「ジェル入れた?」が恋人同士の合言葉に?(写真はイメージ)

写真拡大

避妊といえばコンドームや女性が内服するピル(経口避妊薬)などが一般的だが、ペニスにジェル状の半固形物を注射して精子をとめる男性用避妊薬の開発が進んでいる。

この避妊薬は「ベイサルジェル」(Vasalgel)と呼ばれるが、AFP通信は2017年2月7日、サルを使った動物実験で効果が得られたと報道した。パイプカット(精管切除手術)を受けなくても半永久的に避妊できるうえ、必要な時にジェルを洗い流せば生殖機能を回復できる画期的な方法だ。

ジェルのフィルターが精子だけをふさぐ

AFP通信によると、実験を行なったのは米カリフォルニア国立霊長類研究センター。ベイサルジェルは半固形のジェルを直接精管に注入し、精子の通り道をふさぐというもの。ウサギの実験では効果が認められており、今回、人間により近いサルを使って実験が行われた。16匹のオスにジェルを注入しメスと同じ環境に置き、少なくとも1回は繁殖期を迎えるよう2年間観察した。その結果、妊娠したメスは1匹もいなかった。通常は、オスとメスを一緒にしておくと、メスの約80%が妊娠するという。

この研究成果は米学術誌「Basic and Clinical Andrology」(電子版)の2017年2月6日号に発表された。ベイサルジェルの開発に資金提供しているのは米非政府組織(NGO)のパーセマス財団だ。同財団はAFPの取材に対し、「現在、人間の精管にベイサルジェルを注入する治験に向けた準備が進んでいる」とコメントしている。

ベイサルジェルとは、いったいどんなものなのだろうか。

ニュースサイト「Techinsight Japan」の「注射1本の男性避妊薬『ベイサルジェル』 実用化は2018年か」(2016年4月2日付)によると、パーセマス財団の執行役員イレイン・リスナー氏は次のように説明している。

「ジェルを精液の通路である精管に注入することで、柔らかい半透性の壁ができます。そしてこの壁がフィルターの役目を果たします。精子は大きすぎて壁を通過できないため、体に再吸収されてしまうのです」

このため、精液が無精子状態になり避妊が可能になる。ちなみに男性の射精能力に影響が出ることはないそうだ。ウサギのオス12匹に注射した実験では11匹のオスの精液が無精子状態になった。リスナー氏はベイサルジェルの利点として、「ジェルにはホルモン剤が含まれないため、副作用がなく、体への負担が少ないこと」「必要となれば、ジェルを洗い流す注射をすることで生殖機能を回復できること」の2つをあげている。

世界の貧困層への「安くて確実な」避妊法

そもそもどういう理由で、ベイサルジェルの開発が始まったのだろうか。

「ニューズウイーク」日本版の「コンドームいらずの男性避妊法まであと少し」(2014年9月11日)によると、パーセマス財団は製薬業界が取り扱わない「埋もれた先進的医学研究」を支援し、所得が低い層や途上国の人々が利用できる低価格の医薬品を開発する目的で設立された。貧困の解消には避妊が欠かせないが、貧困層の男性にはコンドームを使いたがらない人が多い。かといって、女性が半永久的に避妊できる「避妊リング」の装着は、米国では約800ドル(約9万円)もかかる。ベイサルジェルはホルモン剤を使用せず、効果が長続きする避妊法として注目されているという。

同誌の取材に対し、財団の担当者は「女性の避妊の費用が薄型テレビの値段より高いようでは、避妊の普及など望めない。ベイサルジェルをパイプカットの費用より安く提供できるよう開発を進めたい」と語っている。