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By Pricenfees

日本では労働基準法で1日の労働時間が8時間を超えないように定められていますが、スウェーデンでは「6時間労働」を目指して複数の企業や公的機関が取り組みを行っています。実際に6時間労働を2年間取り入れた結果、どのような変化が起きたのかをBBCが報じています。

What really happened when Swedes tried six-hour days? - BBC News

http://www.bbc.com/news/business-38843341

26歳のエミリー・テレンダーさんは、スウェーデンのゴセンバーグにある高齢者向けの介護施設で働く看護師です。テレンダーさんは6時間労働の効果を測るための社会実験に参加しており、ちょうど2年間の6時間労働勤務を終え、8時間労働勤務に戻る必要があります。6時間労働が終わることについて考えると、「以前よりも疲れを感じます」とテレンダーさんは悲しげな表情で語ります。というのも、彼女は家に帰って4歳の子どものためにご飯を作ったり本を読み聞かせたりする必要があるからで、「試験運用の期間中、参加した同僚は皆エネルギッシュで、ハッピーに見えました」と6時間労働勤務が終わることを惜しんでいます。

6時間勤務の試験運用期間、テレンダーさんの働く介護施設では約70名の介護助手が8時間勤務から6時間勤務に変更されました。テレンダーさんが参加したのはゴゼンバーグ主導で行われた試験ですが、スウェーデン国内では他にも同じような試験が行われており、さまざまな職業に就く人々の労働時間が一時的に6時間に短縮されています。



By Tanel Peets

6時間労働の効果を測定するプロジェクトの最初の18ヵ月で、看護師の病気休暇は8時間労働時よりも少なくなることが明らかになりました。また、調査の結果、試験に参加している看護師たちも自身がより健康的であると報告しており、仕事の生産性は組織全体で85%も向上したそうです。

しかし、試験結果から「あまりにコストがかかりすぎる」ということも判明しており、経済的に持続可能なものと思えない6時間労働の試験に税金を投資し続けることは不公正である、と主張する人々も登場しました。土壇場で試験参加者の数を削減することでなんとか試験期間の2年間を予算内で乗り越えた同プロジェクトですが、その費用は約1200万クローナ(約1億5000万円)にも及ぶそうです。

「全ての自治体でこの施策をとることができると思いますか?答えはノーです。あまりにもコストが高すぎます」と語るのは、ゴセンバーグの介護施設で行われた試験の責任者であるダニエル・ベンマー議員。しかし、ベンマー議員はこの試験により新しい雇用を創出することに成功したこと、病気になった際の費用を削減することに成功したこと、そして仕事文化に関する議論を促進することに成功したことを誇っています。



By Scott Riggle

スウェーデン国内では仕事と生活のバランスに関する議論が頻繁に行われており、日本でも標準的な週40時間労働(8時間労働)をより短くすることが検討されています。全国レベルで見ると、左翼政党だけが現在の8時間労働をより短いものにすべきと主張しているそうで、直近の総選挙では左翼政党の支持率は6%だったそうです。

しかし、スウェーデンの地方自治体では社会福祉士や病院勤務の看護師といった業種の人々が重大な病を患ったり極度の疲労に苛まれないように、ゴセンバーグで行われたような6時間労働を試験的に導入する取り組みがみられるそうです。例えばシェルレフテオーにある病院では、同病院で働く清掃作業員に対して3月から18か月間の6時間労働導入試験が行われます。

また、広告・コンサルティング・通信・テクノロジーといった分野の企業でも6時間労働を取り入れる流れがあるそうです。しかし、中にはいち早く6時間労働というアイデアを放棄している人々もいます。



By home thods

ゴセンバーグに拠点を置くバイオインク企業のエリック・ガテンホルムCEOは、「6時間労働が起業家やスタートアップの世界に合っているとは思いません」と述べており、6時間労働は業種や企業を選ぶと指摘しています。実際、ガテンホルムCEOは「Facebookのトレンドを読んで」から、6時間労働を実際に自社スタッフで試したこともあるそうですが、従業員からひどいフィードバックがあったことで試験はわずか1ヵ月で終了することになったそうです。

同社で働くガブリエル・ペレス氏は、6時間労働について「きっとものすごく楽しいものだろうと考えていましたが、ストレスのようなものを感じました」と感想を語っています。その理由は、「何か進めているタスクを完了させる前に労働時間が終われば、それは学校で宿題をやり残したようなものです。そういったものがドンドン積み重なっていくんです」とコメント。

ストックホルム大学のストレス研究機関で博士号を取得したアダム・セディ博士も同じ意見を持っており、「6時間労働は病院などの組織で最も効果的だと考えています。なぜなら、そういった組織では6時間働き、その後、職場を離れて家に帰るだけで良いからです。それに対して、仕事と私生活との境界線があまり明確ではない組織の場合、6時間労働はそれほど効果的ではないかもしれません。この解決策は、従業員が8時間で行っていた作業をすべて6時間以内に収められるかどうかにかかっており、もし不可能ならストレスレベルを上げることさえあります」とのことです。



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ゴセンバーグの介護施設で行われた試験で研究主任を務めたベント・ローレンソン氏は、6時間労働というコンセプトは、スウェーデンの多くのビジネスと同じようにフレキシブルな職業体系を強く勧めるものだと主張しており、「経営者はすべての従業員を同時にオフィスの中で働かせる必要はありません」と語っています。

また、「看護師と比べてみると、歯科医や医者、美容師などは自身の仕事を残して仕事を終えることはできません。したがって、まだ人々が『仕事の時間を減らすべき』かどうかを議論する段階にはないと思います。その前に、我々は仕事環境をより良くするためにどういったことができるのかを考えるべきだと思います」と述べています。