by tapaponga

WordやExcelといったオフィスソフトウェアを束ねたもの(オフィススイート)といえばMicrosoft Officeが広く知られていますが、無料のオフィススイートとしてLibreOfficeなどが存在しているので、必ずしも有料のものを使用する必要はありません。実際に導入している官公庁や企業もあるのですが、その中の1つであるミュンヘン市では「不具合が多い」ということで有料のオフィススイートに戻す動きがあり、LibreOfficeの開発元である非営利団体「The Document Foundation」が反論を公式サイト上で公開しています。

Statement by The Document Foundation about the upcoming discussion at the City of Munich to step back to Windows and MS Office

https://blog.documentfoundation.org/blog/2017/02/14/statement-by-the-document-foundation-about-the-upcoming-discussion-at-the-city-of-munich-to-step-back-to-windows-and-ms-office/



ミュンヘン市では2003年、OSをWindows NTからLinuxに切り替える10カ年計画を策定。オフィススイートもMicrosoft OfficeからオープンソースのOfficeへと移行することになりました。

Münchener Rathaus-SPD entscheidet sich für Linux [Update] | heise online

https://www.heise.de/newsticker/meldung/Muenchener-Rathaus-SPD-entscheidet-sich-fuer-Linux-Update-79651.html

計画は見事に成功。当初は「1万2000台のデスクトップ機をLinuxに切り替える」という目標でしたが、実際は1万5500台のデスクトップ機が稼働していて、そのうち1万4800台を「LiMux」に切り替えました。LiMuxにはLibreOfficeや、拡張機能であるWollMuxが導入されています。

Munich open source switch 'completed successfully' | IT Leadership | CIO UK

http://www.cio.co.uk/it-leadership/munich-open-source-completed-successfully-3493627/

ところが、2014年に当選したディーター・ライター市長は、当選直後に市の内部紙「Stadtbild」の取材を受けた際に「オープンソースへの移行には驚いた」と10カ年計画を否定。ヨーゼフ・シュミット副市長もLiMuxを使うことに苦痛を感じているという市職員の声を取り上げました。

この時点では市議会はLiMuxを支持していたのですが、2015年に入ると市長の出身政党・ドイツ社会民主党キリスト教社会同盟の議員からWindowsへ環境を戻すよう求める声が上がるようになります。

そしてライター市長は、Microsoftのパートナーであるコンサルティング会社・アクセンチュアに、ミュンヘンのITインフラについての報告書を作成するように指示。この報告書はネットで公開されて、誰でも見られるようになっています。

Externes IT Gutachten Untersuchung der IT der Landeshauptstadt München (LHM)

(PDFファイル)https://www.ris-muenchen.de/RII/RII/DOK/SITZUNGSVORLAGE/4277724.pdf



LibreOfficeの開発元であるThe Document Foundationは「オープンデータと政治的な意志決定の透明化の時代、こうして報告書が一般に向けて公開されていて喜ばしい」と、この報告書を用いて市長らに対する反論を行っています。

報告書ではアプリケーションによって18%から28%のユーザーがLibreOfficeに由来する問題に悩まされていて、これはおそらくMicrosoft Officeに移行すれば解決するだろうと考えられています。しかし、同時にMicrosoft Officeに由来する問題も15%報告されていることがわかっています。

また、金銭面にも切り込んでいます。ミュンヘン市議会では「2020年までにすべてのワークステーションにWindows 10とMicrosoft Office 2016をインストールする」という『少数派市議会議員』からの提案についての議論が行われていますが、もしこの提案が通った場合、納税者にのしかかる負担は6年で9000万ユーロ(約109億円)近くに上ります。

緑の党の議員からは「LiMuxを動かすには十分でもWindows 10を動かすためにはアップグレードが必要」というPCの存在が指摘されていて、その経費がさらに1500万ユーロ(約18億円)かかると見積もられています。

そもそもミュンヘン市が「オープンソース化」を推し進めたのは金銭の問題だけではなく、「標準の書類フォーマットには相互運用性が求められる」という面もありました。そのため、今からMicrosoft Officeに戻すというのは、イギリス・フランス・スウェーデン・オランダ・台湾などの国々で進められている方針を無視する形になるとThe Document Foundationは指摘しています。

市長と副市長がともにオープンソース反対派で、市議会も多数派政党がオープンソース反対に回っているという状態なので、順当にいけば「Microsoftへの回帰」が実現しそうですが、果たしてこの流れを食い止めることは可能なのでしょうか……。