「Thinkstock」より

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 従来の花粉症への対処といえば、花粉が飛散する前から薬を飲み始めることで「予防的」にヒスタミンの発生を抑える薬、または発生したヒスタミンの働きを抑える、直接炎症を抑えるなど「対症的に」症状を緩和する薬のいずれかでした。

 それに対して、「根本的に」花粉症を治癒に導く方法として「減感作療法」が行われています。以前は注射による方法でしたが、2014年から家で自分もできる「舌下減感作療法」も保険適用されるようになりました。また、最近は「食ベて治す治療法」として「スギ花粉症緩和米」の開発も進められています。

 今回は、そんな花粉症薬、治療法のメリット・デメリットなどを解説します。

【抗アレルギー薬】:予防的効果・対症的効果

 病院で処方される花粉症の薬の多くは、抗アレルギー薬といわれるものです。抗アレルギー薬は、ヒスタミンの発生と放出を抑えることにより症状を軽くし、また症状が出始めるのを遅らせる効果があります。出てしまったヒスタミンを抑え込むのではなく、ヒスタミンの発生そのものを抑えるので予防的効果もあるとされています。

 したがって、本来なら花粉の飛び始める2週間くらい前から飲み始め、シーズン中は切らさず飲み続けるようにするものですが、症状が出てから病院に駆け込む方も多いです。抗アレルギー薬には非常に多くの種類があり、効き目や副作用(眠気など)は個人差がありますが、副作用は比較的少ない薬が大半といわれています。

 なお、抗アレルギー薬には抗ヒスタミン効果のあるものとないものがありますが、現在はほとんどが抗ヒスタミン効果のあるタイプです。予防効果と即効性の抗ヒスタミン効果を併せ持つ抗アレルギー薬は「第二世代抗ヒスタミン薬」と呼ばれています。

 代表的なものとしては、アレグラ、タリオン、アレロック、アレジオン、クラリチン、ジルテック、エバステルなどがあります。

 比較的新しい抗アレルギー薬として10年にザイザル、14年にディレグラが発売されました。ディレグラは、アレグラにプソイドエフェドリンという鼻づまりを改善する成分を追加した配合錠です。

 16年11月には、新たにデザレックスとビラノアが発売されました。抗ヒスタミン薬単剤としては、10年に発売されたザイザル以来、6年ぶりの新薬です。デザレックスもビラノアも効果発現の早さがウリです。

 花粉症薬の副作用として一番気になるのが「眠気」です。2つの新薬、デザレックスとビラノアは、添付文書に「眠気を催すことがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に注意すること」という注意書きがありません。主な抗ヒスタミン薬でこの注意書きがないのは、デザレックス、ビラノアのほかに、アレグラ、クラリチン、ディレグラだけです。

 抗アレルギー薬は副作用が出にくい比較的安全な薬といわれていますが、薬価が高いものが多いことが難点です。新薬は薬価が高く設定されることが多いのですが、昨年発売されたデザレックスとビラノアは、今までの抗アレルギー薬よりは薬価が低く設定されています。

 ちなみに、薬価は一日量に換算してアレグラ60mg×1日2回で129.8円、アレジオン20mg×1日1回で120.3円、ジルテック10mg×1日1回92.2円、比較的新しいザイザル5mgが1日1回で96.4円、ディレグラが1日2回で249.2円、新薬のデザレックス5mg×1日1回69.4円、ビラノア20mg×1日1回79.7円です(いずれも17年2月現在の薬価)。

 価格を抑えるためには、ジェネリックにすることも選択肢のひとつです。アレジオンやアレグラ、アレロック、ジルテック、エバステルなどはジェネリックも出ています。

 また、アレグラ、アレジオン、ジルテック、エバステル等は、薬局で処方箋なしで買える「スイッチOTC」として発売されており、テレビCMなど強力なプロモーションを展開しています。

【抗ヒスタミン薬】:対症的効果

 抗ヒスタミン薬は、花粉によって発生したヒスタミンの働きを抑えます。古くからある薬で、市販の薬にも多く含まれています。 ヒスタミンの働きに直接的に作用するので、症状のひどいとき、花粉の飛散の多い日などに即効的な効果が期待できます。抗アレルギー薬と比べると、すでに出てしまった症状に対しても効果が実感できます。

 抗ヒスタミン薬は、くしゃみや鼻水に対しては効果があるものの、鼻づまりに対してはほとんど効果がありません。

 副作用は眠気、口の渇き、倦怠感などで、抗アレルギー薬に比べると強く眠気を感じる場合が多いので、抗ヒスタミン薬を飲んだら車の運転や高所での作業は控えてください。なお、抗アレルギー薬のうち、抗ヒスタミン作用を持つものを「第二世代抗ヒスタミン薬」と呼ぶのに対して、古くからあるこちらの抗ヒスタミン薬を「第一世代抗ヒスタミン薬」と呼びます。

 とても紛らわしいのですが、最近の眠くならない予防効果もある抗アレルギー薬が「第二世代」、古くからある眠くなるけど抗ヒスタミン作用の強いものが「第一世代」と思ってください。

【ステロイド剤】:対症的効果

 ステロイド剤は、本来人体の副腎皮質で分泌されているホルモンを人工的につくり出した薬剤で、ヒスタミンによって引き起こされた鼻の粘膜の炎症、目の結膜の炎症を鎮めます。また免疫系の反応も低下させるので、アレルギー反応も抑える働きをします。その効果は非常に強力なので、花粉症だけでなく多くの炎症性の疾患での「切り札」的な薬です。

 花粉症では主に局所的に点眼、点鼻薬として使われていますが、症状が重い場合は内服薬のセレスタミン(抗ヒスタミン薬との配合剤)なども広く使われています。

 強力な効果を持つ半面、ステロイド剤には強い副作用があります。本来体が持っているホルモンを人工的に与えることで、体のさまざまな機能のバランスに影響を与えます。また急に中断すると副腎の萎縮によるリバウンドの危険もあります。花粉症で使用する程度の量であれば大丈夫といわれていますが、長期にわたっての使用は控えたほうがいいでしょう。目薬や点鼻薬など局所的な使い方でも、目や鼻の感染症が発生したり、鼻の粘膜が弱くなったり、緑内障の原因になることもあります。

 ステロイド剤には内服、点眼、点鼻のほかに注射もあります。

「注射一本で花粉症シーズンを楽にすごせる」として一時期はやりましたが、ステロイドの注射は内服に比べ、はるかにリスクが高いものです。

 同じステロイドでも、内服薬なら服用して数日のうちに代謝して体外に排泄されるので副作用が出たときは服用を中止することで対応できますが、注射の場合、効果が1カ月持続するので「楽でよい」と考えがちですが、重篤な副作用が生じた場合でも薬が排出されるまでの1カ月間、副作用も持続することになってしまいます。

 日本アレルギー学会でも、「花粉症に対するステロイド注射は望ましくない」と警告しています。忙しいビジネスパーソンの方などからステロイド注射のご相談をよく受けますが、どうしても必要という特別な事情がない限り、安易にステロイド注射をすべきではありません。打つとしても、医師から十分な説明を受け、リスクについてもよく話し合いましょう。

【レーザー治療】:予防的効果

 以前のレーザー治療といえば、鼻粘膜を焼いて花粉が吸着しないようにする炭化、蒸散を目的とした治療法でした。

 それに比べて、現在のレーザー治療はむしろ蛋白凝固、変性を目的とした治療を行っているようです。つまり、レーザー照射は“粘膜がないからアレルギーが発症しない”ではなく、“鼻粘膜に花粉が付着してもアレルギーが生じないように粘膜の性質を変える”ことで効果を発揮しているようです。

 現在、このようなレーザー治療を行っている施設は日本では少ないようですが、利点としては、治療が両鼻で5分程度と短時間で終わり、治療後の疼痛や鼻出血が少ないことがあります。あまり知られていませんが、このレーザー治療は保険適用の治療法で、本人負担は1万円程度です。1度で効果が出ない時は2度目のレーザー治療をします。

【減感作療法】:根本的効果

 減感作療法は免疫療法ともいわれ、その患者さんのアレルゲンをほんの少しずつ体内に入れ、徐々に増やしていくことでアレルゲンに対する過敏な反応を減らしていこうという治療法です。花粉症やアレルギー性鼻炎、気管支ぜんそくなどの病気に対して行われています。

 治療法には皮下注射と舌下があります。以前は皮下注射しかありませんでしたが、14年に、スギ花粉に対する舌下減感作療法薬のシダトレンが発売になりました。

 治療の開始は花粉の季節に症状が出てから行うのではなく、数カ月以上前から行わなければなりません。治療期間は、注射も舌下も2年から5年必要です。

 減感作療法は根治療法とされているので、ほかの対症療法より間違いなくお薦めの治療法です。しかし、治療期間が長いことがネックとなります。自宅で服用できる舌下減感作療法にしても数年間にわたって毎日服薬するのはハードルが高いようで、海外での治療実績をみても継続率は低いようです。

【スギ花粉症緩和米】:根本的効果

 昨今、「食べて治す治療法」として開発が進められているのが「スギ花粉症緩和米」です。農林水産省所管の農業生物資源研究所と日本製紙が共同で研究開発を行っており、舌下免疫療法と同じように、毎日食べる「ごはん」によって体にスギ花粉の免疫をつけていこうというものです。

 マウスを用いた薬効試験では、半年から1年ほどの摂取で花粉症の症状が抑えられることが確認されています。順調に開発が進めば、20年ごろには実用化される見込みです。もうすぐ「ごはんを食べて花粉症を治す」ことができる時代になりそうです。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)