田舎暮らしの勧め?

微小粒子状物質(PM2.5)の濃度が環境基準を突破し、数メートル先も見えないスモッグに覆われた世界各国の大都市。これは大気汚染の極端な例ですけど、そこまで深刻ではなくても自動車の排ガスなどに日々さらされるだけで、実は脳に重大なダメージが蓄積されていっている危険性があるそうです。Scienceより、このほど新たな警鐘が鳴らされましたよ。

PM2.5などが喘息、肺がん、心臓病などを引き起こすことは広く知られてきました。とはいえ、近年の研究で懸念されているのは、認知症やアルツハイマー病と大気汚染の関連性です。

古くは2000年代初頭のメキシコシティーにて、市内でも大気汚染のひどいエリアに居住していた犬たちに起こった症状。老いとともに精神錯乱に陥って、方向感覚を失ったり、自分の飼い主すら認識できなくなったりすることが相次いでいると指摘がありました。モンタナ大学の神経学者のLilian Calderon-Garciduenas氏は、同症状で死亡した犬たちを解剖し、脳内にアルツハイマー病との関連性が疑われるアミロイドβタンパク質の蓄積が見られると発表。物議を醸したものの、これだけでは大気汚染が脳におよぼす影響を特定できないとの意見も相次ぎました。

しかしながら、このほど南カリフォルニア大学の研究チームは、交通量の多い高速道路から排ガスを収集し、人の髪の毛の細さの200分の1以下というレベルの小さな汚染物質を摘出。実験室のマウスに数週間にわたって浴びせ続け、脳に生じる変化を調査しました。

すると、先のメキシコシティーの犬のケースと同様に、クリーンな空気で生活したマウスと比較して、汚染物質を浴びせられたマウスの脳内にアミロイドβタンパク質の蓄積量が異常に多くなることを発見。また、記憶の喪失と関連づけられる脳の炎症なども認められました。PM2.5の環境基準でも測定できない、もっと微粒子の汚染物質は、鼻から吸い込むと、ひどい場合はダイレクトに脳神経まで達するので、こうした現象を引き起こしている可能性が高いと発表されています!

今後は人間に同じような作用が生じるのかを中心に、研究調査が進められていく予定です。とはいえ、明確な科学実験データこそそろってはいないものの、大気汚染と認知症やアルツハイマー病との関連性は、各所で疑われてきました。一部では、タバコの煙と大気汚染の両方にさらされると、さらに発症の危険性が高まるとの指摘まで出ています。

こうした研究結果を受けて、カナダのトロント大学では、オンタリオ州に住む人々の認知症の発症率を試算。主要道路から50メートル以内のエリアに居住する人は、主要道路から200メートル以上離れたエリアに居住する人と比べて、認知症になる確率が12%アップするとのデータを発表しています。大都会での暮らしは便利ですけど、空気のきれいな山里などで生活するほうが、やはり長く健康に生きられるのかもしれませんね…。


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top image: Lightspring / Shutterstock
source: Science

(湯木進悟)