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 先日の金曜(現地時間2月10日)、安倍首相とトランプ大統領の会談前での一コマが話題になっています。

 トランプ大統領と握手をし終わったときの安倍首相の表情が「ぎこちない」と国内外問わず様々な解釈がなされています。

⇒【動画】Hilarious Handshake Trump VS Abe Japanese Prime Minister https://www.youtube.com/watch?v=iiitQ-5_E_Y

 分析に用いたのはこの動画です。

 安倍首相の心情を推察するに、安倍首相の驚き+嫌悪の微表情の意味は、トランプ大統領の握手に違和感を抱きつつも、その原因が自己の通訳ミスかも知れないと気付き、自己にも嫌悪を向けている、と私は考えます。

 そして本論の結論として、微表情から心を読み解くには、微表情から感情の方向性を定め、様々な文脈・対話からその焦点を絞っていく、というものです。その理由のHow&Whyは何でしょうか?

◆安倍首相の表情から読み取る意味は?

 まず安倍首相の表情を正確に分析します。話題の表情は、28秒から29秒あたりに安倍首相の顔に表れます。1秒以内の間に抑制された感情が微表情として表れています。

 眉が引き上げられる+上まぶたが引き上げられる+頬が引き上げられる+上唇が引き上げられる+口角が引き上げられる+下唇が引き下げられる+口が開かれる

 という動きがわかります。

 眉が引き上げられる+上まぶたが引き上げられる+口が開かれるという動きは、驚きを意味します。

 頬が引き上げられる+口角が引き上げられるという動きは、幸福を意味します。

 上唇が引き上げられる+下唇が引き上げられる+口が開かれるという動きは、嫌悪を意味します。

 従って、トランプ大統領と握手を終えた安倍首相の顔に浮かんだ一瞬の微表情は、驚き+幸福+嫌悪の混合表情であることがわかります。

◆このときの安倍首相の心情は?

 次にこの混合表情の根底にある感情の矛先、つまり安倍首相の心情を解釈します。

 幸福表情は握手という状況において違和感のある表情ではないので、解釈から外します。首相の心情の可能性として次の2つを考えることが出来ます。

.肇薀鵐彗臈領の強く長い握手に、驚き、嫌悪している
▲肇薀鵐彗臈領の握手に違和感を抱きつつも、その原因が自己の通訳ミスかも知れないと気付き、自己にも嫌悪を抱いている

 まず,硫鮗瓩任垢、このトランプ大統領の強い握手を安倍首相は昨年の11月に体験しているはずなので、今回、再びトランプ流の握手に驚いたり、微表情として強い嫌悪を安倍首相が抱く可能性は低いように思います。

 次に△硫鮗瓩任后
 動画の17秒からのシーンをご覧ください。日本の記者の方々から「こちらお願いします」というリクエストがなされ、トランプ大統領が“What are they saying?(彼らは何と言っているんだい?)”と安倍首相に尋ねます。安倍首相は、“Please, look at me.(私を見て下さい。)”と通訳し、それにトランプ大統領が応えます。

 そこでトランプ大統領は、安倍首相をしばらく見つめながら、自身の方へ腕をグイッと引き、トランプ流の強い握手をします。安倍首相は、指を報道陣に向け、“Take a look(あちらを見て)”と言いますが、それにトランプ大統領は気付かず、しばらく握手が続きます。これがぎこちない握手として私たちの目に映ります。

 握手を終え、両者手を放すのですが、安倍首相はこの握手に何らかの違和感を抱いていたのでしょう。そうであるからこそ、握手後に、安倍首相はハッと驚き、自分の通訳のミスに原因があったのかも知れないと気付き自己嫌悪したのだと思います。ぎこちない握手に「何か変だと」嫌悪を感じる一方で、自分のミスに気付き、これにも嫌悪を感じた、これが安倍首相の心情なのではないかと私は考えます。

◆日米の文化の違いを知らなければ、表情分析は難しい

 微表情を読めれば相手の心が読めるわけではありません。もちろん、ある状況とある微表情とのセットを何度も体験していれば「○○の状況の△△の微表情は、□□の意味。」と言えるかも知れません。例えば「あなたは嘘をつくとき、必ず鼻にしわを寄せるのよね。」そんな夫婦間の体験が典型的です。

 しかし、微表情からわかることは抑制された感情が何か、を特定することです。そしてその感情がなぜ抑制されたのか、相手は何を望んでいるのか、本音は何なのかを知るには、微表情以外の情報や状況を利用する必要があります。

 今回のケースだと、日本語と英語という知識と日本文化の知識がないと正しく安倍首相の微表情を解釈することは難しいでしょう。日本の記者の方々が安倍首相とトランプ大統領に「こちらお願いします」と言っていますが、英語でお願いすれば、安倍首相が通訳ミスを犯すという原因が作られることはなかったわけです。安倍首相は、咄嗟に記者の方々の立場に立った解釈をし、そのまま通訳してしまったわけです。ミスの原因を他者に向けるのではなく、自分に向ける、そして自分に嫌悪を抱く、これは日本人的な感情の向け方です。

 日常・ビジネスシーンで微表情に気付いたら、相手に問いかけましょう。微表情は深い会話の始り、と言えます。微表情に気付いたら、その感情の方向に沿うような言葉をかけたり、質問をしてみて下さい。コミュニケーションの距離が近づくでしょう。

〈文・清水建二〉

【清水建二】
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマの監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。