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●契約数は20万超?
KDDI傘下のUQコミュニケーションズがMVNOとして展開する通信サービス「UQ mobile」。その契約数はまだ30万に満たず、既に100万近い契約数を獲得するMVNO大手と比べ多いとは言い難い規模なのだが、他のMVNOは"脅威"ととらえているようだ。なぜUQ mobileが、そこまで多くのMVNOに警戒されているのだろうか。

○注目度は急上昇だが契約数はまだ多くない

ここ最近、女優の深田恭子さんや多部未華子さんらが出演するテレビCMで注目度が高まっている「UQ mobile」。KDDI傘下のUQコミュニケーションズが、KDDI(au)のMVNOとなって提供するスマートフォン向けの通信サービスであり、昨年から今年にかけて急速に存在感を高めているMVNOの1つだ。

その理由はテレビCMだけではない。auのネットワークを利用するため対応するSIMフリースマートフォンがほとんど存在しないという圧倒的不利な状況下にありながら、音声通話を重視した「ぴったりプラン」を他のMVNOに先駆けて展開したり、型落ちながらも「iPhone 5s」を正規に取り扱ったりするなど、他のMVNOとは一線を画す施策を次々と打ち出すことで急速に人気が高まり、注目されるようになったのだ。

そして昨年には、大きな弱点だったSIMフリースマートフォンのラインアップを大幅に増強。今年に入ってからも「DIGNO W」「DIGNO Phone」などUQ mobileオリジナルのスマートフォンを拡充したり、大手キャリア同様、学生向けの割引キャンペーン「UQ学割」を打ち出したりするなどして、低価格ニーズの拡大に合わせる形で攻めの姿勢をとり続けている。

UQ mobileに勢いがあるのは確かだが、先行する他のMVNOと比べると人気が出た時期が遅く、実は契約数はそれほど多いわけではない。KDDIは2月2日に決算説明会を実施しており、その場で同社の連結子会社が提供するMVNOの契約数が、昨年の12月末時点で35.7万契約であることを公表している。

昨年末時点でKDDIの連結子会社が展開しているMVNOは、大きく分けてUQコミュニケーションズや、沖縄地域のみでサービスを提供している「UQモバイル沖縄」が展開する「UQ mobile」、そしてケーブルテレビ利用者に向けてMVNOとしてサービスを提供している、ジュピターテレコムの「J:COM MOBILE」の2つに分かれており、その合計数が35.7万契約と見られる。ただJ:COM MOBILEは、今年の2月1日に契約数が10万を超えたと発表していることから、UQ mobileの契約数は昨年末時点で20〜25万程度ではないかと推測される。

●UQ mobileの規模感は?
○UQ mobile躍進の要因はKDDIの危機感

20〜25万というUQ mobileの契約数が、MVNO市場の中で現在どのようなポジションにあるのかは、他のMVNOと比較すると見えてくる。例えばMVNO大手の一角を占めると言われるインターネットイニシアティブ(IIJ)の場合、2月8日に発表した決算の中で、自社が直接提供する個人向け通信サービス「IIJmioモバイル」の回線数が91.2万、MVNEとして他社に提供している回線数は50.1万で、法人向けサービスの契約数と合わせて約171万回線に達したとしている。

それ以外のMVNOを見ても、ケイ・オプティコムの「mineo」は1月に50万契約を突破しているほか、ソニーネットワークコミュニケーションズの「nuroモバイル」は、1月31日に38万契約を獲得していることを明らかにしている(ただし通信量500MBまで料金がかからない「0 SIM」の契約数は除く)。また、KDDIが今年買収を完了したビッグローブも、買収を発表した昨年末時点で、契約数は約40万とされていた。

他にも契約数は公開していないが、NTTコミュニケーションズの「OCNモバイル」や楽天の「楽天モバイル」などがMVNO大手として知られており、いずれもUQ mobileより多くの契約数を獲得しているのは明らかだ。それゆえ現状、UQ mobileの市場における存在感は決して高いとは言えない状況にあるのだが、多くのMVNOはUQ mobileを“脅威”と見ており、強い警戒心を抱いている。その理由はMVNOでありながら、ソフトバンクの低価格ブランド「ワイモバイルブランド」同様、大手キャリアであるKDDIのサブブランドに近い存在となっていることだ。

UQ mobileは元々KDDIの子会社が2015年に開始したサービスだが、この時点ではKDDIも、auユーザー流出の恐れがあることから低価格ユーザー層の開拓には消極的で、UQ mobileのサービス内容もMVNOとしては平凡なものであったことから、存在感を示すことができなかった。だがその後急速に低価格市場が拡大し、NTTドコモの回線を用いたMVNOや、ワイモバイルにauの顧客が奪われるようになってきたことから、KDDIも方針を大きく転換。子会社をUQコミュニケーションズと合併することで、UQ mobileを軸に低価格ユーザーの獲得に力を入れるようになり、iPhone 5sの販売や量販店でのauスタッフとの販売協力など、KDDIがテコ入れを図ることで急速に契約が伸びてきたのである。

●ネットワーク面で優遇も
○ネットワーク面での優遇はどこまで許される?

企業体力があり、大手キャリアの一角を占めるKDDIがテコ入れを図ったことで、UQ mobileは端末調達やプロモーション、販売面などで優位になったことから、他のMVNOが脅威を抱くのは確かだ。しかしながらMVNOにとって、そうした部分より一層UQ mobileを警戒しているのは、同じMVNOという立場でありながら、ネットワーク面でKDDIがUQ mobileを優遇している部分があることだ。

そのことを象徴しているのが「おしゃべりプラン」である。UQ mobileは2月22日より、5分間の通話定額が可能な「おしゃべりプラン」を提供するとしているが、このプランは通常の音声通話の仕組みを用いて5分間の通話定額を実現している。

実は日本のMVNOは、契約上音声通話に関して自由なサービス設計をするのが難しい。それゆえIP電話やプレフィックスコールなど、特殊な仕組みを用いることで通話定額を実現していることから、定額通話を利用するとVoLTEによる高音質での通話ができないという弱点がある。だがUQ mobileはKDDIの協力もあってか、そうした特殊な仕組みを使うことなく通話定額を実現しており、VoLTEの高音質通話で定額通話ができる。

また、auのネットワークを用いたMVNOのSIM(mineoの「Aプラン」やIIJmioモバイルの「タイプA」など)では通常、iPhone 6s/6s Plus以降のSIMフリー版iOS端末で利用すると、テザリングが利用できないという問題を抱えている。だがUQ mobileのSIMは、同じauのネットワークを用いてるにもかかわらず、これらの端末でのテザリングが可能だという。こうした点も、UQ mobileとそれ以外のMVNOとで、KDDI側の対応に差が見られるポイントといえるだろう。

UQ mobileは低価格サービスで先行するワイモバイルに追いつくことを明確な目標としており、打ち出す施策もワイモバイルの施策を後追いするものが多い。それゆえKDDIも、ライバルキャリアのサブブランドであるワイモバイルに劣らない環境を作り上げるべく、UQ mobileに対しネットワーク面でも改良を図っていると考えられる。だがそうした改良策が、他のMVNOに向けては反映されていないことから、対MVNOという視点で見た場合、UQ mobileへの優遇になってしまっていると考えられそうだ。

だがUQ mobileはサブブランドに限りなく近い存在でありながらも、ワイモバイルとは異なり別会社で運営されているMVNOであることに変わりはない。それゆえUQ mobile、ひいてはKDDI傘下のMVNOの優遇を続けていると、キャリアと特定のMVNOが密接につながることを快く思わない総務省が、何らかの措置を打ち出してくる可能性が十分考えられる。少なくともネットワークに関しては、他社系列のMVNOに対しても公平な環境を提供することが求められるところだ。

(佐野正弘)