土俵改革への期待の反面……

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 誰にでも全力でぶつかっていくガチンコ相撲で知られる新横綱・稀勢の里によって、相撲界が大きく変わろうとしている。同様にガチンコ相撲で知られ、「土俵改革」を訴える貴乃花一門の周辺が活気づき、来年2月の相撲協会理事選で、貴乃花親方が理事長に当選する可能性が出てきたからだ。一方、土俵改革への期待を寄せる関係者の間で懸念されているのは、ガチンコ横綱・稀勢の里が所属する田子ノ浦部屋と貴乃花親方の間に、浅からぬ因縁があることだ。

“貴の乱”と呼ばれた2010年の理事選では、最大勢力を誇った二所ノ関一門の“候補者調整”に反発した貴乃花親方が一門を飛び出して立候補して騒動となった。

「その時、二所ノ関一門から立候補する予定だったのが、稀勢の里や現・田子ノ浦親方(元前頭・隆の鶴)の師匠である、先代の鳴戸親方(元横綱・隆の里)でした。貴乃花親方の離反によって、鳴戸親方が出馬断念に追い込まれた経緯があるのです」(ベテラン相撲記者)

 出馬断念から2年後の理事選では理事になる調整が進められていたが、その直前の2011年九州場所前に、鳴戸親方は急性呼吸不全でこの世を去った。場所後には愛弟子である稀勢の里が大関昇進を果たしたが、その伝達式は鳴戸親方の遺影の前で行なわれたのである。

「稀勢の里を筆頭に、現在の田子ノ浦部屋の力士たちは先代の鳴戸親方を深く尊敬していた。貴乃花親方には複雑な思いがあると見られています」(同前)

 このような懸念がある一方で、鳴戸親方の抱いていた志は、貴乃花親方に通じるものがあると見る関係者も少なくない。先代の鳴戸親方をよく知る元親方はこういう。

「隆の里も貴乃花も、“変人”といわれるくらいガチンコ相撲を貫き通した横綱で、よく似ている。

 鳴戸親方は、派閥が真剣勝負の邪魔になると指摘したり、各部屋のパワーバランス均衡と過度なスカウト合戦を防ぐ『新弟子ドラフト制度』の導入を提唱したりするなど、改革派の急先鋒だった。悪しきしがらみにとらわれない姿勢は貴乃花に通底するところがある」

 そう語った上で、過去の理事選における因縁は障害にはならないとの見方をした。

「先代の鳴戸親方は愚痴をいわない人でした。だから2010年の理事選の出馬断念の経緯も恨みがましく話していない。貴乃花親方への憎しみが弟子たちの間にあるとは思えない。むしろ、稀勢の里は貴乃花を尊敬してやまないはずです。先代の鳴戸親方の指導以外には耳を傾けないといわれていた稀勢の里ですが、入門のきっかけには貴乃花親方への憧れがあったし、過去には巡業中に直接四股の基本を教わっていたこともある」

 新たに大相撲の“顔”となった稀勢の里と改革派グループである貴乃花一門が手を組めば発言力がいや増すことは確実で、理事長選の行方を左右する大きな動きが巻き起こる可能性が十分にある。

 そうした動きによって土俵上の真剣勝負がさらなる盛り上がりを見せるのであれば、新横綱誕生に胸躍らせるファンも後押しするはずだ。

※週刊ポスト2017年2月24日号