識がまるで通用しない異世界ばかり。しかも現地の人たちは、厳しい環境の中でも、もれなく快眠生活を送っているのだとか…。
ヨシダさんがアフリカを旅する中で気づいた、アフリカ人が不眠にならない理由とは?

目次


1.マサイ族に魅せられて…英語も話せないままアフリカへ
2.アフリカ人も夜更かし!?スマホでSNSやメールに夢中
3.どこでも眠る!ヨシダ流・アフリカ旅行のコツ
4.“今があることに感謝する”。アフリカが教えてくれたこと

 

マサイ族に魅せられて…英語も話せないままアフリカへ

ヨシダさんがアフリカと出会ったのはなんと5歳のころ。テレビ番組で見たマサイ族の姿に「かっこいい!」と憧れ、いつか自分もマサイ族になりたい、と夢を抱いたといいます。
やがて、マサイ族は職業ではなく、なれるものではないと知りますが、それでも、「いつかアフリカに行きたい!」という思いは抱き続けていました。
そんなヨシダさんが初めてアフリカに渡ったのは2009年、ヨシダさんが23歳のころでした。
 
「それまでは家に引きこもりがちだったのですが、21歳でふと思い立って一人暮らしを始めたら、毎日が楽しく感じられるようになって、性格も明るく変わっていきました。そのおかげで、“もしダメだったらやめればいいや”と気楽に考えられるようになって、アフリカ行きを決意したんです」(ヨシダさん)
 
念願のアフリカ初訪問。しかし、当時のヨシダさんは英語がほとんど話せない状態。エチオピアで合流したガイドも日本語が話せず、コミュニケーションにはかなり苦労したそうです。
 
「英語が話せないころは、電子辞書を持参して、そこに単語を打ち込んで意志を伝えていたんです。辞書の例文などから相手が意味を汲み取ってくれて、なんとかやりとりができました」(ヨシダさん)
 
しかし、その方法では密なコミュニケーションをとることはできません。フォトグラファーとして少数民族の写真を撮りに行くようになると、彼らは決まったポーズしか取らないなど、ビジネスライクな対応しかしてくれず、思うような写真撮影ができませんでした。
それから3年ほどの間、旅行の回数を重ねながら英語を覚え、ようやく自分の意志を伝えられるようになったヨシダさんは、兼ねてからの信念を実行に移します。
 
「小さいころから、なぜか“彼らと同じ格好になれば必ず仲良くなれる”と信じていたんです。なので、カメルーンの山岳地帯に住むコマ族の集落に行った際、そのことを伝えて、彼らと同じ姿になって撮影したんです」(ヨシダさん)
 
裸で暮らす民族たちも、自分たち以外の大多数の他民族が、裸になることに羞恥心があるというのは分かっています。しかも、若い女性ならなおさら…。それでも裸になろうとするヨシダさんの心意気が伝わり、彼らなりの方法で大歓迎してくれたそう。こうして撮影された写真は、少数民族の凛とした力強さや美しさを感じさせる、芸術的な作品になりました。

アフリカ人も夜更かし!?スマホでSNSやメールに夢中

日本から遠く離れたアフリカのことを、私たちはあまり知りません。アフリカの人々は、いったいどんな生活をしているのでしょうか?
 
「アフリカでも、街に住んでいる人たちは夜更かしをしていますよ。みんなスマホを持っているので、SNSやメールに夢中です。少数民族では、マサイ族はスマホを持っている人も多いけれど、長老しか持っていないという民族もいますね」(ヨシダさん)
 
少数民族の集落は電気が通っていないところが多いため、夜は真っ暗。その分、彼らは寝るのがとても早かったといいます。
 
「少数民族たちは、夕飯を食べたらやることもないので、すぐに寝てしまいます(笑)。20時には寝ていましたね。朝は6時くらいから起き出して、仕事を始めるんです。寝床は、地面に皮や葉っぱを敷いた簡単なものでした」(ヨシダさん)
 
少数民族の集落に限らず、アフリカではどこでも「想像もできないようなことが起こる」とヨシダさん。
 
「マリのある町では、壁も屋根もない“部屋”にマットレスで寝床を作って寝たり、ちゃんとしたホテルに見えても、ブルキナファソではエアコンからイグアナが飛び出してきたり、スーダンではゴキブリだらけの部屋に通されたりしました(笑)。日本との違いに驚くことは想定内でしたが、どれも想定の斜め上をいくような出来事。でも、そんなことがどんどん起こるからアフリカは面白いんですよね」(ヨシダさん)
 
三ツ星ホテルに泊まっても、治安や衛生の面で安心できないのがアフリカ。「一番安心して眠れたのは、現地のおばあちゃんの家に泊めてもらったとき」だったそう。
 
それにしても、ヨシダさんが撮影した写真の中のアフリカ人たちは、みんな素敵な表情。どうすれば、こんなに自然体な写真が撮れるのでしょうか?
 
「心がけているのは、こちらから先に笑いかけること、きちんと声をかけてから写真を撮ること、くらいです。私はあまりアフリカの人々に対して警戒心がないので、彼らには無防備に映るみたい(笑)。だから、距離を縮めやすいのかもしれませんね」(ヨシダさん)

どこでも眠る!ヨシダ流・アフリカ旅行のコツ

アフリカ人の心をがっちり掴み続けるヨシダさん。場数の多さからいっても、もはや“アフリカマスター”といっても過言ではなさそう。
そこで、アフリカ旅行を快適にするポイントを伺ってみました。まず、どんな場所で寝ることになるかわからない旅の中で、快眠のために工夫していることはあるのでしょうか?
 
「潔癖症というほどではないのですが、他人が使った枕で寝るのが嫌なので、必ずお気に入りのバスタオルを持っていきますね。これを枕代わりにすればどこでも眠れるし、肌寒い時にはブランケット代わりにもできます。それに、いつも使っているものの匂いがすると、とても落ち着くんです」(ヨシダさん)
 
確かに、初めての旅先でも使い慣れているものがあれば、安心感が違うかもしれません。
 
「それから、アフリカではホテルにシャワーがないこともあるのですが、水がない環境であれば自分のミネラルウォーターを使ってでも、足だけは必ず清めてから眠っていました。すぐ砂や泥だらけになってしまうからというのもあるのですが、なんとなくそうしないと眠れなくて…」(ヨシダさん)
 
なるほど、自分なりの入眠儀式があると、寝付きやすくなりそうですね。
プライベートでは1ヵ月、仕事では1〜2週間の滞在が多いそうですが、どんなときも荷物は45リットルのスーツケースとカメラバッグ。滞在先がどこでも、それは変わらないのだそう。
 
「荷物の半分は洋服で、他は普段使っている化粧品一式とシャンプーなどですね。洋服は、普段着ているものをそのまま持っていきます。旅行用に荷物にならないカジュアルな服を持っていくということはありません。ネイルもバッチリ決めていきます」(ヨシダさん)
 
旅行中でもヨシダさんがおしゃれに気を抜かないのには、理由があります。それはあるガイドから、「アフリカではおしゃれにしていたほうが得だ」と教えてもらったからなのだとか。
 
「アフリカの人たちはすごくおしゃれに敏感。なので、おしゃれにしていると彼らに一目置かれるんですよ。服やネイルに反応してくれて、それをきっかけに仲良くなれたりもするんです」(ヨシダさん)

「メイクはバッチリでも、日焼け止め対策はまったくしない」というヨシダさん。そこには、アフリカならではの理由がありました。
 
「実は、彼らは私たちのする日焼け対策をあまり良く思っていないんです。自分たちのような黒い肌になるのが嫌なのか、と感じるからです。私は彼らの肌をカッコいいと思っているし、彼らへのリスペクトを表現したいので、どんなに日焼けして皮がむけたとしても、日焼け止めは彼らの前では絶対に塗りません」(ヨシダさん)
 
アフリカの人々との交流の中で、彼らの肌の色に関する考え方を聞いてきたヨシダさん。
「黒い肌はカッコいい」と思っていましたが、肌の色による差別や文化の違いが存在することを知り、考えさせられることがあったそう。
アフリカの人たちの思いに触れ、本心に寄り添うことができるヨシダさんだからこそ、旅先で出会った人々に愛されるのかもしれませんね。
 
そして、必ずスーツケースに入れているのが、スポーツドリンクの粉末。食中毒やマラリアなどで体力が落ちてしまったとき、スポーツドリンクを飲むと回復が早いのだとか。衛生状態が日本とは異なるので、こうした備えをしておくことも大切ですね。ヨシダさんは、必ず15袋ほど持っていくようにしているといいます。
ちなみに、初めてのアフリカ旅行はどこがよいのでしょうか?
 
「エチオピアがおすすめです。アフリカには珍しく、謙虚で遠慮をする文化。日本人と似ているんです。それに、最近成田からの直行便ができて、16時間で到着できる、意外と近い国なんですよ」(ヨシダさん)

“今があることに感謝する”。アフリカが教えてくれたこと

驚くような体験、さまざまな人との出会い。アフリカでの経験は、ヨシダさんの人生観を大きく変えてくれたといいます。
 
「アフリカの多くの人たちは、決して恵まれた環境で暮らしてはいません。でも、彼らは“今があることに感謝する”という考え方をしていて、毎日を全力で生きています。そのせいなのか、アフリカで不眠に悩んでいるという人は聞いたことがないんです。日々全力を出し切っているから、布団に入ったらストンと寝てしまうのかも…。そんな彼らの生き方に触れて、私も精神的にタフになりました。良くも悪くも、悩まなくなりましたね」(ヨシダさん)
 
アフリカで鍛えられた精神力で、ちょっとやそっとのことでは負けないメンタルを手に入れたヨシダさん。しかし、眠りに関してはアフリカ人と同じとはいかないようです。
 
「私、昔から布団に入るとなぜかテンションが上ってしまうんです(笑)。隣に人がいれば、一晩中話しかけてしまうくらい。なので、布団に入ってから寝付くまでが長く、結果的に夜型になってしまっています」(ヨシダさん)
 
寝る時間は早くても深夜1時過ぎ。遅いときには朝5時まで眠れないということも…。それでも、ヨシダさんは焦ることはありません。
 
「翌日、早い時間から予定が入っているとさすがに焦りますけどね(笑)。基本的には、眠れなくても全然気にしません」(ヨシダさん)
 
眠れないことを不安に感じたり、焦ったりしてしまうのは不眠を悪化させる要因。ヨシダさんのように、おおらかに構えていたほうが、意外とよく眠れるのかもしれません。
 
2009年から2014年まで、11カ国を巡ったヨシダさん。次の予定を尋ねると、「しばらくアフリカ行きの予定はありません」と意外な回答。
 
「今は治安が悪いところも多くて、なかなか行くのが難しいんです。行ってみたいと思っているのは、世界一物価が高い国と言われるアンゴラ共和国。資金が必要なので、なかなか難しいのですが…」(ヨシダさん)
 
思い切って飛び込んだアフリカは、ヨシダさんに“目からウロコ” の考え方と、前向きな生き方を教えてくれました。「毎日全力で生きているから、眠れないことなんてない」――。不眠で悩んでしまう私たちは、そんなアフリカの人たちの生き方から学ぶべきことが多いのかもしれませんね。

【眠りの黄金法則】

布団に入るとテンションが上がるので、深夜〜早朝に寝付く夜型生活必ず足をきれいに洗ってから寝床に入る使い慣れたバスタオルが快眠の友

【ウィークデーの平均睡眠時間】

平均8〜10時間

【睡眠タイプ】

お気に入りのアイテムと一緒なら、どんな場所でも眠れるタフなタイプ
ヨシダナギさんのフミナー度は『35%』、いま一歩よい眠りがとれていないようです。

 

ヨシダナギさん1986年生まれ、フォトグラファー。独学で写真を学び、2009年より単身アフリカへ。
アフリカをはじめとする世界中の少数民族を撮影する。TVや雑誌などメディアに多数出演するほか、2017年には日経ビジネス誌「次代を創る100人」に選出。近著は、写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)、『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(扶桑社)。