来年開催される平昌五輪プレ大会として、2月12日まで韓国の江陵(カンヌン)オーバルで行なわれていたスピードスケート世界距離別選手権最終日。

 前日の1000mで高木美帆(日体大)は1分15秒47の6位という結果に、「今日は自分の弱いところに打ち勝つことができなかったのが一番悔しい」と語っていた。


パシュートでは銀メダルを獲得した。左から押切美沙紀、高木美帆、高木菜那 しかし、最終日のこの日は一変する。最初の1500mで昨年12月のヘレンベーン(オランダ)で出した、低地自己最高記録を0秒96更新する1分55秒12で3位になって、この種目11年ぶりとなる世界距離別のメダルを獲得。その後行なわれたマススタートでは、ラスト2周から先頭に出て姉の高木菜那(日本電産サンキョー)を引っ張った。自身は転倒に巻き込まれてメダル獲得はならなかった(21位)ものの、姉の銀メダル獲得に貢献した。

 高木は今大会、初日からレースに出ずっぱりだった。初日の3000mでは15年に高地のカルガリーで出した4分05秒34の自己記録を大きく更新する4分04秒50で8位。しかし、表情はあまり明るくなかった。

「ベストが出たので悪い滑りではないし、自分の今のコンディションを受け入れてその中でどう滑るかに集中してレースに挑むことができた。ただ体調面では1月末のベルリンから万全ではないと感じている。年末から体重が落ちていたり、コントロールできていないので、連戦の疲れだけではないと思う。調子をここに合わせるというのは一筋縄ではいかないなと思った」

 それでも2日目の女子パシュートでは、姉の菜那や押切美沙紀(富士急)と組み、15年にカルガリーで出した日本記録に0秒04まで迫る2分56秒50を出して、オランダに次ぐ2位となる牽引役を担った。3日目に出場した1000mは、パシュートで力を使ってしまったダメージが出ていたという。

 最終日はそんな状況での、1500mとマススタートの2種目に出場だった。

1500mでは、「いつも最初の300mの入りの時に、(最初の)直線の100mは速いのに、カーブを過ぎた200mからの直線で、カーブを滑るリズムに乗り過ぎてスピードに乗れないというのが続いていたので、そこを含めて300mの手前からどんどんスピードを上げていくイメージを持って滑った」という。実際に、300m通過は12月のヘレンベーンより0秒15速い25秒46だった。前日まで悩んでいたスピードを乗せられないという部分も、ちょっとした修正で改善できたと振り返る。

 加えて、同走がこの種目でW杯ランキング1位のマリット・レーンストラ(オランダ)だったのも幸いした。500mから1500mまでを主戦場にするスピード型の相手に1100mまで引っ張ってもらう形が功を奏し、逆転となった(レーンストラは4位)。

「タイムも低地ベストを出すことができたし、高地で出した自己ベストにも近いタイムだったのと、3位になれたことはうれしいです。でもそれ以上にレース展開を含め、自分でイメージしたリズムやペース配分を実践できました。なかなか体力が戻ってこないなかでもしっかり気持ちで滑れたし、いろいろレースをやる中で最後までもがき続けた結果かなと思います」

 こう話す高木は、「恥ずかしい話ですが、昨日の1000mを100%で滑ることができなかった分、体が少し回復方向に向かった。昨日起きた時と今日起きた時は体のコンディションも違い、『今日はいける』と思ったので……。1000mを犠牲にしてしまった部分はありますが、1500mで結果を出せたのでよかったと思います」と苦笑した。

 メダル獲得はうれしかった一方で、優勝したヘザー・ベルグスマ(アメリカ)には1秒04差をつけられた結果は悔しかったという。

「表彰台に上がった時に、(1位、2位の)ヘザーとアイリーン・ブスト(オランダ)は、ほかの選手たちと雰囲気が違うので怖さを感じました。でもこのふたりに勝ちたいと思ったし、表彰台の一番上に乗れば違う景色も見えるんだろうなと。この大会ではそういう経験ができたので、これも経験値として積み上げていきたいと思います」

 最後のマススタートでは、姉の菜那が銀メダルを獲得した。「W杯ランキング1位のキム・ボルム(韓国)についていく作戦が、残り6周からは妹と合体してその通りにできた。最後の競り合いでは、もう脚がなくてキムに競り負けてしまいましたが、作戦通りにできた」と菜那は笑顔を見せる。

 そんな姉の銀メダル獲得について、美帆は「マススタートは作戦通りの展開をすることができましたが、自分がもっと半径の小さいカーブを滑る技術を上げて、姉も最後の持久力を強化することができれば、(さらに)ふたりのコンビネーションで戦えるなという手応えを得た」と語った。そして、この4日間の大会で5種目に出場した意味をこう話す。

「レースに出ることでレース感覚を取り戻したいというのがありました。マススタートは出るかどうか迷ったんですが、プレシーズンで世界距離別選手権という環境の中でやっておいた方がいいと思ったので出場しました。その部分では、どのレースでも来シーズンや平昌五輪につながるレースができたんじゃないかなと思う。やっぱりタフさというのは実際にやってみなければ感じられないと思うので、この大会でタフさを得られたと思うし、自信になる部分もたくさんあった。全体的にはいい大会になったと思います」

 高木美帆は来年の平昌五輪へ向けても、出られる種目は全部出たいと明言した。オールラウンダーとして世界の頂点に立ちたいという彼女の夢は、この大会でさらに大きく膨らんできた。

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