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Microsoftが、ドローンやロボットなどのAI(人工知能)を教育して安全に自律動作することを実現するためのツールセットのベータ版を公開しました。このツールセットの特長は、コンピューターのバーチャル空間の中でシミュレーションを行うことで実際のドローンや機械を一切使うことなく、学習を進めることが可能なところにあります。

Microsoft shares open source system for training drones, other gadgets to move safely on their own - Next at Microsoft

https://blogs.microsoft.com/next/2017/02/15/microsoft-shares-open-source-system-training-drones-gadgets-move-safely/#sm.000pqsyapqrsf5j11p02khl9sel9p

Microsoft lets you crash drones and robots in its new real world simulator - The Verge

http://www.theverge.com/2017/2/15/14622074/microsoft-aerial-informatics-and-robotics-platform

ドローンや自動車などの機械を自律飛行・走行させるための技術の開発には、何度も繰り返してさまざまなシチュエーションを体験させることで、AIに正しい判断と操作を学習させる必要があります。しかし、実際のドローンや自動車を使って現実の空間でテストを繰り返していると、ドローンが墜落したり自動車が障害物に衝突するたびに多大なコストがかかる上に、モノや人に損害を与えてしまうリスクが常に存在しています。

そんなリスクを解消し、コストを大幅に軽減した機械学習を可能にするツールセットのベータ版をMicrosoftが2017年2月15日にGitHubで公開しました。

GitHub - Microsoft/AirSim: Open source simulator based on Unreal Engine for autonomous vehicles from Microsoft AI & Research



実際にこのツールセットを使って、ドローンに自律飛行を学習させている様子が以下のムービーに収められています。

AirSim Demo - YouTube

これから離陸する状態のドローン。画面の下には3つのサブ画面が表示されており、ドローンのセンサーやカメラが捉えた映像が映し出されています。しかし、これらはいずれもシミュレーションされたものであるという点には要注目。一番右の画面は、ドローンのカメラが捉えた(ことになっている)映像です。



そしてドローンは離陸。ドローンの高度に合わせ、サブ画面の表示もリアルタイムで変化します。いちばん左の画面は、深度センサーが取得した物体との距離を色の濃淡であらわした画面。



真ん中の画面は、カメラに映った物体を要素ごとに分割する「セグメンテーション」を行ったあとの画面。電柱や建物、道路や木々が色分けされている様子から、AIが状況を認識するための処理がどのように行われているのかが感じ取れるはず。



このシミュレーションでは物理的なシミュレートも行われており、ドローンのプロペラが回転する作用なども計算されている模様。



木の葉を通り抜ける太陽光や、地面に落ちる影もリアルに再現。これは単に画面をきれいに見せるためではなく、現実と変わらない環境を再現することで、より正しいAIの学習を行わせるために必要なものです。



立木などの障害物に衝突した際には、もちろん「当たり判定」を行います。これにより、AIが下した判断や操作が適切ではなかったことを学習させます。



より現実に近い環境を作り上げるために、葉の1枚までリアルにCGで再現されています。



このツールセットには、データの取得やドローンの操作を行うためのAPIなどが含まれており、トライ&エラーでテストを繰り返すためのツールがまとめられているとのこと。



操作およびその結果は全て記録され、ディープラーニングに役立てることが可能です。



このツールについて、Microsoftの研究員でプロジェクトを率いるAshish Kapoor氏はThe Vergeのインタビューに「このツールを使えば多くの実験を行い、たとえ失敗に終わっても現実の社会よりも非常に低いコストに抑えることが可能です。現実世界では、考え得る全ての状況をテストすることは極めて難しいものですが、このシミュレーションはいくつもの状況をテストすることが可能な贅沢な環境になっています」と語っています。

また、ツールの活用が見込まれる分野は自律飛行・走行の分野に限られないとのこと。Kapoor氏は、このツールがコンピューターによるビジョンシステムや、データドリブン型の機械学習を支えるものになる可能性を示唆しています。