かつて日本では、ビタミンB1欠乏症のことを「脚気」と呼び、結核と並ぶ国民病とされた。ビタミンB1を含まない精製された白米を食べるようになった江戸時代以降、患者数が増加。心不全などで、大正時代までに毎年数万人が命を落とした恐ろしい病だ。
 栄養状態が格段に上がった現代では、豊富な食品を普通に食べていれば問題はない。しかし、偏食やダイエットで食事制限している人、胃を切除している人、小腸や胃での栄養吸収を阻害する薬を飲んでいる人などは、やはり気を付けなければならない。
 「ビタミンB1は小腸で吸収されると考えられていましたが、最近の研究により胃壁の細胞で取り込むことが分かってきました。そのため、胃を切除した人はもちろん、一部の降圧剤など胃や腸での栄養吸収を抑えるような薬を使っている場合は、注意が必要なのです」(専門家)

 とはいえ、このビタミンB1欠乏症を最も警戒するのは、何といっても大量に飲酒することだという。
 そもそもビタミンB1は水溶性のため、ビールなどを飲むと余計に尿と一緒に排出されやすい。そのため二日酔いは、脱水症と低血圧になりやすいと言える。しかも飲酒により、消化器の働きが低下して栄養素の取り込みも悪くなる。
 「恐ろしいのは、ビタミンB1の吸収が悪くなると、認知症と同じような症状を起こすとされる点。これを医学界では『ウェルニッケ脳症』と呼んでいますが、脳内神経障害により真っすぐ歩けなくなって眼振も起き、物忘れもするようになる。また、本人の意思をよそに作り話をするようになるケースもあるといいます。見た目は病気と分からないため、人間関係を損ない、悩む人もいるようです」(健康ライター)

 最後に、飲酒後の食材でどんなものが身体にいいか、管理栄養士で料理研究家の林康子氏に聞いてみよう。
 「身近な食材で最も多くビタミンB1が含まれているのは豚肉です。とりわけ、ヒレ肉やモモ肉など脂身の少ない部位は、100グラム当たり1.01ミリグラムのビタミンB1が含まれている。成人男性の1日に必要な推奨量は1.4ミリグラムですから、その8割近くになります。また、サケやブリ、ウナギなどの魚介類も比較的ビタミンB1が豊富です」

 加えて大量の飲酒後は、亜鉛不足にもなりがちだ。
 「亜鉛は牡蠣、レバー、牛肉などに多く含まれています。中でも牡蠣は100グラム当たりの含有量が豊富で、生牡蠣を3個食べれば1日分の必要量を補給できるほどです。魚の内臓にも多いので、サンマの塩焼きなどは内臓も丸ごと食べることをお勧めします」(同)

 失われる栄養を意識しながら酒を楽しもう。