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●まずはスマホとしての性能をチェック
鼓動で大きく心を突き動かすという意味の造語「GRANBEAT」を愛称とする、オンキヨーのSIMフリースマートフォン「DP-CMX1」がついに国内発表された。発売は2月末の予定だが、最終開発版を試用する機会に恵まれたため、ファーストインプレッションをお伝えしたい。

「GRANBEAT」ことDP-CMX1は、昨年発売のハイレゾDAP「DP-X1A」をベースとしたスマートフォン。基本設計はDP-X1Aを踏襲するが、SIMを搭載することでセルラー回線を利用した通話やデータ通信が可能になった。しかもSIMスロットは2基でデュアルSIM/デュアルスタンバイ(DSDS)をサポート、2枚のSIMで同時待ち受け可能という格安SIMユーザにはうれしい仕様だ。

DP-CMX1のSIMスロットは本体右側面にある。microSDカードスロットもそこに用意されているため、SIMはともかくmicroSDを交換するときにも安全ピンは欠かせない。デュアルSIMスロットとmicroSDを同時利用できるスマートフォンは少なく、その点は大きなアドバンテージだが、microSDの交換に手間取る仕様はやや惜しい。

通信機能をひととおり試してみたが、SIMについてはドコモ系MVNOは問題なし(nuroモバイルのSIMで確認)。通話/データ通信で優先的に使うSIMの切り替えも、「設定」アプリからかんたんに実行できた。ただし、発表会のとき入手した情報どおり、au系SIMはデータ通信/通話とも利用できなかった(auのSIMで確認)。SIMスロット1は4G/3G、SIMスロット2は3Gのみ対応という点も認識しておきたい。キャリアアグリゲーションによる高速通信やVoLTEには対応しないことも、スマートフォンとしての性能を最優先する向きには気になるところだろう。

Android OSは6.0 Marshmallowで、最新スマートフォンの多くが搭載している7.0 Nougatのひとつ前ということになるが(アップデート計画は未発表)、レイテンシの短縮などオーディオ分野の基礎部分の強化は6.0のときひと段落していることもあり、"音"という点ではそれほどこだわる部分でもない。

SoCには6コア(1.8GHz+1.4GHz)の「Snapdragon 650(MSM8956)」を搭載、3GBという大容量RAMを搭載することもあり、レスポンスは良好。内蔵メモリがDP-X1Aの64GBから128GB(システム領域含む)に倍増したことも含めれば、ミュージックプレイヤーとしての操作性や使い勝手はよいといえる。内蔵バッテリーは3,000mAhとDP-X1Aの約2倍、Qualcommの急速充電規格「Quick Charge 3.0」をサポートしたことと、使い勝手に直結するバッテリー周りの仕様を充実させたこともポイントだ。

●電磁ノイズ対策の効果は
DP-CMX1の基板設計はノイズ対策を考慮し、SoCなどスマートフォンとしての回路がある基板と、DACやアンプなどオーディオ基板を完全に分離。オーディオ部はDACにESS社の「ES9018K2M」、ヘッドホンアンプに同じくESS社の「9601K」を搭載、左右に2基づつシンメトリーに配置するというDP-X1Aの設計に倣った。もちろんバランス駆動・バランス出力のためのデザインであり、製品のアイデンティティといえる。

2.5mmバランス端子使用時にBTL駆動とACG(アクティブコントロールグラウンド)駆動を選択できるのは、DP-X1Aと同様。PCMは最大384kHz/24bit、DSDは11.2MHzまで再生できるが、Android OSの制約によりイヤホン出力は最大192kHz/24bitのリニアPCM変換となる点も同じだ。USB DAC(OTG接続)を用意するとDSDネイティブ再生が可能になることもあわせれば、DP-X1Aをセルラー通信対応させスマートフォン化した製品であることは確かだ。

つまり、この製品最大のポイントは「セルラー通信を行うようになり電磁ノイズの影響を受けやすくなった中でDP-X1Aの音質を維持・向上できているかどうか」にある。発表会では、セルラー回線やWi-Fiのオンオフを切り替えてもSN比にほとんど差がないと説明していたが、実際のところどうなのか。

試聴には、Shureのダイナミック型イヤホン「SE215m+ Special Edition」を使用した。MMCXコネクタを採用しているため、標準装備でリモコン付きのアンバランス/3.5mm端子ケーブルだけでなく、バランス/2.5mm端子ケーブルに交換できるからだ。なお、リケーブルにはPC-Triple C導線を採用したSAECコマース「SHC-B120FS」を利用した。

全体的な音の傾向は、スピード感があり、解像感の高さと音場感の豊かさが際立つ。SE215というイヤホンのキャラクターもあり、低域の厚みとキレを感じさせつつも緻密な階調の高域を実感できる。オーディオ再生用の基板デザインや部品構成がほぼ同じ(基板サイズ自体は小型化されている)ことから、音の印象はDP-X1Aとよく似ているが、スマートフォン化したことで電磁ノイズが増えたことを考慮すると、この水準を維持できたことは快挙だ。

聞けば、DP-CMX1にはオンキヨーの高周波設計技術とオーディオ設計技術を融合したシールド技術が利用されているという。特許出願中ということで詳細は語られなかったが、効果はありそうだ。というのも、DP-CMX1には「スタンドアローンモード」という通信機能や画面表示を完全にオフにするモードがあるのだが、そのオンオフを切り替えても顕著な差が感じられなかったからだ(SN感はやや改善されるため存在意義はある)。

●どんな人に向いている?
音質関連でDP-X1Aになかった機能としては、最新ワイヤレスオーディオコーデック「aptX HD」のサポートが挙げられる。現時点では数少ないaptX HD対応ヘッドホンのオーディオテクニカ「ATH-DSR9BT」で試聴してみたが、同じ音源(FLAC 96kHz/24bit)でもaptXやAAC接続時との差は歴然。24bitらしいきめ細かい階調感があり、ボーカルの定位や音場感のリアリティは格段に増した。今後aptX HD対応機は、スマートフォン、ヘッドホンともに増えるだろうから、ワイヤレスでも音質にこだわりたい向きには押さえておきたいフィーチャーといえる。

気になる点があるとすれば、操作ボタンの配置だ。DP-X1Aのときも、ボリュームダイヤルは左側面、操作ボタンは右側面に配置されていたが、それほど頻繁に操作する必要がないDAPだから不満を感じなかっただけのこと。DP-CMX1はスマートフォンであり、画面に触れる機会が多いため、掴みあげるとき操作ボタンについ触れてしまう。個人的には、SIMスロットのあたりに操作ボタンが配置されるほうが誤動作は少ない(本体下部を掴みあげる人は少ないはず)と思うが、どうだろう。

とはいえ、スマートフォンではおそらく世界初のバランス駆動・バランス出力対応機であり、特許出願中のシールド技術など新機軸も多い。aptX HDの対応も、ときにはワイヤレスヘッドホンで過ごしたいユーザーには気になるはず。DSDネイティブ再生には対応しないが(PCM変換)、新ハイレゾフォーマット「MQA」の再生はサポートされている。音質にこだわりたいがスマートフォンの複数台持ちはちょっと、という向きに好適な1台であることは確かだ。

(海上忍)