安倍政権が「最大のチャレンジ」と位置付ける「働き方改革」が動き出した。同一労働・同一賃金と長時間労働の是正が目玉で、「ノー残業デー」から「プライムフライデー」まで、働き方改革は待ったなしだ。写真は記者会見する加藤勝信・働き方改革担当相(2月6日)

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安倍政権が「最大のチャレンジ」と位置付ける「働き方改革」が動き出した。長年の懸案である同一労働・同一賃金と長時間労働の是正が目玉で、成長戦略にも資すると期待されている。

政府の「働き方改革実現会議」が昨年12月に、正社員と非正規社員の待遇差を是正する同一労働同一賃金のガイドライン案を示した。厚生労働省の有識者検討会は2月上旬、ガイドライン案に沿った法改正について議論を始めた。労働契約、パートタイム労働、派遣労働者の3法がその対象となる。検討会では、説明義務を課すことについて「労働者の納得性や人事制度の透明性が高まる」などの賛成論が出た一方、「日本と欧州の賃金制度の違いを考慮する必要がある」とするといった慎重論も出た。

働き方改革実現会議は3月末に実行計画を取りまとめるが、加藤勝信・働き方改革担当相が日本記者クラブでこのほど会見し、「同一労働同一賃金と長時間労働改善など働き方改革で生産性と賃上げの向上につなげたい」と表明。昨年12月にまとめた政府のガイドライン案には盛り込まなかった退職手当についても、「退職手当なども裁判で争えるよう、それを保証するような法制度は考えていかなくてはいけない」と指摘した。

労働者は自分の賃金は分かっても、まわりの人の賃金や処遇は分からない。待遇差に疑問を持ったとき、どういう開きがあるのかないのか、求めに応じて会社側に応える義務がなければガイドラインは有名無実となる。

加藤担当相は「働く側が待遇差の是正を求めて裁判で争おうとしても、正社員がどうなっているか分からなければ、争うことができなくなる。説明責任は非常に大事だと思う」と述べて、企業側に説明責任を求めていく考えを明確にした。

もう一つの大きな課題は全労働者の4割に上る非正規雇用。賃金は正規の6割足らずで、欧州各国と比べて待遇の格差開きが大きすぎる。大きな格差は働く意欲をそぎ、生産性の低下につながる。アベノミクスが目指す景気の好循環に不可欠な個人消費の伸びも阻害する。

働き方改革のうち、長時間労働是正も喫緊の課題。電通社員の過労自殺問題などを背景に世論から注目され、官民の議論が高まっている。

民間での働き方改革の取り組みも加速している。大手電機のパナソニックが勤務時間を原則午後8時までに改めた。フレックスタイム制度や休暇を時間単位で取得できる企業は中企業にも広がる。官庁でも進み、東京都では生活と仕事の両立に優れた企業の認定制度がある。残業時間は、民間は全国の月平均が16時間(2015年、30人以上の事業所)、都職員は13時間(15年度)となっている。千葉県は毎週水曜日に「ノー残業デー」を実施中で、午後7時には全館で一斉消灯する。定時退庁の達成率は9割近いという。

多くの自治体は職員の生活と仕事の両立に知恵を絞っている。ノー残業デーの徹底や庁舎の一斉消灯などで長時間労働を減らすのに加え、柔軟な勤務時間のあり方も検討する。「働き方改革」への関心が高まる中、自治体としても工夫の余地は大きい。効率的な働き方のモデルを探っている。

2月24日から毎月末金曜日に午後3時以降仕事を切り上げる「プライムフライデー」もスタートする。経済産業省と経団連や小売りなどの業界団体が個人消費を喚起するため呼びかけたもので、長時間労働の是正など働き方改革にもつながると期待されている。(八牧浩行)