Gitベースでソースコードを管理するGitHubは、ソースコードが公開されていることから企業での利用が難しいという面があります。このため、自前のサーバー環境でGitを使える「GitLab」の企業での利用が拡大しています。急成長中のGitLabですが、社員全員がバラバラのリモート環境で働いているという異色のワークスタイルを採用していながらも、規模を拡大しており注目されています。

急成長中のGitLabのシド・サイブランディCEOが、GitLabを支援したYコンビネータのインタビューに応じて、GitLabでの働き方や企業文化や独自のツールなどについて語っています。

Gitlab's Secret to Managing 160 Employees in 160 Locations - YouTube

シド・サイブランディCEOは、「GitLabがしていること、重要である理由は何か」について聞かれると、「GitLabはオープンソースのソフトウェア開発ツールで、人々をソフトウェア開発でコラボレートさせるもの。ソフト開発のプロセスをより簡単に、より速く、より効率的にするツールです」と答えています。効率的であることが重要なツールのGitLabですが、その後の話からはリモートワークのあり方も効率的であることが大きな理由であることがわかります。

◆GitLabの始まり



GitLabは、GitLabの共同創業者で最高技術責任者を務めるディミトリー・ザポロゼツ氏が、2011年ころから自分のソフトウェア開発に便利なツールとして開発していたのが始まりだとのこと。GitLabの仕組みが優れていることを知ったシド氏はディミトリー氏に合流して、Hacker NewsなどでGitLabを紹介していましたが、オープンソースソフトという性格上、ビジネスにする(お金を稼ぐ)のは難しいと感じたとのこと。

そこで、Yコンビネータのプログラムに参加したGitLabチームでしたが、Yコンビネータ卒業時点での従業員は9人だったとのこと。しかし、それから2年経った今では160人まで従業員が増えているそうです。驚くべきことに160人は全員リモートワークで働いているとのこと。「今までのところ、同じ場所で一緒に働いている人はいませんね」とシドCEOは話しており、サンフランシスコの本部について聞かれると、「(自分)一人です」と答えています。

なお、サンフランシスコ本部のオフィスは、猫が素通りするようなのんびりした環境の模様。



◆リモートワーク



100人以上の従業員が完全なリモート環境で働くという、普通では考えられないワークスタイルを創業当初から考えていたかを聞かれたシドCEOは、「組織は平凡だが、製品は特別であること」を目指していたそうで、革新的な働き方は想定していなかったとのこと。

リモートになったきっかけは、起業した当時、ディミトリーCTOがウクライナにいてシドCEOがオランダにいる状態だったこと。ソフトウェアを使って簡単に共同作業できたこともあり、シドCEOは自宅で仕事をしていたそうです。Yコンビネータを卒業した9人は、それぞれが「営業職」のようにちりぢりになって働くのがごく自然な形だったそうで、「私はオフィスに集結しようとは言いませんでした。『結果』を気にすることはあっても、『どこで仕事をするか』は気にしていなかったのです」とシドCEOは述べています。なお、160人の従業員のほとんどが自宅で仕事をしているそうです。

◆ハンドブック



160人が世界各国でバラバラに働くGitLabでは「Handbook(ハンドブック)」と呼ばれる社員全員が閲覧・編集できるWikiのようなツールがあります。みなで共有するハンドブックは、「私たちが得たプロセスのすべてを書き残しています」とシドCEOが述べるとおり、どんなささいなことでも追記していくという運用が採られており、今では500ページ以上になっているとのこと。

ハンドブックにすべてのことを記録する理由について聞かれたシドCEOは、「説明するのがイヤだから書き残していました。同じことを2度説明する必要のないようなとても頭の良い人を採用していますが、同時期に採用される人がいると、どうしても説明を繰り返さないといけないことがあります。だから書き残すのです」と述べています。



ハンドブックには説明の重複を避けるだけでなく、誰かのイヤな体験を別の誰かが繰り返すことのないように、経験を全員で共有する役割もあるとのこと。GitLabで働く全員に、「次の人」のためにハンドブックを編集する義務があるそうで、「GitLabで働く全員が責任を持っています。すべての人が使命を持つようにするのが私の使命です」とシドCEOは述べています。

そして、ハンドブックを後から振り返ってみると、他の人のコメントなどから学ぶことは多く、シドCEOにとってリーダーシップを学べる大切なツールになっているそうです。

◆1日の労働スタイル



160人が37カ国に散らばって働いているGitLabでは、ミーティングはすべてビデオ会議で行われます。シドCEOによると、複雑になりすぎるのを避けるため、ミーティングはできる限り小さなサイズを保つように心がけており、10人程度でビデオ会議が行われることが多いとのこと。もちろん1対1でチャットをすることもあるそうです。

「例えばロシアから23時にコールがかかる、というようなことはない?」と聞かれたシドCEOは、他の人とオーバーラップする時間を確保することで夜遅くに緊急の電話がかかることはそれほどない、と答えています。また、同時間の拘束を避けるためにGoogle Docsなどのツールを活用しているそうで、あくまで17時くらいまでで仕事を終えられる「普通の働き方」になっているとのこと。

◆苦労したこと



「全員がリモートで働くというビジネススタイルで最も大変なことは?」という問いに対してシドCEOは「資金集め」と即答しています。リモートで働くことで、組織の規模が大きくなる上で弊害が出てこないかを懸念する投資家は多かったとのこと。まったく新しい働き方であり投資家からの資金集めに苦労したそうですが、幸運にも「よし。うまくいくかどうか見守ろう」と考えてくれた投資家を得ることに成功したとシドCEOは述べています。

◆適性



リモートで働くことで孤独を感じないか聞かれたシドCEOは、ハンドブックやビデオ会議などがあるから孤独を感じることはないと答えています。しかし、「リモートで働くのに必要な資質」については、「モチベーションを保てること」を挙げています。自分を監視する人がいない状況で働くことは、注意してくれる人がいないだけでなく、自らの欠点を自問して反省しなければならないということで、とても難しいことだとのこと。

社員の採用では自分だけで高いモチベーションを保てるかという要素でスクリーニングしているかと問われると、「結果的には指向性の高い人が残ります」とシドCEOは答えています。