<機内食メニューや搭乗手続きを事前に疑似体験、空港ラウンジでくつろぎながらフライト情報入手、機上でネットフリックス鑑賞や資料作成......。バーチャルリアリティがビジネスパーソンの旅行を変える>

1991年のインターネットの登場は、旅行業界にとっても画期的な出来事だった。では、その次は何が来るのか。2016年にはバーチャルリアリティ(VR=仮想現実)装置が市場に出回るようになった。旅行業界は再び大きな変化に直面するのか。とくに、ビジネスパーソンの出張はどのように進化するのだろう?

オンライン旅行予約サイト、エクスペディアの最近の調査によると、イギリスのミレニアル世代(1980年代から2000年ごろまでに生まれた世代)のうち約42%が、SNSにアップされた写真をもとに旅行先を決めている。

この結果からわかることはいくつかあるが、もっとも明白なのは、より真実に近い共感できる体験を求める人が増えているという事実だ。旅をしようと思ったときに、まるでレンガのように分厚い旅行パンフレットをめくらなければならない時代は終わりを告げたのだろう。

21世紀の旅行パンフレットはVRに置き換えられていくに違いない。今や人々の旅心を刺激するのは、旅行パンフレットに載っている数カ月(あるいは数年前)の写真ではなく、リアルタイムに近い画像や映像だ。それらはたいてい、SNSをはじめ、ネット上にある。こうした傾向に旅行業界が反応しないわけがない。

2016年の初めにユナイテッド航空は、ある制作スタジオと連携して3Dバーチャルツアーのシステムを作り上げた。同社が刷新したビジネスクラスでの旅を体験できるもので、オキュラスリフト(米オキュラス社が開発したVR専用のヘッドマウンドディスプレイ)を使って楽しめる。同社はこのシステムを用いて、見込み客に空港のゲートを通過してからの空の旅を、きわめてリアルに疑似体験させることができる。

この3Dバーチャルツアーで顧客は、自分が選んだ席、機内食のメニュー、搭乗ゲートの手続き、そして空港の雰囲気などがどういうものなのかを体験できる。旅行会社はVRをプロモーションに欠かせない効果的なツールとして位置づけることが可能だ。

エクペディア・ワールドワイドの上席副社長で販売部門を統括するゲイリー・モリソンは、「テクノロジーは人々の旅心と探求心を今後いっそう喚起していくだろう」と述べている。

VRがどんなものかを知るのに高額を支払う必要はない。15ドルほどの「グーグル・カードボード」のような簡易式VRゴーグル(ダンボールとレンズだけで構成され、自分で組み立てることもできるVRビューアー)で十分だ。初めて体験する人は、それだけでも驚異的な没入感を味わえる。

【参考記事】リアルなVRの時代がついに到来

トニー・ドノホー(エクスペディア社CTO) ※編集・企画:情報工場