電気自動車の新たな時代を開く最先端技術の企業テスラ。カリスマリーダー、イーロン・マスクCEOが描く、クリーンエネルギーや自動運転車のスマートな未来は、まさにSFの世界。その華々しいイメージが、工場の従業員の糾弾で揺らぐ事態となっています。


工場従業員を名乗る人物の告発


ことの発端は、今月9日、カリフォルニア・フリーモント工場の従業員を自称するJose Moranという人物がMedium上に、テスラ工場の衝撃の労働条件の実態を投稿したことから始まりました。その投稿によれば、テスラの工場従業員は、ベイエリアに位置する工場の天文学的なコストを相殺するため、「過度の強制的な残業」を強いられているとのこと。

まず賃金に関しては、時給17ドル〜21ドル(約1,900円〜2,400円)だと主張しています。米労働統計局(BLS)が昨年12月に公表したデータによれば、自動車製造業の平均時給29.53ドル(約3,300円)とのことなので、これが本当なら大きな差がありますね。また、工場では労災も頻発していて、「数カ月前、私のチームの8人のうち6人が、労災のために同時に病欠となった」と。軽い病気については、多くの従業員が口をつぐんでいるのだそう。

そのうえ、社員の組織化を阻止する試みがあるとも主張しています。

私たちは労働組合の組織化について話し合い、UAW(全米自動車労働組合)に支援を求めたが、経営陣は労働者が発言することを恐れるように仕向けている。最近も、労働者は全員、賃金と労働条件を語る権利を行使すればどうなるか、と脅かすような機密保持約款に署名しなくてはならなかった。


イーロン・マスク氏の反論


このような重大な糾弾に対し、米Gizmodoがマスク氏に意見を求めたとこと、ダイレクトメッセージで返答がありました。

低いかもしれない賃金に関しては、テスラは米国の自動車、航空宇宙及び農業労働者の労働組合員よりも高い初任給を提供しており、「株式付与を考慮すれば、一定のレベルの勤続年数に対する従業員総報酬は高い」とのこと。ただし、どのくらいの株式が、誰に対して、入社後何年目から与えられるのかは明示されていません。さらに、テスラは「中立的組織」であり、機密保持約款はあくまでも営業機密の漏洩を防ぐための手段、との見解を明らかにしています。また、残業に関しても、「生産中止の埋め合わせをしようとすれば、時には残業が必要だが、ほとんど毎週のように残業時間は少なくなっている」と反論しています。

さらに、そもそもJose Moranという人物に対する信ぴょう性に疑問を投げかけており、以下のように語っています。

この男は、テスラに潜入して組合を扇動するためにUAWに雇われていると理解している。彼は実は私たちのためではなく、UAWのために働いている。

率直に言って、こんな攻撃はひどいにもほどがある。テスラは、コストが極めて高いカリフォルニアに最後に残った自動車会社。 UAWは、トヨタとゼネラルモーターズが設立した製造会社NUMMIを潰し、2010年にフリーモント工場の労働者を見捨ててしまった。そんな連中には、何ら正当な根拠はない


Jose Moranは実在する?


こうなると、「Jose Moranという人物は実在するの?」という新たな疑問がよぎります。Mediumの投稿には連絡先の情報はありませんが、10日の時点で、LinkedInにそれまでは存在しなかった「テスラの従業員 Jose Moran」のプロフィールが作成されています。

さらに、UAWは10日の声明で、「Moran氏はUAWに雇われていないし、雇われたこともない」と、疑惑を全面否定。しかし、「テスラの自動車工場の従業員が組合結成のための支援を求めてUAWに接触」とのBloombergの報道については、UAWは「Moran氏や、テスラの他の人々がUAWに接触してきた」ことを認めています。

テスラ工場の労働条件や労働者の組合結成について、Moran氏のように声を上げる従業員が出てくるのか、それとも真相は別のところにあるのか。今後の動きに注目です。


top image: Nadezda Murmakova/Shutterstock, Inc.
source: Medium, BLS, Bloomberg

Bryan Menegus - Gizmodo US[原文]
(Glycine)