盗用を抑制するCCライセンス!メトロポリタン美術館が37万5,000点の画像をネット公開できた理由

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昨今テキスト・画像などを中心にネット上のリソースの無断盗用が大きな問題になっている。
たとえ個人のブログ、ソーシャルメディアでの投稿においても、他者の著作物を勝手に使ってしまうのはNGだ。

もともとネットには素材や成果物などを広く公開する、誰かと共有する、それらを再利用して別の作品に生かす、共創するという活動の流れがある。
もちろん、これは著作権者に敬意を払い、必要に応じて許可をとって行うのが大前提だ。

インターネットの成り立ちから考えると本来の姿は後者なのだが、残念なことに「ネットにあるものは無料」といわんばかりに無断盗用が横行しているのが現実だ(もちろん、問題はそこだけではないが)。

◎美術館とCCライセンス
しかし一方では、美術館や博物館など、著作権が消失した作品を公共に使えるようにしようという動きも活発になっている。

先日も、メトロポリタン美術館が所蔵する画像37万5,000点のデジタルデータをCC0(CCライセンスのうち、"いかなる権利も保有しない"こと)で公開することを発表した。

CCライセンス(クリエイティブ・コモンズ・ライセンス)は、
「インターネット時代のための新しい著作権ルール」として、国際的な非営利団体であるクリエイティブ・コモンズが提供するライセンス形態だ。

簡単に言うと、
作品を公開する作者自身が「著作物の再利用」について、自分のポリシーを明示する仕組みだ。それにより、
作者は著作権を保持したまま作品を流通させることができる。
受け手はライセンスが明示する条件および範囲内で再配布や再利用することができる。

そもそも2000年前後に起こったプロジェクトで、マッシュアップ・リミックス・リユースなど、アーティストどうしが素材を再利用し合うための法的なフレームワークとして、音楽の分野で広く注目された動きだ。
日本にもそれほど遅れずに入ってきて、当初は音楽を製作する層に啓蒙する流れが顕著だった。

その後、Flickrなどの写真共有サイトがライセンス付与にCCライセンスを導入するなど、音楽シーンだけではなく画像を扱うクリエイターにも広く活用されるようになっていく。

◎「CC Search」β版の登場
CCライセンスは音楽、画像、動画など幅広く適用可能だが、特に画像(写真やグラフィック素材など)で使われることが多く、FlickrやGoogleでも検索条件に使うことはすでに可能になっている。

さらに、この2月にクリエイティブ・コモンズ正式の、CCライセンスが付与された画像を対象とする画像検索サービス「CC Search」β版が登場した。
発表時に公開されているリソースとして、Flickr、500px、アムステルダム国立美術館、ニューヨーク公立図書館、メトロポリタン美術館など、9,595,804のデータから利用したい条件で画像を検索できる。




これは、コンテンツを仕事として製作している人はもちろん、個人でブログなどを書いていて、何か写真を入れたいなどの場合にかなり便利に使えそうだ。

ちなみに、現在CC Searchの検索エンジンに登録されているメトロポリタン美術館のデータは、CC0で公開を発表した37万5,000点のうちおよそ20万点弱がすでに利用できる。

◎CC0、あるいはパブリックドメインという考え方
このメトロポリタン美術館の所蔵の画像37万5,000点のCC0での公開もそうだが、クリエイティブ・コモンズがパブリックドメイン(public domain:知的財産権が発生していない、あるいは消滅した状態)という考え方を「CC0」としてCCライセンスに加え、パブリックドメインをネット上で配布するデータに適用する仕組みとしてCC0ラインセンスを導入したことが及ぼす影響は非常に大きい。

こうした仕組みが機能することで、はじめて美術館などパブリックドメインの知的創作物を持つ機関がデジタルデータをネットに公開することが可能になったからだ。

こうしたネット上のデジタルデータとの新しい向き合い方を広く提示してくれる動きは、多くの人にとって非常に有益だ。


大内孝子