金正恩氏

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北朝鮮の崔龍海(チェ・リョンヘ)朝鮮労働党中央委員会副委員長は最近、金正恩体制が威信をかけて推し進めているタワーマンション団地、黎明(リョミョン)通りの建設現場を視察したが、これは現場で起きた労働者の死亡事故の収拾のためだったと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

看護師も失神する地獄

朝鮮労働党の機関紙・労働新聞は今月1日、崔氏が、速度戦青年突撃隊が担っている黎明通りの建設現場を視察したと伝えている。金正恩党委員長の叔父・張成沢(チャン・ソンテク)氏の粛清以降、北朝鮮メディアが正恩氏と内閣総理以外の個別幹部の視察を報じるのは、極めて異例だ。

RFAが最近、平壌を訪れた咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋の話として伝えたところによれば、この視察は、現場で起きた労働者30数人の死亡事故の収拾を図るためだったという。

北朝鮮では、このような大規模事故が多発している。

その原因の多くは、重要な記念日や大きな政治的行事の場で成果として発表するために、ハコモノ作りの工期を無理やり短縮する突貫工事「速度戦」にある。

過去には高速道路の工事現場で、橋が崩落し500人が死亡する事故が起きている。後に韓国へ逃れた目撃者たちの証言によれば、この崩落事故で川原には原形をとどめない死体が散乱し、現場は救助の看護師たちが気を失うほどの地獄絵図と化したという。

(参考記事:北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

報告を受けた金正恩党委員長は、国民の評判は悪くとも大幹部ではある崔氏を急遽現場に派遣し、事故の収拾と経緯の徹底調査を命じた。

ところが、情報筋は「急な知らせだったので、状況についての詳細説明がなく、金正恩氏は勘違いしていたようだ」と述べた。つまり、より大きな事故だと思い、崔龍海氏を派遣したというのだ。

逆に言うと、死傷者30数人の労災事故なら、側近を派遣するまでもないほど日常的に起きていることを意味する。

金正恩氏はまた、2014年5月13日に平壌市の平川(ピョンチョン)区域で起きたマンション崩壊事故を思い起こしたようだ。人民保安部(警察)が建設した23階建てのマンションが崩壊し、400人以上の死傷者が発生する大惨事となった。

最終的には、建設責任者で日本の警察庁長官に当たる崔富一(チェ・ブイル)人民保安部長(当時)が、「すべての責任は自分にある」と住民を前にして謝罪する異例の事態となった。

一方、今回の黎明通りの事故は、マンションの38階の現場でコンクリート打設中に、その重さに耐えかねてスラブが傾いたことで起きたもので、多くの負傷者が発生。亡くなったのは女性突撃隊員1人だったと後に判明した。

両江道(リャンガンド)の別の情報筋は、崔氏が現場を訪問し、突撃隊員を激励したのは、事故で現場の労働者が萎縮することを懸念してのものとの見方を示した。

正恩氏は先月、黎明通りの建設現場を訪れ、「黎明通りの建設を太陽節(4月15日の故金日成主席の生誕記念日)まで無条件完工しよう」と述べたが、今回の事故で労働者が萎縮し、予定までに工事が終わらないことを懸念したというのだ。

しかし、「中身はともかく、とりあえず早くできればいい」という「速度戦」の悪弊がなくならない限り、工事の質は上がらず死傷事故も頻発し、生産性の向上を妨げ続けるだろう。