ジュビロ磐田の名波浩監督【写真:Getty Images】

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高い位置でのボール奪取を狙う名波ジュビロ

 ニューイヤーカップ鹿児島ラウンドを1勝2分で終えたジュビロ磐田。鹿児島キャンプでは守備のオーガナイズに着手し、名波浩監督は一定の手応えを得たと口にする。グループとしての攻撃は「未整理」の状況であるが、中村俊輔、川又堅碁ら新加入選手が「個の力」を発揮し、存在感を見せつけている。(取材・文:青木務)

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「守備のオーガナイズのところをキャンプでずっとやってきた。だいぶ掘ったところまで伝えた。そこの確認もそうだし、トライするところが見たい」

 鹿児島ユナイテッドFCとのニューイヤーカップ最終戦のテーマを、名波浩監督はこのように述べた。そして、昨シーズン50失点を喫したディフェンス面の成長には、一定の手ごたえを口にする。

「この前の北九州戦では、若い(大南)拓磨や(櫻内)渚たちが後ろに余ることなく前で前でアプローチに行ってボールにチャレンジしていた。ああいうところを今回の鹿児島戦も見たい。チャレンジする奴に対してのカバーリングの中で、距離が遠くて間に合わないとか、回り込まないと対応できないとか、そうではなく最短距離で全部、行けるところに立っているかどうか」

 今シーズンも引き続き、名波ジュビロはなるべく高い位置でのボール奪取を目指す。大井健太郎、森下俊といったレギュラークラスはもちろん、その他のDF陣にもそうした意識は浸透している。

 キャンプ期間中ということで体の動きが鈍くなるのは仕方ないが、名波監督が重要視する「動けない中でも頭は整理できているか」という点でもまずまずの成果を得た。

 選手の入れ替わりがあり、新加入組の何人かは主力としての稼働が求められる。互いの特徴を理解し合うことで、連係も高めていがなければならない。

組み合わせによる特徴の「違い」

「頭の整理で言うと、組み合わせによって特徴が違ってくるということを何人か捕まえて話した。例えば健太郎と祥平だったらどっちがスピードあるかとか、駿とムサだったらどっちがより収まるかとか、例えばね。そういうことを各々の組み合わせの中で確認していってほしいなと。

 特に祥平とか俊輔、昌也、堅碁もそうだし、タケ(針谷)もそう。新加入選手の特徴という意味では、組み合わせの中でその特徴が変わってきたりもしているから。今徐々に、攻守にわたってお互いにいい呼吸が生まれつつある」

 鹿児島戦は1-1の引き分けに終わった。そして抽選の結果、磐田の連覇で鹿児島ラウンドは幕を閉じた。

 この試合の前半、サックスブルーは前からボールを奪う守備を実践。高い位置からのプレスではめ込み、最終ラインも余らずチャレンジしていく。CBの一角に入った大南拓磨は隙あらば相手ボールをつつき、コンビを組んだ高橋もすぐにカバーに行けるポジションを取っていた。攻撃はさっぱりだったが、守備では狙いを表現できていた。

 後半に入ると相手のカウンターを受け、鹿児島サポーターを沸かせてしまった。失点はセットプレーから喫したが、速攻を浴びた末に与えたCKだったことを忘れてはならない。

 攻守の切り替えが遅れると一気にゴール前まで運ばれてしまうのは、昨シーズンから見られる課題だ。新加入組もスタメンに複数名を連ねてくると思われる、25日のリーグ開幕まで整備したいポイントだ。

存在感を発揮している新加入選手たち

 攻撃に関してはそこまで手をつけていないとはいえ、選手の『個』は発揮された。

 相手ゴール前でのスリリングなシーンを多く作り出し、得点に結びつける。昨シーズン以上の結果を残すためには、守備の強化も必須だが、攻撃力アップも求められる。その意味で、新加入選手が前線で存在感を発揮していることは、ポジティブな要素だろう。

 新しいチームでプレーする選手にとって、味方の特徴を掴むことが重要だ。

「今日は少しズレてもいいから、自分の感覚でプレーした。『自分はこういう動きをするんだよ』というのを。合わない部分がほとんどだったけど、自分はこうだというのを出して、それを少しずつキャンプ中にすり合わせていこうかなと思う」

 1月24日、今シーズン初の対外試合となったJFL・ヴィアティン三重とのトレーニングマッチで、中村俊輔はアイディアとメッセージを左足に込め、新たな仲間のことを知ろうとした。

 ニューイヤーカップ初戦のロアッソ熊本戦、出場した70分間で多くのチャンスを演出した。低い位置からのゲームメイク、精度の高いキックでチームを操る。さらに、果敢にシュートを放つなど多くの見せ場を作った。

 この試合の先制点を巻き戻すと、中村俊輔のサイドチェンジが起点となっている。そのパスを受けたのが太田吉彰。“極上の出し手”との連係は、すでに高いレベルにある。

 今シーズンも主力としての働きが期待される太田は、無尽蔵のスタミナで90分働き続けることのできるアタッカー。鹿児島キャンプ中に行われた大学生との練習試合では、何度も右サイドからチャンスを作った。相手との力の差はあったにせよ、10番から繰り出されるパスに対し適切に呼応できている証左だろう。

「常に出せる位置にボールを置いているので、見ていなくても走り出すことを心がけていかないといけない。『来るかな』で走っていては絶対に遅い。キックミスは絶対にしないので、タイミングさえ合えば自分が輝けるボールを絶対に出してくれる」

まだ攻撃面はそれほど着手していない

 鹿児島入りしてから、川又堅碁は対外試合3戦連続ゴールと上々の仕上がりを見せた。

 1日の練習試合の後には「前から行けていたし、前でボールを取り返す場面も多かった」と手応えを口にした。名波浩監督率いる磐田のスタイルは、高い位置からプレスをかけてボールを奪い、素早くゴールに迫ること。川又は最前線からファーストディフェンスの役割を担った。

 攻撃面に関しても「パス&ムーブで崩すシーンがたくさんあった」と振り返る。大学生相手のゲームではあったが、コンセプトを実践した点は収穫だった。

 ストライカーではあるが、いい意味で自身の活躍にあまり固執していない。熊本戦ではヘディングシュートを叩き込んでいるが、「俺の後ろと前にディフェンスがいた中で、その間に送ってくれた。いいボールだった」と、真っ先に口にしたのはアシストの櫻内渚への称賛だ。

 クロスも間違いなく絶妙だったが、川又のボックス内でのポジショニングは秀逸。ゴールの直前にも2度、中村俊輔のキックを頭で合わせた。相手との駆け引きを制し、ディフェンスが嫌がる位置に入り込めていた。

 得点を収穫としつつも表情に満足感が微塵もない。スプリント回数の少なさなどを挙げ、
自身のパフォーマンスに納得していない様子だった。

「見た目はいかついけど繊細だし、周りに気を遣える」とはアルビレックス新潟でも共にプレーした大井健太郎の言葉だが、ピッチ内においてもチームメイトの協力があってこそ自分が活きる、ということを川又はよく理解している。

「攻撃はまだ、個々のすり合わせとアイディアしか情報的には伝えていない」と名波監督。キャンプでは守備の確認が中心で、攻撃に関してはあまり手をつけなかった。

 能力の高さを見せた選手はいた。ここからはゴールへ向かうパターンやある程度の約束事も深めたいところ。自由な発想をベースに集団としての形が肉付けされれば、相手にとってより脅威となるはずだ。

(取材・文:青木務)

text by 青木務