【モアナと伝説の海】なぜモアナを初のCG作品にした? ジョン・マスカー&ロン・クレメンツ監督インタビュー
2017年3月10日(金)公開のディズニー長編アニメーション最新作『モアナと伝説の海』。
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監督は『リトル・マーメイド』や『アラジン』など数々の名作を生み出してきたコンビ、ジョン・マスカー&ロン・クレメンツです。
ウレぴあ総研ディズニー特集では、来日したお二人にインタビューを行いました。
2000年前の物語をCGで描いた理由
最後のフルセル画となった『リトル・マーメイド』でディズニー長編アニメーションの黄金期を復活させ、『プリンセスと魔法のキス』では2Dアニメーションを復活させたジョン・マスカーとロン・クレメンツ。
輝かしい経歴を誇るコンビが5年の制作期間をかけて作った『モアナと伝説の海』は、彼らにとって初のフルCGアニメーションとなりました。
CGという最新技術をフルに使った初の作品の舞台は「2000年前の南太平洋」。
なぜ“古い”物語に最新のCGを使おうとしたのでしょうか。
ジョン・マスカー監督とロン・クレメンツ監督に直接伺いました。
ジョン・マスカー「海をCGで表現したかった」
ジョン・マスカー監督「製作初期の段階で手描きにするかCGにするか話していて、今回はCGを使うのが正しいと考えました。
今回『海』というものを描くということで、海は手描きでも表現できますが、今回自分たちが描きたかった光の反射や照明の当て方、火山のモンスターを表現するための手法としてはCGの方が良いのではないかと。
カメラの動かし方、没入できるような世界観にはCGが良いと考えました。
南太平洋の島々への視察旅行の中で、特定の照明の当たり方を描きたいと思い、CGを選びました。
『モアナと伝説の海』には手描き要素もあり、タトゥーやタパが手描きアニメーションとして使われています。
これはエリック・ゴールドバーグが担当したものです。」
表現したいもので技術を使い分けられるディズニーの強さ
制作初期の段階では、次回作が手描きかCGか決まっていませんでした。
『モアナと伝説の海』の制作期間は5年ですから、現状最後の2D作品となっている『くまのプーさん』(2011年)公開の頃の話です。
その後、作品のインスピレーションを得るための視察旅行の中でCGで描くべきだという結論に達したとのこと。
「海」をキャラクターとして表現したのも今作の大きな特徴。
自然をリアル一辺倒ではないCG“アニメーション”で表現しています。
描きたいものを実現するために、どの技術が最適かを選べる環境こそ、ディズニーが持っている素晴らしい環境です。
一方で手描き要素はマウイのタトゥー(ミニマウイ)など象徴的な部分に残っています。
エリック・ゴールドバーグが2Dスーパーバイザーを担当。
『アラジン』のジーニーなどを生み出し『ヘラクレス』や『プリンセスと魔法のキス』でも監督と組んだ現代の天才アニメーターが描きました。
CGを選択した理由について、ロン・クレメンツ監督が詳しく話してくれました。
ロン・クレメンツ「彫刻的なデザインを表現するためにCGを選んだ」
ロン・クレメンツ監督「視察旅行の時点では、CGか手書きかハイブリットか検討中でした。
サモアで、アーティストに地元の絵画などを描いている画家を紹介してほしいと頼みました。
地元の絵画からインスピレーションを得たいと考えたからです。
しかし、地元にそのような画家はいないとの答えが返ってきました。
この地域では、昔から絵画ではなく彫刻が多いのだそうです。
そして、視察旅行での情景で、島々や水平線を見たとき、どこか彫刻的だと感じました。
断面の造形や光の当たり方が彫刻に見えたのです。
このような彫刻的なデザイン、人の顔を描くために、平面的な手書きよりもCGで表現することにしました。」
自然をCGで描く
『モアナと伝説の海』では、南太平洋のいにしえの文化が多く取り込まれています。
ディズニーがアニメーションを作るときは視察旅行をし、その文化を直接体験し、見て、作品に生かしています。
今回も監督は地元の絵画を見て、アニメーションのデザインのインスピレーションを得ようとしたとのこと。
しかし、サモアの島では平面の絵画ではなく立体的な彫刻が伝統的でした。
視察旅行の中で、長老のパパ・マペに「長年私たちはあなた方の文化に飲み込まれてきたので、今回一度くらいは私たちの文化に飲み込まれてみませんか? 」と言われたそうです。
彫刻的なデザイン、自然への尊敬という南太平洋の文化に感化され、“古い”物語ながら最新のCGが選ばれました。
「海」をキャラクターにして、大きな自然を舞台に繰り広げられるアクション・アドベンチャー『モアナと伝説の海』。
最新のCGが描く美しいアニメーションを観れば、監督が言う「彫刻的な自然」の意味がわかるでしょう。
『モアナと伝説の海』
2017年3月10日(金)全国公開