決して景気の良くないイタリアにおいて、息子のためにサッカーの試合のチケットを手に入れるのは、父親にとって簡単なことではない。それでもチケットを購入し、息子のヒーローを見にいこうとしたら、選手が出場停止だった! そんな父親の落胆は、計り知れないものだっただろう。

だが、父親はあきらめなかった。なんとか息子を喜ばせたい、その一心で、彼はある人物にメッセージを送った。インテルFWマウロ・イカルディの妻であり、代理人でもあるワンダ・ナラだ。

ワンダ・ナラは12日、同日行われたエンポリ戦を観戦予定だったある父親からのメッセージをツイッターで紹介した。息子が大好きというイカルディを見にいくつもりだったが、出場停止処分を科された同選手がプレーできなくなり、なんとか助けてほしいというのである。

「親愛なるワンダへ。優れた母であり、子どもたちのことを気にかけているあなたに、ひとつお願いをしたい。あなたの元にたくさんのリクエストがあることは分かっているのですが」

「決して簡単ではない苦労をして、私はエンポリ戦のチケットを買いました。あなたのマウロを直接見たいという息子の夢をかなえるためです。残念ながら、運命はそれを許してくれなかった。でも、何とかして息子の夢をかなえることができないか、あなたにお願いしたいのです。マウロのことだけをヒーローと思っている7歳の子どもの夢を」

「息子は四六時中、マウロのことを話しています。このまま直接彼のことを見ることができず、息子の夢をかなえることができないのは、心から苦しいのです。ワンダ、助けてください。心から感謝いたします。面倒をおかけして申し訳ありません。夢を信じる父親より」

父親の想いは、ワンダ・ナラとイカルディの心を動かした。それも、ある意味、試合でプレーするイカルディを見る以上の方法で、父親の願いがかなえられたのだ。なんと、ワンダ・ナラは夫の大ファンという息子を自分たちのVIP席に招待し、イカルディ本人と一緒に観戦させたのである。


親子にとって、一生に一度とも言えるほどの思い出になったに違いない。「子どもの夢をかなえることも、プロアスリートの務め」。イカルディとワンダ・ナラは、そんな想いだったのではなかろうか。