「明石焼き」と「たこ焼き」は大違い【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」】

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【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」 Vol.5 兵庫県明石「明石焼き」】

 今回のテーマ食材も来た瞬間にわかった。

 箱に力強い筆書きで「明石焼き」と書かれているからだ。

 やはり名産というものは物怖じがない。あけるまで何が入っているかわからない上に、クソが出てくるソシャゲのガチャは見習って欲しい。

◆思わず郷土愛を発揮してしまう瞬間

 話は変わるが、皆さんは「あなたの地元の名物は?」と聞かれたら何と答えるだろうか。9割は「何もない」と答え、残りの1割が「巨大な男根像を奉る祭がある」と答えるだろう。

 中には「あるだろう、琵琶湖とか」と言うような、全国的に有名なものがある場所の出身者でさえそう答えたりするのだ。

 これはスカしているというわけではなく、何せ本人にとっては地元なため当たり前になりすぎていて、珍しいという意識さえなくなっているからである。つまり、出会い頭にビッグフットと衝突するような「UMA注意」という標識があるような町の出身者でも、本人から言わせると「何もないところ」なのである。

 そんな、平素地元を意識してない人間でも等しく郷土愛を発揮してしまう瞬間がある。

 それは「わかってない奴」が現れた時である。

 私は「明石焼き」の文字を見た瞬間、「あのたこ焼きっぽいやつだな」と思った。

 これはおそらく地元の人にとってはイラッとくる発言なのではないだろうか。もしその場に明石の人がいたら、私の首は胴からTAKE OFFしていたかもしれないし、穏健派の人でも静かに1枚1枚私の爪をはがしながら「違うよ」ぐらい言うかもしれない。

 私も山口県出身だが「山口の人って全員総理大臣なんでしょ」と言われたら、イラッとくるかは置いておいて、結構なでかい声で「違う」と言ってしまうだろう。

 いつもは、地元に興味なんかないと思っていても、間違ったことを言われると結構ムキになってしまうものなのである。

◆明石焼きとたこ焼きは全然違っていた

 その明石焼きの箱をあけて見ると、やはり「たこ焼きっぽいやつ」が入っていたわけだが、いつか気分を害した明石の人に殺害されるという事態を防ぐため、この際明石焼きとたこ焼きの違いを把握しておこうと思う。

 まず「明石焼き」とググッたところ、いきなりトップに「明石焼きとたこ焼きの違い」が出てきた。もうこの時点で静かな怒りを感じる。明石焼きの概要より、まずたこ焼きと違うということを、胸に刻め(明石焼きのレシピをカッターで彫るなど)というわけである。

 その違いは、明石焼きは主に玉子で出来ており(たこ焼きは小麦粉が主)大変柔らかく、ネギや紅しょうがを入れるたこ焼きと違い、具はタコオンリー。たこ焼きはソース、青海苔、鰹節、マヨネーズなどを乗せるものだが、明石焼きはダシ汁につけていただく、というわけである。

 マジで全然違う。タコが入っているのと球体であること以外は全く別の食べ物である。

◆明石焼きにソースなど、もってのほか

 送られてきた明石焼きはまず、レンジで冷凍明石焼きを温め、付属のダシをお湯で溶いて浸けて食べるというタイプだった。

 私は事件を全てレンジの中で終わらせたいと思っているタイプなので、お湯を用意しなければいけないという事態に一瞬「面倒だ」と思った。

 だからと言ってソースで食うわけにはいかないのだ。

 漫画『グラップラー刃牙』の中で最強の生物・範馬勇次郎が「台無し」という意味で「上等な料理にハチミツをぶちまけるがごとき思想」と言ってブチキレたシーンがあったが、それと同じようにこれは「上品な明石焼きにソースをぶちまけるがごとき思想」である。