世界の飢餓からダイエットにまで貢献するキヌア

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「奇跡の穀物」と呼ばれるキヌアのほぼ完全なゲノム(全遺伝情報)に解読したという研究報告が科学誌「ネイチャー」の最新版に発表された。2017年2月8〜9日、ロイターやAFP通信など海外メディアが報道した。

キヌアは栄養価が非常に高く、飢餓対策の決め手として国連が2013年を「国際キヌア年」に設定、米航空宇宙局(NASA)も「宇宙食」に採用している。しかし、苦みがあり食べにくいなどの欠点があった。研究者は「遺伝子情報を元に品種改良で苦味を甘味に変えることが可能になった」という。

ゲノム解読で「苦味」を「甘味」に変えられる

国連のウェブサイト「国際キヌア年2013 数千年前に種撒かれた未来」(日本語版)によると、キヌアの原産地は南米のアンデス山脈一帯だ。紀元前3000年前から栽培され、人々の主食になっていた。氷点下の乾燥した高山地帯から40度以上の熱帯雨林地帯までどこでも栽培できる。しかし、16世紀のスペインの侵略によって小麦栽培を強制され、キヌアはすたれた。再び脚光を浴びたのは1990年代。NASA(米航空宇宙局)がキヌアの栄養面、取り扱いやすさなど様々な利点から宇宙空間での長期滞在に最も適した「宇宙食」に採用した。

キヌアは栄養価が非常に高い。白米と比較すると、タンパク質は約2倍以上、鉄分は5倍、カルシウムは6倍、リン7倍、食物繊維は10倍。体内で作れない9種類の必須アミノ酸が全部含まれ、アミノ酸スコアは牛乳並みだ。ビタミンB群、D、Eやマグネシウム、鉄などのミネラルが豊富な完全食品である。

緑黄色野菜に匹敵する葉酸と鉄分の働きで、貧血防止の効果がある。ビタミンEと鉄分のおかげで冷え性、便秘の改善にもなり、女性にはうれしい。体内で女性ホルモンと似た働きをするフィトエストロゲンが含まれているので、更年期障害の改善や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防になる。また、他の穀物に比べ血糖値の上昇のしやすさを示す「グリセミック指数(GI値)」が低いのも利点だ。

道端アンジェリカも毎朝のサラダに

このため、キヌアをダイエット食品に愛用するセレブが多く、2016年4月12日放送のNHK「あさイチ」では、モデルの道端アンジェリカさんが毎朝食べている「キヌアサラダ」が紹介された。

2017年2月9日付AFP通信によると、研究を発表したのはサウジアラビアのアブドラ王立科学技術大学のチーム。AFPの取材に対し、チームリーダーのマーク・テスター教授はこう語っている。

「キヌアはやせた土地や塩分の強い土壌でも育つ、けた外れの回復力を持っています。しかし、小麦、コメ、トウモロコシなどの年間消費量がそれぞれ数億トンなのに比べ、10万トン足らずです。キヌアが抱える問題の1つは、野鳥や害虫に対する防御機能として毒性と苦味があるサポニンという成分を持っていること。サポニンを取り除くためには大きな労働力と大量の水が必要です。コストがかかるため大規模生産にいたっておりません」

もう1つの問題点は、キヌアが小さい穂と長い茎を持つため、強風や豪雨で倒れやすいことだ。こうした欠点をゲノム解読によって得た遺伝情報を元に品種改良をすれば、甘くて風雨に強いキヌアを作ることができる。

テスター教授はロイター通信の取材に対し、「キヌアの増産が、とどまることを知らない人口増加のなか、食糧を安定的に供給することに貢献するでしょう」と語った。