清水エスパルスから獲得した大前元紀【写真:Getty Images】

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称賛されるべき2016年。リーグ戦では過去最高の成績

 フットボールチャンネル編集部では、Jリーグ開幕に向けて各J1クラブの補強動向を診断していく。今季の目標に向けて、効果的な補強を行うことができたクラブはどこなのか。今回は、昨季のリーグ戦をクラブ史上最高順位となる年間勝ち点5位で終えた大宮アルディージャを占う。

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 J1復帰初年度となった2016シーズン、大宮の残した結果は称賛されてしかるべきものだった。J1リーグ戦では過去最高を大幅に更新する勝点56の5位。ルヴァンカップのベスト8、天皇杯のベスト4はいずれもJ1初昇格の2005年に記録した過去最高成績に並ぶものだ。

 内容に目を向けると、前半戦は志向するポゼッションがなかなか実現できなかったものの、粘り強い守備と試合終盤の勝負強さを発揮して勝点を積み上げ、上位を維持。後半戦に入ると内容的にも顕著な向上が見られ、川崎F、鹿島を攻撃力で押し切って撃破するなど、シーズンを通しての成長が躍進を支えた。

 課題として残ったのは、カップ戦の敗退時や4位の懸かったリーグ戦最終節・FC東京戦のように、要所で勝ち切れない試合を見せてしまったこと。本当の意味で上位チームとなっていくためには、まだ必要なステップがあることも感じさせた。

痛手となった家長と泉澤の移籍

 家長昭博(→川崎F)、泉澤仁(→G大阪)の離脱は大きな痛手となった。絶対的なボールの収まりどころだった家長、攻撃が詰まった際の突破に優れる泉澤を失ったことにより、攻撃の再構築は必至。いずれか一方だけでなく、同時の流出となったことも厳しい。

 ただ、攻撃陣には大前元紀、長谷川アーリアジャスールなどの実績十分の選手たちを補強しており、違った形でクオリティーを高めていくための素地は整えられたと言える。

 特に大前は、チームの課題でもある攻撃の最終局面における精度の向上に貢献できる選手だ。昨季リーグ戦のトップスコアラーは家長の11得点だったが、本気で上位進出をノルマにしていくのであれば、得点王を争えるようなストライカーは必須。ドラガン・ムルジャの復活も可能性の一つだが、キャンプから出遅れており読めない部分が多いだけに、大前にはチームに新たな側面を与えると同時に結果でも牽引する存在になることが期待される。

 もっとも、そうした諸々を勘案しても、いきなり主力2選手の穴が埋まることはあり得ない。新戦力のフィットを促すと同時に、プラスαとして若手を含む既存戦力の台頭がなければ昨季以上は臨めないだろう。

目指す方向性に変化はなし。上位の常連へ

 クラブが掲げた今季の目標は『勝点50以上、年間順位9位以上』。昨季の成績を考えれば野心に欠けるようにも見えるかもしれないが、家長と泉澤の主力2選手が引き抜かれ、相手の警戒も強まることが予想されるだけに、妥当なラインだろう。

 もちろん、早期に今季の目標が達成されれば、上方修正も視野に入ってくる。常に上位で戦えるチームを作るという長期目標の達成に向けて、基盤を確固たるものにしていくことが今季のテーマになる。

 チームとして目指す方向性に変化はない。攻撃ではディフェンスラインからのビルドアップと全体の連動したポジショニングをベースにして、しっかりとボールを握って攻め込むことを志向。守備では切り替えのスピードを拠りどころに、前線からのプレッシングによって奪いにいく形と、[4-4-2]のブロックを組んでゴールをプロテクトする形を併用する。

 昨季のリーグ終盤や天皇杯では積み上げによる完成度と凄まじい集中力により理想に近いサッカーを体現していたが、主力の流出によってダウンした部分を現有戦力の特長を生かしながら埋めていきたい。

 今季に臨むにあたって最も重要なのは、サッカーの完成度向上に取り組むことは当然として、昨季終盤に見せた勝利への気迫や集中力を通常の試合でも表現できるようにすることではないか。昨季は上位で戦う喜びや楽しさを感じたことで、自然とチーム全体が同じ方向を向いた。上位の常連となっていくためには、日頃からそれだけのメンタリティーを持って戦うことが近道となるはずだ。

診断

補強診断 C

 繰り返しになるが、家長と泉澤の流出は大きなダメージだ。ボランチとセンターバックで準レギュラー的な存在だった横山知伸が抜けたことも、長いシーズンを考えれば効いてくるはず。

 それぞれのポジションの補充はあるにせよ、適切な役割や使い方を見いだすまでに時間がかかることは間違いない。特に複数ポジションをこなす長谷川や瀬川の“使いどころ”は早期に見極め、戦力化していきたい。

総合力診断 B

 リーグ屈指の堅守を誇ったディフェンスラインとGK陣が既存戦力を維持したことで、攻撃陣の構築がどう転んでも最低限のベースは確保できる陣容となった。

 菊地光将、河本裕之というリーグ屈指のセンターバックコンビがシーズンを通して昨季同様の貢献を見せられれば、安定して勝点を積み上げることが期待できる。攻撃の完成度向上がスムーズに進めば、上位をうかがうことも可能だろう。

text by 編集部