清水から加入した大前。技術レベルの高さは垣間見せているが、まだ連係がかみ合っているとは言えない。写真:平野貴也

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 2年連続の躍進は、新エースへのルート開拓が鍵となる。
 
 大宮は、J2からJ1へ復帰した昨季にJ1で過去最高となる年間5位と飛躍。天皇杯でも4強、ルヴァンカップで8強と好成績を収めた。
 
 当然、今季はさらなる飛躍を目指すシーズンとなるが、3年間に渡って攻撃面の絶対的な支柱となっていたMF家長昭博が川崎へ移籍。左サイドの主力だったドリブラーの泉澤仁もG大阪へ移籍したことで、新たな攻撃の形を模索している。
 
 今季は中盤、前線で複数の新加入選手が主軸となりそうだが、なかでもいち早く存在感を強めているのが、新加入のFW大前元紀だ。
 
 長らく清水のエースストライカーとして活躍していた大前は、加入直後から持ち味であるシュートの上手さを見せつけ、チームメートの信頼を早々に獲得した。キャンプ中、渋谷洋樹監督は「ボールを失わないし、ラストパスが本当に上手い。それに、瞬間的なシュート力というか、ちょっとした隙でストンと打っていく能力は、見事。あとは、誰と組むか、チームでどう生かすかをハッキリさせてあげれば良い」と称賛。新たな得点源としての活躍に期待を込めた。
 
 ただし、キャンプとプレシーズンマッチを終えた段階で、大前はまだ無得点だ。チームとしての攻撃の形が見えておらず、肝心の点取り屋に良い状況でボールを回せていない。群馬とのプレシーズンマッチは、試合開始早々に大前が蹴った右CKをFW江坂任が決めて勝ったが、パスワークでは攻めあぐねる場面が目立ち、追加点は遠かった。
 
 大前は試合後に「後ろにも上手い選手がいて、パスはつなげている。でも、中盤から先は、何をやればいいんだろうという状態になっている。それで、結局、ボールを後ろへ下げてしまう」と話した。試合の中では、中盤まで下りて攻撃の起点作りを行い、攻撃に移るパスを送る場面もあったが、ストライカーとしては、もっとゴール前で勝負したいところだ。「もっと高い位置でキープできれば良いけど、そこまで行けなかったので、下がった」と本音を漏らした。
 もっとも、攻撃の構築に時間がかかることは、予想されていた。これまでの大宮は、圧倒的なキープ力を誇るFW家長が中盤に下りてボールを収めることで全体の押し上げと人数をかけた攻撃に移るパターンが多かった。個人の能力を生かした形だっただけに、単純な代役は見つからない。
 
 連係力でカバーしたいところだが、今季は、攻撃的MFに長谷川アーリアジャスール、ボランチに茨田陽生と新加入選手が主力となる流れになっており、まだ連係不足だ。サイドやボランチなど中盤で幅広く起用される可能性があり、既存戦力の中心であるMF横谷繁も、キャンプを終えた段階で「まだチームとして昨季のベースとなっていたポゼッションの練習しかしていないので、攻撃は個々の技術や判断の勝負になってしまっている」と苦心している様子だった。
 
 早期の仕上がりを期待すると、やや不安になる話ではある。ただ、同じタイミングで、渋谷監督は「組み合わせや力を見極めている段階で、アタッキングサードに入るところから先の話は、まだ図版での説明とシュート練習くらいしかしていないのだから、当然。それでも選手がそれぞれの場面でやろうとしてくれている」と意に介しておらず、チームの仕上げに自信を示していた。
 
 チームが優先したのは、基盤となる守備とボール保持を、新加入選手を多く起用した状態でも昨季同様に行えるようになることだ。立ち返る土台の再構築と言える。主軸を入れ替えたチームが、一気に崩壊することを避けるために必要なことだ。渋谷監督は、攻撃の形作りを急がなかったことについて次のように述べている。