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宇宙に浮かぶ巨大な望遠鏡「ハッブル宇宙望遠鏡」を用いた観測で、氷でできた巨大な彗星状の天体が白色矮星の重力によって分解され、恒星の持つ大気の中に散らばったことを世界で始めて観測することに成功しました。この彗星は有名なハレー彗星の兄弟分とも呼べる特長を持つもので、ハレー彗星よりも10万倍も巨大なものだったことがわかっています。

Hubble finds big brother of Halley’s Comet ripped apart by white dwarf | ESA/Hubble

http://www.spacetelescope.org/news/heic1703/

この現象が確認されたのは、うしかい座の方角で170光年の距離にある白色矮星「WD 1425+540」においてです。研究チームはハッブル宇宙望遠鏡とハワイにあるW・M・ケック天文台を使った観測で、巨大な彗星が破壊されながら白色矮星に落ちていく様子を観察したとのこと。



By Hubble ESA

研究チームによると、この彗星はハレー彗星とよく似た成分によって構成されており、ハレー彗星の10万倍の大きさを持ち、ハレー彗星の2倍の水分含有率となっているとのこと。スペクトル分析を用いた結果、この彗星には炭素や酸素、硫黄、窒素など生命の誕生に重要な成分が含まれていることがわかっており、世界で初めて白色矮星に落ちていく彗星の破片に窒素が含まれていることが確認されています。

この発見の成果について、論文の主執筆者であるヨーロッパ南天天文台のSiyi Xu氏は「よく知られているとおり、窒素は生命にとって重要な成分です。この彗星は非常に窒素を多く含んでおり、その比率は太陽系で観測されている物体よりも高いものとなっています」と語っています。

岩石でできた天体の破片が白色矮星に落下して汚染が起こることはこれまでにも確認されていましたが、氷でできた彗星が落下して汚染することが確認されたのは初めてのこと。白色矮星は、太陽系でいう太陽のような恒星が安定して核融合反応を行う「主系列」の段階から恒星全体が膨張する赤色巨星の段階を経て、最後に冷えていくだけの段階に入った恒星であり、今回観察された彗星は巨大化した赤色巨星による高熱の状態を生き延びていたものだったことが明らかです。

この彗星は、太陽系に存在しているカイパーベルトのような、惑星の卵が集まって浮遊している領域から軌道を外れ、惑星系の中心にある白色矮星の重力に引き寄せられて分裂・落下したものと考えられています。なぜこの彗星がベルトの軌道を外れて白色矮星との衝突軌道に入ることになったのか、その理由について研究チームは「未知の天体が重力バランスを崩したことで軌道に狂いが生じ、衝突コースに入った」というものと、「白色矮星の伴星がベルトを不安な状態にし、衝突コースに入った」という2つの説を唱えており、これらのどちらか、あるいは両方の組み合わせによって変化が生じたものと考えているとのこと。



By NASA's Marshall Space Flight Center

今回の観測では、太陽系でいうカイパーベルトのような存在が他の恒星系にもあり、水を含んだ天体が存在していることが明らかにされています。この結果は他の恒星系の成り立ちを知る手がかりになり、さらに地球外生命の可能性を考える大きなヒントになるのかもしれません。