栄光のナンバー10を背負うのが福田だ。1年時に2冠を経験した新エースが牽引車となる。写真:松尾祐希

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 昨今、高校サッカーにおける新人戦の重要性は薄れ、力を入れる地域は以前に比べて大幅に減った。しかし、九州では趣が異なる。依然としてレギュラークラスの選手を各チームが送り込み、春先から凌ぎを削る風習が継続されているのだ。
 
「この時期からバチバチやり合うから良い」と大津の平岡和徳総監督が語るように、公式戦でしか得られない経験値を春先に積めるメリットは大きい。今回も九州と沖縄から各県上位2校の16チームが佐賀に集結し、2月10日から4日間に渡って真っ向勝負を繰り広げた。

 そのなかで注目が集まったのは、先の高校選手権でプロ内定トリオ(藤川虎太朗→ジュビロ磐田、郄江麗央→ガンバ大阪、小田逸稀→鹿島アントラーズ)を擁してベスト8に食い込んだ、一昨年の2冠王者、東福岡だ。
 
 今回の九州新人戦はナショナルGKキャンプに参加した松田亮(1年)と、U-18日本代表のスペイン遠征に帯同したDF阿部海大(2年)が不在だったが、それでも新チームには期待値の高い選手が数多く名を連ねる。U-15日本代表に選出された経験を持つGK緒方翔平(2年)、昨年度からトップチーム入りしている右SBの中村駿(2年)、プロスカウト大注目の新10番、福田湧矢(2年)と、正確なキックが魅力のMF青木真生都(2年)といった面々だ。脇を固める役者も揃う。とりわけ「アイツは絶対に良い」と志波芳則総監督が激賞するアンカーの中村拓也(1年)と、最前線を主戦場とするFW大森真吾(1年)のふたりが伸び盛りだ。
 
 ただ、森重潤也監督は「正直、今年のチームに関してはなにもない。現実をしっかり受け止めることが大事」と、選手たちのプレーに疑問を呈した。今大会はベストメンバーを組めなかったとは言え、連携面やパス回しの局面で細かいミスが頻発。予選リーグから個の力で相手をねじ伏せるも、チームとしての未熟さが顔を覗かせた。結局のところその課題は大会中に改善されず、準決勝の長崎総科大附戦を0-1で落としてしまう。組織力の違いを見せ付けられた。
 
 主軸を欠いた影響もあって納得のいくプレーができなかった“赤い彗星”。敗因のひとつに挙げられるのが、課題に対しての取り組み方だ。
 
 準決勝の後、選手たちは宿舎で話し合いの場を設けた。「昨日も2時間以上ミーティングをして、自分たちが思っていることをみんなで発言できた。そこは結構うまくやれている。なので、今日の3位決定戦(大津戦、2-2からPK戦で敗れた)では昨日よりパスが繋げていたし、サイドチェンジもクロスも多くなった。ミーティングの成果は出たと思う」と、福田は意見交換の成果に胸を張った、しかし、コーチ陣の目には物足りなく映っていた。

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 元日本代表FWの山下芳輝氏らと選手権でベスト4に入った経験を持つ平岡道浩コーチは、「話し合いの内容が薄い。反省が細かくできていないから、プレーもアバウトになっていた」と、本当の意味で課題は追求できていないと話す。
 
 なぜ、平岡コーチは苦言を呈したのか。そう感じたのには訳がある。自分の2つ年下で1997年度に3冠を達成した本山雅志(ギラヴァンツ北九州)たちの代を間近に見ていたからだ。
 
「(3冠メンバーの)古賀大三とかはフェイントの練習とかを居残りで自らやっていたし、普段の練習でも僕らのプレーを見て盗もうとしていた。でも、いまの代は居残り練習をやっていてもやらされているように見えるし、課題を本気で解決しようとはしていない。3冠メンバー全員がそうではなかったかもしれないけど、少なくともその人数は多かった」
 
 環境も違うため、公式戦52戦無敗を成し遂げた伝説のチームと比較するのは難しいが、主体的に行動を起こさなければ真の意味で強くなれないのは事実だ。志波総監督も「3冠を獲った時はあまり課題をこちらから言わなかった。彼らはなにをしなきゃいけないのかが分かっていたし、それに対して自ら取り組んでレベルを少しずつ上げていった」と、当時を回想する。
 
 修正力を身に付けるためには、偉大な先達のように主体的に取り組む必要がある。しかし、いまの選手は当時を知らない。だからこそ、彼らにとっては2年前に日本一を獲った世代が身近なお手本となる。とりわけ、その雰囲気を1年時に肌で感じ取っている福田のリーダーシップは大きなポイントだ。現状ではまだまだ理想的な振る舞いはできていないが、新10番はあの日本一の経験をチームに還元したいと意気込む。
 
「プレーで引っ張っていかないといけない。(2年前の主将で10番の中村)健斗君とかはたまに強い言葉で叱責をしていて、求めてくる要求が凄く高いレベルだったので、あの人に合わせれれば凄いサッカーができると感じていた。だから、あの人のように振る舞いたいと思う」
 
 自身のプレー基準を引き上げた上で、周囲への要求レベルを高める。これができれば、おのずとチーム力は向上していくはずだ。
 
 思い返せば、2年前のチームも発足当初は期待されていなかった。しかし、その悔しさをバネに夏冬連覇という快挙を成し遂げた。今年のチームも意識を変えて修正力を身に付けられれば、日本一を狙うだけのポテンシャルは十分にある。頂点を獲った先輩たちを知るコーチ陣のサポートを受けながら、日本一を経験したエースとともに、赤い彗星は進化を遂げられるか。まだ、シーズン開幕まで時間はあるだけに、今後の取り組みに期待したい。
 
 
取材・文・写真:松尾祐希(サッカーライター)