WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 65万5434人。

 これは、松山英樹が大会連覇を達成したウェイスト・マネジメント・フェニックス・オープンの1週間の入場者数だ。PGAツアーではもちろん年間を通じて最大の数であり、しかも今年は昨年を3万7000人あまり上回って、過去最高の観客数を記録した。

「60万人も集まるスポーツイベントなんて他にない。なかなかこういうたくさんのギャラリーの中でプレーすることはないから、ほんとに楽しく、集中してプレーができた」

 優勝会見で、そう松山は話した。


多くの声援に応えて、フェニックス・オープン連覇を遂げた松山英樹 今年、松山にかけられた声援は本当に多かった。

「ヒデキ! ゴー!」
「マツヤマ〜!」

 練習日から、松山が行く先々でそんな声が飛んできた。

 昨年は、リッキー・ファウラーとの4ホールに及ぶプレーオフの末に勝利を得た。その印象が相当に強かったのだろう。

 そのうえ、昨年の10月以降、日本ツアーなども合わせて世界で4勝を挙げている絶好調ぶり。世界ランキングは5位まで上昇し、今季のフェデックスカップのポイントでは序盤からトップを快走している。そんな松山は、ゴルフファンなら世界中の誰もが知っている――会場の雰囲気からは、まさにそこまでの成長を肌で感じることができた。

 大会3日目。4日間の中ではこの日の入場者が最も多く、20万人を超えるファンがコンコースを埋め尽くしていた。スタンドが四方を囲んでいる名物の16番パー3では、1万6000人以上のギャラリーが集結。多くの観客はアルコールも手伝って大騒ぎをしているから、そこはまるでNFLのスタジアムやNBAのアリーナのようなムードを漂わせていた。

 そんな中、松山がPWで放ったボールは、ピン手前1mほどに落ちてカップをかすめる。あわやホールインワンかというスーパーショットに、ファンは熱狂して地鳴りのような歓声がコースに響いた。

「いいショットが打ててよかった」

 松山はこの日、感触のよくなかったショットに不満を漏らしていたが、この1打には満足したようだった。

 首位と4打差で迎えた最終日。この日はNFLの優勝決定戦、スーパーボウルが開催されるため、ギャラリーは大幅に減って5万8000人だった。それでも、詰め掛けたのは本当にゴルフが好きなファンたちだ。アメリカ人のウェブ・シンプソンとの4ホールに及ぶプレーオフでは「USAコール」も起こったが、松山にもそれに負けないほどの熱い声援が送られていた。

「昨年(のプレーオフ)は、99%がリッキーへの声援だった。でも今年は、僕の声援も10%くらいに増えていたかな。来年はもっと増えたらいいなぁ……」

 最後は、3mのクラッチパットを決めて見事に勝利を飾った松山は、うれしそうにそう語った。

 一夜明けて、早朝のフェニックス空港は、賑やかなバケーションを過ごした人々の、家路に向かう列でとても混雑していた。レンタカーを返却し、エアポートのターミナルに向かうシャトルの中で、ゴルフバッグを手にした数名の若者たちが、前日に観戦したプレーオフの様子を大声で話していた。

「あの1ホール目の、ヒデキのドライバーショットを見たか? あれは、ウェブよりも70ヤードは先に飛んでいたぞ」

「いや、それよりもレギュレーションの最後の18番、ヒデキのあのバーディーパット、あれは絶対に入ったと思ったな」

 興奮気味に話す声がシャトル内で響く。

 その会話が耳に入ったのか、近くにいた年配の男性が「いやいや、私もそこは見ていたよ。あれは、すごかったな。マツヤマのスイングはいいな」などと言って、若者たちの話に加わった。

 ターミナルまでの数分間、シャトルの中はすっかりゴルフ談義に花が咲いていた。折しもその前夜、ニューイングランド・ペイトリオッツがスーパーボウル史上最高の逆転劇でアトランタ・ファルコンズを下したのだが、彼らにとっては松山のプレーのほうがずっと興奮するものだったのだ。

 そんな会話を真横で聞いていた私は、「そうだよね。そうだよね」と心の中で呟いて、松山と同じ日本人であることが少し誇らしくもあった。

 松山が望む、自らのファンは間違いなく増えている。シャトル内でそのことを改めて確信した。大会3連覇に挑む来年、松山にはどんな声援が送られるのか、今からとても楽しみになった。

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