トランプなんぞに現を抜かしている場合じゃない

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■トランプ報道の影に隠れた「重要案件」をスルーするな

新聞やテレビを見ていると連日トランプ大統領のニュースが大きく取り上げられています。私が月に数度出ている大阪の情報番組でもトランプ関連のニュースが取り上げられない日はないくらいです。

「貿易」から「移民」にいたるまで、これまでの政権ではなかったような“過激な”大統領令を、次々と発表しているからです。それに対し、わが国の政府も振り回されている感があり、さらにそれをマスコミが大きく取り上げているという構図です。

しかし、もちろんのことながら、トランプ政権の動きだけがわが国にとって重要な問題でないことは明らかです。にもかかわらず、他のニュースがあまり注目されていないことが大きな問題だと私は思っています。

【トランプ報道の影に隠れた問題1】社会保障費と財政赤字の増大

この国では少子化、高齢化が急速に進展していることはみなさんご存知のことだと思います。昨年生まれた子供の数はとうとう100万人を切ってしまいました。

わが国の医療や年金の社会保障制度は、「世代間扶助」という名の下で、現役世代が高齢者世代を支える構図となっています。しかし、現在、社会保障を支える生産年齢人口が大きく減少しつつあり、本来、医療や年金の特別会計でまかなうべき社会保障が、今でも一般会計からそれぞれ毎年10兆円ずつ補てんされています。つまり、税金や財政赤字で社会保障が賄われているのです。

生産年齢人口がさらに減少することは明らかで、そのことが社会保障費などの増大を通じて、財政赤字の残高を増加させるという悪循環となっています。対名目GDP比では先進国中最悪の財政赤字の状況なのです。

■1クラス5人が給食費を払えない日本の貧困を見よ

【トランプ報道の影に隠れた問題2】所得の2極化と、地方切り捨て

また、所得の2極化も進んでおり、社会保障のひっ迫が貧困の問題を拡大させています。小学校では1クラスで5人ほどが給食費の支払いに困っているのがこの国の現実なのです。

私には今、多くの人たちが2020年の東京オリンピックに経済成長の「幻想」を抱いているように思えます。しかし、現状毎年6兆円程度の公共事業費を使っている中で、数年にわたって2兆円程度のお金を東京中心に使っても、東京の一部が潤う程度にしかならない現実を直視しなければなりません。

そして、このお金は、本来は衰退が進む地方で使われるべきお金だったかもしれないのです。これでは人口減少が進む中、地方がますますさびれていくだけです。

【トランプ報道の影に隠れた問題3】本物の「成長戦略」なき小手先の政策

こうした中で、経済を拡大させパイを増やすのに間違いなく必要なことは「成長戦略」ですが、残念ながらほとんど語られることもなくなってしまいました。

本来なら規制緩和をさらに進め、有望分野へ投資を集中させることで現状の閉塞感を打破しなければなりません。農業においても、日本の農産物の品質の高さは世界有数で、評価も非常に高いのですが、農家の平均年齢が65歳を超えている現状を考えれば先行きには大きな不安があります。農地の集約などを進めコストダウンができれば、価格面でも世界で十分通用するでしょう。

しかし、残念ながら、農業をはじめ、有望分野でもこれといった政策は実行されず、その場しのぎのような小手先の政策が繰り返されるだけです。

先日も東京のタクシーの初乗りが410円に引き下げられましたが、6.5キロ以上は実質値上げで既得権益の保護というような状況です。本当に国民の利便性を高めたいなら、ウーバーなどを認めればいいのですが、それが既得権益の反対でやれないのです。

トランプ政権の政策にはわが国としても短期的にも対応しなければならないことは多いでしょうが、それだけでこの国の将来が保証されないことはここで挙げた問題を考えるだけでも明らかでしょう。

この国には大きな問題が存在しているという認識が必要です。

トランプ大統領の政策のニュースに隠れて忘れてしまったり、陰に隠れてしまったりしていることをいいことに、なおざりにされないことを心から願っています。

(経営コンサルタント 小宮一慶=文)