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By Mark Rain

地球の中心の内核とよばれる部分は、96%が固体としての鉄で構成されていながら、表面の温度が太陽の表面温度よりも高いことがわかっています。「なぜ内核は太陽より温度が高いのに溶けずに固体を保っていられるのか」という理由は科学者にとって長年の謎とされてきましたが、その謎に終止符をうつかもしれない論文が発表されました。

Stabilization of body-centred cubic iron under inner-core conditions : Nature Geoscience : Nature Research

http://www.nature.com/ngeo/journal/vaop/ncurrent/full/ngeo2892.html

KTH | New theory explains how Earth’s inner core remains solid despite extreme heat

http://www.kth.se/en/forskning/artiklar/new-theory-explains-how-earth-s-inner-core-remains-solid-despite-extreme-heat-1.705398

地球の最も中心に近い内核は鉄などの結晶体で、月と同じくらいの大きさがあります。想像もできないほど大きな内核の原子レベルの結晶構造は、全ての金属と同様に周囲の温度や圧力によって形状が変化します。通常の温度や大気圧下では、鉄は立方体形の単位格子の各頂点と中心に原子が位置する「体心立方格子構造(BCC)」を持っているのですが、極度に高い圧力が加わると正六角柱の天面と底面の各角、六角柱の内部に原子が位置する「六方最密充填構造(HCP)」に変化します。

地球の内核はおよそ地表面の約350万倍の圧力がかかっており、温度は6000度以上。この環境下では、内核の鉄の原子構造はBCCからHCPに変化するのではないかということが提唱されていましたが、2017年2月に公開されたスウェーデン王立工科大学の研究チームによる論文では、内核に鉄の原子構造がBCCを保っていることが発表されました。研究を率いたアナトリー・ベロノシュコ博士によれば、過去の研究で扱われた鉄よりも大きな鉄の計算モデルを調査したところ、BCC構造を持つ鉄は内核の環境下で過去には見られなかった原子拡散パターンを示したとのことです。



By Hans Splinter

調査ではスウェーデンで最大のスーパーコンピューターの1つとされるTriolithでシミュレーションを実施。その結果、原子のBCCは低温で不安定になり、高温で安定化されることがわかったとのこと。通常、原子は拡散することで結晶構造が破壊され固体から液体へと姿を変えます。しかし、地球の内核の環境下で原子構造は拡散するものの、他の原子がある場所に移動するような形でBCCの構造を保つことができるそうです。ちょっと難しく聞こえますが、この現象をわかりやすく解説したムービーをみると理解できます。

How Earth's inner core remains solid despite heat - YouTube

極端に高い温度や圧力がかかると、原子は拡散し始め不安定になります。原子が不安定になると結晶構造を保てず液体になってしまいます。



しかし、内核の極限の環境下では、まるでトランプをシャッフルしたときのように、原子構造が不安定になるものの他の原子と入れ替わるようにして結晶構造を保つとのこと。これにより地球の内核の鉄は固体として保たれているというわけです。