2014年12月に起きた、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士が国境の川を渡り、中国の民家に押し入って、民間人を殺害した事件はデイリーNKでも報じたが、この犯人が自殺していたことが最近になって分かった。韓国の東亜日報が報じた。

女性の売買も多発

中国・吉林省延辺朝鮮族自治州の和龍市の中心から車で1時間のところにある南坪鎮。幅10メートルの豆満江を渡れば、北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)茂山(ムサン)郡だ。町のはずれの工業団地、和龍辺境経済合作区のそばにある吉地村で2014年12月27日、北朝鮮兵士が70代の老夫婦など4人を射殺する事件が起きた。

現地の情報筋によると、犯人は当初27歳の一般兵士と言われていたが、実際は初級将校だった。事件の翌日に出動した中国人民解放軍と銃撃戦を繰り広げ、腹部を負傷して捕らえられた。病院で手術を受け、一命はとりとめたものの、手術部位を自分の手でかきむしり自殺した。

北朝鮮に強制送還されれば銃殺は免れないと思い、自ら命を絶ったものと思われる。

和龍市公安局辺防大隊は、事件の後に村の民家を借り上げて、兵士6人を駐屯させるなど、警戒を強めている。また、村民に対しては「不法越境者が家に侵入し、金品を要求したら抵抗してはいけない」「不法越境者を通報すれば1人あたり1000元(約1万6000円)の報奨金を支払う」などと書かれた案内文を配布している。

この村を含む中朝国境地帯の中国側では、数年前から、飢えに耐えかねた北朝鮮軍兵士による強盗事件が後を絶たない。

2015年3月には、北朝鮮の平安北道新義州(シニジュ)市の黄金坪(ファングムピョン)から中国の丹東市に侵入した北朝鮮の兵士2人が、中国人女性1人を人質とし、中国人民解放軍と銃撃戦を繰り広げ、逮捕される事件が起きた。

また、2015年4月には、和龍市で、北朝鮮軍兵士が住民4人を殺害する事件が発生、昨年6月には、北朝鮮の兵士1人が武装したまま両江道(リャンガンド)金亨稷(キムヒョンジク)郡から吉林省臨江市に逃げこむ事件が起きた。

さらに、昨年7月には吉林省白山市の長白朝鮮族自治県の二十道溝村と小梨樹溝村の民家に北朝鮮軍兵士5人が押し入り、金品を盗んだが、その5日後に中国の公安当局との銃撃戦を繰り広げ、2人が逮捕される事件が起きた。同じ時期には、同じ長白県の馬鹿溝村に住む老夫婦が、別の北朝鮮軍兵士に殺害される事件が起きた。

このような脱北した北朝鮮軍兵士による強盗殺人事件や物乞いなどは、相当数起きていると伝えられている。

もともとこの地域は、北朝鮮女性を売り飛ばす人身売買など、国境を股にかけた犯罪が多発してきた。ただ、中国当局が情報統制を敷いているため、その全貌は明らかになっていない。

(参考記事:「中国人の男は一列に並んだ私たちを選んだ」北朝鮮女性、人身売買被害の証言