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By Pedro Serapio

4年前の誕生以来、遺伝子編集技術のひとつである「CRISPR」は、「植物や動物の遺伝的構成を簡単に変える方法」として多くの功績を残してきました。CRISPRのような高度な遺伝子編集技術の登場により、望むような外見・体力・知力の子どもを人工的に生み出す「デザイナーベビー」の実現の可能性は一気に高まっていますが、これは技術的にも倫理的にも強く問題視されているのが現状です。

U.S. Panel Endorses Designer Babies to Avoid Serious Disease

https://www.technologyreview.com/s/603633/us-panel-endorses-designer-babies-to-avoid-serious-disease/

人間の遺伝子を操作してより優れた子どもを生み出す「デザイナーベビー」を認めるか認めないかという問題に、アメリカ科学アカデミーが「将来的に、ある一定条件のもとで人間の生殖細胞系を編集することは、重大な疾病を防ぐことにつながるため許可されるべきである」という考えを示しました。

アメリカ科学アカデミーは22人の著名な科学者と専門家を集め、216ページにも及ぶ遺伝子編集技術に関する報告書を作成しました。この報告書には、「生殖細胞系を編集するには細心の注意が必要ではあるものの、禁止されなければいけないということはない」と記されています。

ただし、生殖細胞系に遺伝子編集を施すことが十分に安全であると確認できるまでには「長い年月がかかるだろう」とのこと。また、生殖細胞系に遺伝子編集を行う際には厳格な監視の下で実験が進められるべきであり、「遺伝子を改変して知能指数を高める」といった取り組みについては現在は行うべきではなく、遺伝子編集を認可する領域について明確に線引きする必要があると指摘しました。



By Bridget Coila

アメリカでは生殖細胞系を編集することが2015年から禁止されています。通常はこういった法案は定期的に更新される必要がありますが、人間の胚を編集する「デザイナーベビー」に関する提案は無視され続けており、法律的にアメリカでは研究を進めることができない状況です。

しかし、アメリカ科学アカデミーによる報告書作成に参加した識者たちは、生殖細胞系の編集は「重篤な疾患などを予防する」といった一部のケースでは認められるべきとしています。これは例えば、ヘモグロビンを構成するグロビン遺伝子の異常による貧血である「サラセミア」を患うカップルの場合、子どもに遺伝子編集を施せば遺伝性の血液障害が起こることがなくなるため、生殖細胞系への編集は有用なものとなると考えられています。

生殖細胞系の編集に関する世界の法律を調査している北海道大学の生命倫理学者である石井哲也氏は、アメリカ科学アカデミーの報告書について「生殖細胞系に遺伝子編集が行われることは、限られた用途ではあるものの、将来的に臨床での使用もあり得ることを明確に示している」とコメント。また、石井氏は報告書が中国やスウェーデン、イギリスなどで行われている生殖細胞系の遺伝子編集実験の正当性を示している、とも述べています。

なお、アメリカ科学アカデミーは過去に「遺伝子組み換え作物は人間や動物が食べても安全だ」と結論づける報告書も公開しています。

遺伝子組み換え作物は「安全」 米科学アカデミーが報告書  :日本経済新聞