私たち日本人は、グローバル基準で見たビジネスパートナーとして大変魅力的。ところが英語を話すということになると、几帳面さや完璧主義が裏目に出て、英語がなかなか口から出てこなくなってしまう。

そう指摘するのは、『仕事の英語 いますぐ話すためのアクション123』(河野木綿子著、すばる舎)の著者。ビジネスパーソンやビジネスオーナーをクライアントとした英語トレーナーとして活躍している人物です。

留学や外資系企業での業務など、華やかな経歴の持ち主でもありますが、それでも長年、「努力しているのになかなか英語で仕事ができるようにならないのはなぜなのか?」と考えてきたのだとか。そしてその結果、私たちが英語で話せない「10の理由」に思い当たったのだといいます。箇条書きにしてみましょう。

1. 圧倒的に「話す」練習が足りないから
2. なんでもかんでも丸暗記しようとするから
3. 日本語でも伝えたいことがはっきりしていないから
4. 「言い間違えてはいけない」と思っているから
5. 正解がたった1つだと思っているから
6. 英語ができる人に頼ってしまうから
7. 「わかり合うのに言葉はいらない」というロマンに浸っているから
8. 「なんとなくわかる」で流してしまうから
9. 「できる方法」より「できない言い訳」が先に立ってしまうから
10. 「どうして英語ではそう言うの?」と考え込んでしまうから
(17〜22ページより抜粋)

少なからず、思い当たるふしはあるのではないでしょうか? だからこそ、勉強より練習をしようという考え方。そこで本書では、役立つ練習法、習慣術、ツールや使い方、とっさの時に使える便利なフレーズ、仕事を上手に回すためのコツなどを、「仕事の英語」が話せるようになるためのアクションとして紹介しているわけです。

もっともベーシックな考え方が凝縮されたPART 1「『話す』に特化せよ 読みと文法中心の勉強法を捨てる」のなかから、きょうは「英語学習の心構え」をいくつかピックアップしてみましょう。

3カ月後、半年後、1年後をイメージしよう


夢や目標があるときは、できるだけ具体的なイメージを頭に思い浮かべることが大切。そんな話をよく聞きますが、それは英語学習にも当てはまるものだと著者はいいます。「仕事の英語」が話せるようになりたいのなら、「いつまでに、どんなふうに話せるようになりたいか」を具体的にイメージするところから始めてみるべきだということ。

たとえば3カ月後、半年後、1年後の自分を。さらに、それらの目標を達成するためには、どんな行動に落とし込んでいけばいいのかを明確にしていくわけです。

3カ月後:ゆっくりでも言葉を選びながら正しい語順で話し出す自分
半年後:あるテーマについて、その場でポイントを3つに絞ったメモ書きを作り、ショートスピーチをしている自分
1年後:顧客企業向けのプレゼンテーションを、購買決定権を持つ○○さんの前で英語でしている自分
(26ページより)

これはある受講生の実例だそうですが、結果的には実現させることができたのだといいます。目標の設定次第で、そんなことが実際に起きるというのです。(26ページより)


はじめの3か月が正念場


「仕事の英語」の練習をはじめると決めたら、挫折しないいちばんのコツがあるそうです。それは、「初めの3カ月は英語に集中する」と割り切って休まないこと。短くても、毎日続けることがポイントだということです。

3カ月という期間は、なにかに集中して取り組んだときに変化が起きはじめる時期。人材開発の世界では「行動変容」というそうですが、英語の「話す」であれば、「主語の後に動詞がくる」という英語の語順に慣れて短い文がいえるようになるということ。

もちろん個人差はあるものの、HeやSheが主語のときは自然と動詞に「s」をつけられるようになる、といった英語の土台を固めるのに必要な期間が約3カ月だというのです。

最初のひと月目、ふた月目で効果が現れなかったとしても、あきらめずに続ける。そうすれば、ある日電車のなかで外国人観光客の会話が突然耳に入ってきて意味がわかるといった、いままでと違う出来事を体験するようになるそうです。(27ページより)


「話す」に特化したトレーニングを


本書は英語の「話す」がメインになっていますが、よくいわれるように、英語習得には「読む」「聞く」「書く」「話す」の4つのスキルが必要です。そして、なかでも大切なのは「読む」こと。読んで意味がわからないことは、聞いてもわからないもの。まして、それを話すことは不可能であるわけです。そういう意味で、「読む」は他の3技能「聞く」「書く」「話す」の基礎だといえるそうです。

ただし、これから英語を話せるようになるためには、その基礎力を生かしたアウトプットが必要なのだと著者。発話練習や音読など、より「話す」に直結する方法に切り替えていかなければならないということです。さらにいえば、「聞く」は話のやりとりに必須のスキルであり、発音の習得にも欠かせないもの。また「書く」は、「話す」と同じように発信するスキル。いいたいことを、まずは書いて文にすることが、準備練習として大いに役立つのだそうです。

つまり、まずは学生時代の試験のための英語勉強法を捨てることが重要だということ。文法の復習も、最低限でかまわないといいます。わからないことがあったら「調べる」にとどめ、「話す」練習に時間を割く方法に切り替えることが先決だといいます。(28ページより)


「時間」でなく「量」や「回数」を決める


毎日のトレーニングについて、それぞれ「どれくらいやるか」の目標を立てるときは、できる限り「量または回数」で決めるようにすることが大切なのだそうです。時間で決めてしまうと、ちゃんと集中できないうちに練習時間が過ぎてしまい、「効果がいまひとつ」ということになりがちだから。

たとえば英文のニュースを音読すると決めた場合であれば、「BBC Newsの記事を3つ」、語彙を増やすなら「職場で新しく知った単語や表現を3つノートに書き出してマスターする」といった具合です。

要するにダラダラと15分リスニングをするよりも、5分で1つ新しい言い回しをつぶやいてマスターする。そのほうが、いますぐ話すためには効果的なトレーニングだということです。そして短い時間であったとしても、的を絞って回数を積み重ねていけば、「仕事の英語」は着実に上達するといいます。

もし1日の量や回数がこなせないようなら、今より英語のために時間をひねり出す、それが難しいようなら、量や回数を見直す、もしくはトレーニングメニュー自体をよりやりやすいものに変更するなど、柔軟に変えて続けていきましょう。(31ページより)

著者が強調しているように、話せるようになるのは、やった人だけ。おそらく、本書における最大のポイントはここにあります。こうした考え方を軸として、具体的なメソッドを示しているからこそ、そこに強い説得力が生まれるのです。

そして、「自分が本当にやれているのかどうか、より客観的に把握するためにも、時間だけでなく量や回数で考えるべきだということです。(31ページより)



これらの記述からもわかるとおり、本書の最大の特徴は「仕事の英語」に特化している点です。目的がはっきりしているぶん、着実に力をつけることができるわけです。

1日10分でも、話す練習を継続する行動習慣をつくっていくことが大切だと著者は記しています。そういう意味でも、各項目が1〜2ページ程度でコンパクトにまとめられている本書には利用価値がありそう。まずは興味のあるページから、気軽に読んでみてはいかがでしょうか?


(印南敦史)