わずか250万円の馬がクラシックの主役に。ブレスジャーニーの雑草魂
2017年クラシック候補たち
第2回:ブレスジャーニー
競走馬を取引する際の”相場”は、我々一般人には考えられないほど高額だ。生まれたばかりの仔馬に数千万円の価格がつくことは珍しくなく、良血馬にいたっては億を超えて取引される。
逆に言えば、数百万円で取引された馬は、サラブレッドとしては”低評価”と言わざるを得ない。だが、今年の3歳クラシック戦線では、そんな生い立ちを持つ1頭が主力の存在となりつつある。
美浦トレセン(茨城県)の本間忍厩舎に所属するブレスジャーニー(牡3歳/父バトルプラン)である。
重賞2勝のブレスジャーニー。クラシックで栄冠獲得なるか 1歳でセリに出された同馬は、わずか250万円(税抜)の価格で取引された。父は日本で目立った活躍馬を出しておらず、ブレスジャーニーの兄姉も芳しい成績を残していなかったからだろう。
さらに、出世レースとされるGIII東京スポーツ杯2歳S(2016年11月19日/東京・芝1800m)においても、1億円を超える良血馬を尻目に、上がり33秒7の末脚を駆使して勝利。一躍、世代のトップクラスとして評価されるようになった。
今年の3歳牡馬において、重賞を2勝しているのは、ブレスジャーニーしかいない。確実にクラシックを狙える位置にいるのだ。
セリでの価格は安かったが、デビューにいたる過程ではスタッフの評価もうなぎ登りだったという。関東競馬専門紙のトラックマンが語る。
「デビュー前は、格上の馬と一緒に調教をしても、遅れたことがないくらいの動きだったようですね。とにかく走り出すとマジメで、他馬と並ぶと負けん気を見せるのも魅力。東スポ杯2歳Sでも、他馬と合わせてからもうひと伸びしましたから。スタッフはその点をかなり評価しているようです」
ふたつ目の重賞タイトルを獲ったあとは、2歳GIには見向きもせず、今春のクラシックを見据えて放牧に入った。そして1月下旬には厩舎に戻り、3月のトライアルを使ってGI皐月賞(4月16日/中山・芝2000m)へ向かう予定となっている。
まさに万全の過程で春のクラシックへ向かいそうな気配だが、実はここにきて不安が先立つ状況になっているという。先述のトラックマンが詳しい話を伝える。
「1月下旬に戻ってきてから、実はまだ満足な調教ができてないんですよね。もともと右後脚のトモ(腰から脚の付け根にあたる)に弱さのある馬なんですが、それも良化してこないようで……。今後、どこまで調整が進むか、注視すべきでしょう」
ブレスジャーニーは、これまで左回りの東京競馬場しか経験していない。それは、弱点である右トモに疲れがたまりやすい、右回りのレースを避けてきたからだった。そのような体の弱さをなくしたいところだったが、むしろここにきてその不安が広がりつつあるのかもしれない。
とはいえ、わずか250万円で取引された馬が、高額馬を蹴散らして世代の頂点に立つ姿をぜひとも見てみたい。さまざまな困難を打ち破ってきたブレスジャーニーなら、きっと底力を見せるはずだ。春のクラシックで、”雑草魂”が輝くことを期待したい。
■競馬 記事一覧>>