2017年シーズン10大注目ポイント@後編

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(8)F1へのラストステップ。日本人ドライバーの活躍はいかに?

 2017年もF1では日本人ドライバー不在が続く。だが、その足音は着実に聞こえてきている。

 昨年ヨーロッパで戦ってきた松下信治(GP2/まつした・のぶはる)、福住仁嶺(GP3/ふくずみ・にれい)に加えて、今年は牧野任祐(まきの・ただすけ)がユーロF3に参戦する。


GP2からF1へステップアップを目指す松下信治 2015年に日本のFIA-F4で頭角を現した牧野は、昨年は全日本F3に参戦するかたわら、スーパーGTのGT500クラスにスポット参戦していきなり2位表彰台を獲得。速さと順応性を見せ、2017年は昨年ランキング2位のハイテックGPからユーロF3に挑む。ここでF1昇格に必要なスーパーライセンスの権利を獲得しようというわけだ。具体的に言えば、ランキング2位以内に入ればF1昇格が可能になる。

 松下もGP2で選手権2位以内に入れば、F1昇格要件を満たす。参戦2年目の昨年はタイトル争いを宣言したものの、チーム体制の変化とプレッシャーに負けてスランプに陥ってしまった。しかし、終盤戦には速さと自信を取り戻し、初年度のようなヨーロッパ勢に負けない押しの強い走りが蘇ってきた。その強さを貫ければ、タイトル争いは十分に可能だろう。

「F1に行くとしたら、2017年は本当に最大にして最後のチャンスだと思っています。日本人らしからぬところを見せて、今までの日本人ドライバーとは違うっていうところを見せつけたいと思います」(松下)

 福住はGP3参戦となれば、タイトルを獲ったとしてもF1昇格基準は満たすことができない。しかし、こちらも昨年終盤には2ラウンド続けて表彰台に立ち、上位争いの常連となりつつある。F1が開催されるヨーロッパのサーキットでこうした安定した強さを身につけていくことは、今後のために極めて重要だろう。

 ホンダも日本人F1ドライバー復活のため、全面的に協力を惜しまない姿勢を見せている。彼ら3名の活動はホンダの若手育成プログラムである「ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)」によるもので、F1でもパワーユニットのカスタマー供給を通じてシート獲得チャンスの創出に前向きだ。

 日本人F1ドライバー復活前夜ともいえる2017年は、F1への”最後の一歩”を踏み出そうとしている彼らのGP2やユーロF3での活躍からも目が離せない。

(9)最後かもしれないシンガポール&マレーシアを見逃すな!

 F1カレンダーに異変が生じ始めている。2017年は全20戦で開催されるが、集客数が伸び悩んでいるマレーシアGPを皮切りに、人気のシンガポールGPや、伝統のイギリスGPまでもがF1の開催終了を訴え始めているのだ。

 マレーシアとシンガポールはいずれも政府が自国PRの一環として始めたもので、シンガポールGPは市街地の中心部で行なうナイトレースという特殊さと、大物アーティストによるコンサートなどで高い人気を誇っている。

 しかしシンガポール政府は、観光PRはすでに十分に果たせたと考えているようだ。市街中心部にグランプリ開催のためのコンクリートウォールや人工照明装置などの準備を何ヵ月もかけて整えるため、周辺のショッピングモールやホテルの営業に影響を及ぼすことや、莫大な開催権料を考慮すれば、開催を終了すべきとの声が挙がっている。

 一方でマレーシアGPは、地元の物価からすればチケット料金が高すぎるため、売り上げが伸び悩んでいるという。自国PRという観点では2輪のMotoGPのほうが安価で効果的なPRができると考え、マレーシア政府はそちらへシフトしつつあると言われている。

 また、イギリスGPは毎年12万人もの大観衆で埋め尽くされる大人気イベントだが、開催地シルバーストンの経費的負担は大きく、こちらも開催断念を検討しているという。

 F1を運営するFOM(フォーミュラ・ワン・マネージメント)としては、チケットの売り上げに関係なく莫大な開催権料を支払うことのできる開催地へと向かい、収益を上げてきた。中東、ロシア、アゼルバイジャンと開催地を増やしてきたが、そのビジネスモデルもいよいよ限界を迎えつつあるようだ。

 日本のファンに海外観戦先として人気の高いシンガポールやマレーシアも、観戦に行くなら今年がラストチャンスになる可能性もある。

(10)「F1界のドン」が退陣。その先にあるのは繁栄か混乱か?

 2017年1月17日、アメリカの大手メディア関連企業「リバティメディア」の株主総会で、F1買収が正式に決まった。詳しく言えば、F1の興行権を持つ「フォーミュラ・ワン・グループ」の株式を100%取得し、長らくF1を率いてきた「F1界のドン」バーニー・エクレストンは実質的な権限のない名誉会長に退くこととなった。

 彼に代わる後継者など存在し得ないと言われ続けたエクレストンが引退し、2017年からはロス・ブラウンが運営面の指揮を執ることになった。現FIA会長ジャン・トッドとともに2000年代のフェラーリ黄金期を築いた人物として知られる。ただし、経営のトップはリバティメディアのチェイス・キャリーが握る。こちらはモータースポーツではなく、ディレクTVや21世フォックスなどアメリカのエンターテインメント業界に身を置いてきた人物だ。

 エクレストンの引退で、F1新時代が始まる。それも、アメリカ企業の主導で。

 F1は間違いなく変わるだろう。すでにレギュレーションの変更でレースそのものの改革は進められているが、レース週末全体を通してのショー的要素の拡大や、テレビ放送やインターネットメディアとの親和性、一般層に向けたPRという点でも。

 86歳のエクレストンがトップに立ち続けてきたことからもわかるように、F1のやり方はよくも悪くも保守的だった。テレビ放映権収入に固執するがあまり、インターネットを介した露出には消極的で規制も多く、それがF1ファン層の拡大を妨げてしまっていた。こうした”古さ”は解消され、現代の時流に合わせたショーアップが果たされていくだろう。

 しかし、エクレストンが”村の長老”として果たしていた役割は大きく、彼が間に立って取り持つことで解決してきた事案は多々あった。チームの誕生や存続に関しても、彼が個人的に支援をしたり、周囲に支援を要請することで成り立ってきた。

 多少の利害の不一致はあったとしても、1970年代にF1チームを取りまとめ、テレビ放映権収入を軸にF1をここまで大きくしたエクレストンに対しては、F1界の誰もが感謝と敬意を持っていた。だからこそ、エクレストンの存在なしにF1は回らない、と言われ続けたのだ。

「ポスト・エクレストン」の世界が、大革命となるのか、小さな改革にとどまるのかはわからない。それがさらなる繁栄へと続くのか、混迷へとつながるのかもわからない。ただひとつ言えるのは、変貌を遂げるであろうポスト・エクレストンのF1新時代から目を離してはいけないということだ。

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