北朝鮮は外貨獲得の重要な手段として、5万人から10万人の労働者を海外に送り出している。一方の国際社会は、長時間労働、賃金不払いや過度なピンハネなどの人権侵害を問題視するのと同時に、その賃金が北朝鮮の核・ミサイル開発の資金となっていると見て、厳しく批判している。

国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁などの圧力を受け、マルタやオマーンなどが北朝鮮の労働者受け入れを取りやめている一方で、受け入れを続ける国もある。中国とロシアが有名だが、クウェートもその一つだ。

米ワシントンに本部を置くガルフ・ステイツ・アナリティクス(GSA)のCEOで、中東専門家のジョルジョ・カフィエロ氏は、ハフィントンポスト(米国版)に寄稿した記事で、北朝鮮とクウェートとの関係は、国際社会の制裁の下でも変わりなく続くだろうと述べている。

クウェートはペルシャ湾岸の産油国の中で、北朝鮮が大使館を置いている数少ない国のひとつだ。周辺の国々と同様に、多くの外国人労働者を受け入れており、人口の7割近くが外国人だ。その中には約3000人の北朝鮮労働者も含まれている。

クウェートは、北朝鮮労働者の受け入れを巡り国際社会からの圧力を受けているが、依然として受け入れを続けている。北朝鮮は他のアジア諸国の労働者より賃金が安く、文句も言わずに長時間働いてくれる。彼らは現地で密造酒を製造・販売して逮捕されるなど様々な問題を起こしているが、それでもなお、人口が少なく労働力を渇望するクウェートにとっては非常に魅力的なのだ。

また、この地域で労働者を働かせることは、北朝鮮にとっても都合がいい。賃金の高さはもちろんのこと、労働者の存在を外部から隠しやすいからだ。

クウェートでは、5月から9月までの平均最高気温が40度を超える。最も暑い8月には46.9度に達する。昼間に働くことができないため、工事は主に夜に行われるが、夜の闇は彼らの存在を外部から隠し、韓国人と交わることを防いでくれる。

それだけではない。労働者派遣の見返りとして、クウェート投資庁傘下のアラブ経済開発クウェート基金(KFAED)は2005年から10年間、平壌の浄水場の改修、ポンプ場の増設など北朝鮮のインフラ整備に投資している。また、北朝鮮の国土環境保護省とは、2車線の高速道路の建設で契約を結んだ。

クウェートは米国を含む国際社会から、北朝鮮労働者の受け入れ停止を含めた圧力を受けている。それに対応するためか、クウェート当局は北朝鮮の国営航空会社・高麗航空の旅客機に対し、飛行を制限する措置を取った。これに対して米国のケリー前国務長官は謝意を表している。

カフィエロ氏はトランプ政権の誕生により、米国からの「北朝鮮を切れ」との圧力はさらに強まると見ている。北朝鮮とイランとの関係を気にしているサウジアラビアからの圧力も強まることが予想される。

しかし、クウェートのいずれの情報筋も、政府は北朝鮮大使館を閉鎖するなどの措置は取らないだろうと見ている。クウェートにとって、北朝鮮は単なる手頃な労働力の供給源に過ぎないが、それでも関係の維持が国益にかなうと見ているようだ。

一方、同じ湾岸諸国のオマーンは、自国にいた北朝鮮労働者をすべて帰国させている。カフィエロ氏はこの件には言及していないが、オマーンは全人口の56.2%(2014年)を自国民が占めており、クウェート(自国民は2013年で33%)ほど外国人労働者依存度が高くないことと関係していると思われる。