人は自分自身と対話し、いい結論を出すことによって、どんな悩みも解決することができる。つまり、私たちの人生は、すべて自問自答に左右されている。そう主張するのは、『人生の悩みが消える自問力―――「5つの質問」と「自問自答」ですべてが好転する』(堀江信宏著、ダイヤモンド社)の著者です。

根拠になっているのは、心理学とビジネスに関するセミナーを年間200回以上主催しているという著者自身の経験。数年前、医師からがんを宣告され、症状がどんどん悪化。しかし自身が学んできたコーチングの技術を自問自答に応用し、闘病経験を新たなステージに進むためのチャンスに変えることができたというのです。

質問「自分は一体、これからどうなることを望んでいるのだろう?」
答え「このまま死にたくはない」
質問「どうして?」
答え「自分には、まだやり残したことがあるから」
質問「何を?」
答え「やりたいことが2つある。1つは、コーチングスクールを再開して、自分が受けてきた素晴らしい教えを、さらに発展させて人々に伝えること。もう1つは、自分が学んできたことを、最後の生き様を通して身近な人たちの心に残し受け継いでもらうこと...」
(「はじめに」より)

この2つの答えを導き出した結果、ネガティブなことを考えるのではなく、がんを克服することに前向きな気持ちになって闘志がわき、病気を克服できたということ。これは、多くの人々に勇気を与えてくれるエピソードではないでしょうか? そこで第1章「自問力があなたの人生を決める」に目を通し、自問力についてもう少し掘り下げてみたいと思います。

そもそも自問力とはなにか?


人間は1日に3万回以上も自分に質問をし、自分に答えているのだそうです。「きょうのランチになにを食べるか?」といった些細なことから、人生に大きな決断を迫られるような問題まで、すべてのことについて、頭のなかで複数の自分による対話が行われ、その結果として行動や選択が決まっているということ。そして、その質問の投げ方によって、対話の流れも、最終的に導き出される行動も変わってくることに。わかりやすい例として、ここでは難しい仕事に直面した際のAとBの自問自答が紹介されています。

Aパターン
質問:「難しい仕事だな、自分にできるかな?」
答え:「いや、できるわけないよ。だってその仕事は未経験だし、自分はそんなに頭もよくないし、大した能力も持ってないから...。だから、誰か別の人にやってもらおう...」

Bパターン
質問:「難しい仕事だな、どうすれば自分にできるだろう?」
答え:「自分にはやり方がわからないな。でも、世の中にはその仕事をできる人がいるんだから、どこかに対処法はあるだろう。なら、まずは書店に行って、何か使えるハウツーがないか調べてみよう」
(以上、20ページより)

どちらも同じ問題にぶつかったときに起きる自問自答の流れですが、最初に投げかける質問によって、まったく違う行動が生まれてくるわけです。そして、この自問自答の違いこそが、人生を大きく左右する要因になっているのだといいます。

Aのパターンを持っている人は、問題があるたびに他人任せにし、なかなか成長できないもの。いつも周囲に不満を持ちながら、結局は現状にとどまっていることがほとんどだということです。一方、難しい仕事に直面するたびに新しいことを学び、どんどん自身のステージを上げていくのがBのパターンを持っている人。その差は、最初の質問の違いによって決まっているというわけです。(18ページより)


プライマリー・クエスチョンが人生を左右する


コーチングの世界では、私たちが無意識のなかで"最初に"投げかける質問を「プライマリー・クエスチョン」と呼ぶそうです。いうまでもなく、プライマリー(primary)は英語で「第一の」「主要な」という意味。そして、物事が「うまくいく人」と「うまくいかない人」との差は、このプライマリー・クエスチョンの違いにあるのだそうです。

たとえば先ほどの例。A「自分にできるかな?」と問いかける人は、いつも「できない言い訳」をする傾向があるとか。それに対してB「どうしたら自分にできるだろう?」というような質問が習慣となっている人は、つねに問題解決の手段を探し続けるというのです。

前者が運の悪さを嘆いたり、他人や環境のせいにして怒っている間に、後者はその課題を乗り越え、次のステージへと進んでいくわけです。こうした思考パターンが毎日繰り返されるなら、AとBの成長スピードや目標達成の度合いに大きな差が生じるのは火を見るより明らかだということです。(22ページより)


自分に「いい質問」を投げかけ、悩みを解消する糸口を探す


日常的に意識していることではないからこそ、プライマリー・クエスチョンや自問自答の質をコントロールしようとしても、それはなかなか簡単ではありません。しかし、強い目的意識を持てば、それは変えることができるのだといいます。意識して自分と対話し続けさえすれば、自分の選択や行動は変えられるということ。

具体的にいえば、自分の内部のもうひとりの自分が「こんな難しい仕事、諦めちゃえ」という結論を下したとしても、意識を切り替え「いや、これに取り組むことは自分の成長に繋がるから、大変だけどやってみよう」と、前に一歩踏み出すことができるわけです。「意識して自分に対して投げかける質問」と「意識して繰り返す自問自答の質」を変えれば、人生をいい方向にコントロールできるという考え方。

たとえば、先に触れた著者のがんの問題がまさにそれでしょう。たまたまコーチングを学んでいたため、自分に的確な質問を投げかけることで解決の糸口を見つけようと考えることができたわけです。

効果的な自問自答の方法は、やり方さえわかれば誰にでも使いこなせると著者はいいます。いい自問自答を繰り返し、問題を解決したり、成功体験を重ねていくことで、潜在的なプライマリー・クエスチョンや自問自答の質も、次第にいいものに変わっていくということ。(26ページより)


正しい答えに導いてくれる「5つの質問」


「聞き手である自分」に質問を投げかける場合、どうせなら「いい質問」を投げかけるほうが建設的。著者によれば、自分に投げかけるべきいい質問とは、次の5つに集約できるそうです。

質問1.「自分が得たい結果は何だろう?」...問題を「自分事」としてとらえる質問
質問2.「どうして、自分はそれを得たいのだろう?」...自分の目的を明確にする質問
質問3.「どうしたら、それを実現できるだろう?」...可能性に目を向ける質問
質問4.「これは、自分の将来にとってどんな意味があるだろう?」...いい意味づけをする質問
質問5.「今、自分がすべきことは何だろう?」...自分を動かす質問
(30ページより)

1.と2.は、「目的意識」に目を向けるための対話を生み出す質問。たとえば「上司に厄介な仕事を命じられた」という場合、悪いパターンの人だと「いわれたからやらなきゃ」で終わってしまうもの。でも、1.と2.の質問と対話をすることで、

「自分が得たい結果は何? → 上司の期待に応えて仕事をやりとげる」
「どうしてそれを得たいの? → 今の自分よりもっと成長した自分になりたいから」
(30ページより)

ということが明確になれば、命じられた仕事は「上司のためにやるもの」ではなく、「自分のためにやるもの」に変わっていくわけです。

3.の質問をする目的は、「答えを探し出すためにアプローチ法」を見つけ出すこと。その質問を詳細にすることで、「解決方法を具体的にすること」ができるようになるそうです。

4.は、自分にとっていい意味づけをする質問。この質問を通じ「自分が問題を解決すること」がよりリアルに感じられるようになるといいます。たとえば上司に命じられた仕事でも、「この仕事を成功に導いて経験を積めば、もっと高いレベルの仕事ができるようになる」と考えれば、上司を満足させることができ、自分もスキルアップできるということ。

そして5.は、自分を行動に導く質問。「まずは情報を探しに行こう」「問題に詳しい人に話を聞いてみよう」などの行動につながっていくわけです。

つまり、この5つの質問による自問自答を繰り返すことは、自分に対して前向きな行動やアクションをとらせる原動力になるのだと著者は主張しています。(29ページより)



自問力に関する著者の考え方は理にかなっており、だからこそ、自問することの価値を強く実感させてくれます。だからこそ、なかなか乗り越えられない悩みと対峙している方にとっては、手にとってみるべき1冊だといえます。

(印南敦史)