東芝の綱川社長(ロイター/アフロ)

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 東芝崩壊の軋みが聞こえた――。

 2月14日、東芝は2016年4〜12月期連結決算発表を行い、午後4時から本社においてマスコミ向けの会見を行う予定であった。浜松町にある東芝本社の1階ロビーには、受け付け開始前から多くの報道陣が詰めかけていた。

 午後3時、東芝社員が「本日、会見が行われるかどうか、現時点ではわかっておりません」と言い放ち、報道陣たちは色めき立った。「撮影の準備はしていいんですよね」と、テレビ局の撮影クルーが確認する。

 受け付けが開始され、39階の大会議室に報道陣は続々と入っていく。午後4時までには150人ほどになり、25台のビデオカメラが構えられた。NHKや全民放キー局をはじめ、新聞社、週刊誌、インターネットメディアなど、ありとあらゆるメディアが集まり、会見に注目していた。

 従業員数は約19万人、過去に経団連会長を2人も輩出した日本のトップ企業である東芝が、原子力事業における巨額損失で債務超過に陥っていると伝えられているのだから、当然である。

 しかし会見開始予定時間の午後4時になっても、会社側からなんの説明もない。すでにこの時点で、連結決算発表の延期という異例の事態が伝わってきた。これに関する会見も行わないとなると、説明責任を果たさないことになり、一大事である。会見がないという事態を想定して、空席の会見席をバックにアナウンサーが喋る様子を撮影するテレビ局も見受けられた。

 会見が午後6時半から行われることが発表されたのは、午後5時になってからだった。
時間になって、綱川智・代表執行役社長、佐藤良二・監査委員会委員長、平田政善・代表執行役専務、 畠澤守・執行役常務が姿を現した。

 綱川社長が決算発表の延期に対するお詫びの言葉を述べると、佐藤氏より延期の理由が明らかにされた。それは「内部告発」というショッキングなものであった。しかも、東芝の原子力事業での損失は米原発子会社・ウェスチングハウス(WH)買収に起因しているといわれているが、内部通報はそのWHに関わるもの。WHによる米原子力建設会社の買収における内部統制の不備を示唆するものだ。

 内部通報による事実関係を確認しなければ決算を完了できないとして、企業内容などの開示に関する内閣府令第17条が規定する提出期限の延長申請を財務省・関東財務局に行い、1カ月の延長が認められたことを佐藤氏は明らかにした。

 内部通報の詳細な内容は明らかにされなかったが、WHの社員が同社CEO(最高経営責任者)に対して行ったものだという。

●東芝崩壊への道筋

 綱川社長からは、原子力事業における損失発生の概要と対応策が発表された。

 16年第1〜第3四半期(4〜12月)連結決算に反映する原子力事業の損失は7125億円、営業損益は5447億円の赤字と見込まれる。損害に対する経営責任を取り、原子力事業を統括してきた志賀重範会長は、取締役・代表執行役を辞任、WH会長でエネルギーシステムソリューション社長のダニー・ロデリック氏は社長を解職、綱川社長は月額報酬を90%返上、原子力事業部長である畠澤常務は月額報酬を60%返上する。

 原子力事業における巨額損失の要因は工事コストの増大だったとして、海外の新設プラントについて、今後は土木建築部分のリスクは負担しない方針が明らかにされた。国内の原発事業に関しては、再稼働・メンテナンス・廃炉を中心に、社会的責任を継続して果たしていくとのことである。

 事業の中期的な考え方として「豊かな暮らしを支える社会インフラ」「すべての活動を支える安全でクリーンなエネルギー」「社会を支える電子デバイス・ICTソリューション」の3つが上げられたが、「決算発表延期」「内部告発」「巨額損失」の3つこそが頭に響く、東芝崩壊への道筋を感じさせる会見であった。
(文=深笛義也/ライター)