首相官邸ホームページより

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「(トランプの大統領就任は)これこそまさに民主主義のダイナミズムであります」

 日本時間11日の未明に行われた日米首脳会談と、その後の共同声明は、世界中に安倍首相が"トランプの飼い犬"であることを印象付けた。差別的としか言いようがない中東・アフリカ7カ国からの入国を制限する大統領令を出したトランプに対しては世界各国から非難の大合唱が起こったばかりだが、安倍首相は「難民・移民政策は内政問題」だとして事実上、是認。「対話を閉ざしてしまえば何も生まれない」などと言いごまかし、"ゴルフが楽しみ"だとはしゃいでさえみせた。

 人権侵害行為を批判もせず認めることは「対話」とは呼ばない。これではたんなる手下のイエスマンだ。事実、イギリスのメイ首相は首脳会談で直接トランプに釘を刺せなかったことから、自国のメディアに「トランプのプードル(愛玩犬)」と呼ばれた。だが、共同会見では、あまりにみっともないこの国の総理大臣、そしてトランプに、どのメディアからも厳しい指摘の声はあがらなかった。

 それもそのはずだ。質疑応答でトランプが指名したのは、トランプ支持メディアのニューヨーク・ポストとFOXニュースの記者。一方、安倍首相が指名したのはNHKと産経新聞の記者だった。ふたり揃って"御用メディア"の質問しか受け付けない、という態度を見せつけたのである。

 しかも、狂犬トランプが今回、安倍首相からのゴルフの誘いに乗ったり、何度も食事をともにする日程を組むほど距離を縮めた背景には、トランプの心を掴む、とんでもない会話があったらしい。

 それは、共同会見でご指名を受けた産経新聞の田北真樹子記者が書いた、産経ニュースの記事に詳しい。田北記者が述べるところによると、昨年11月のトランプとの初会談の場で、安倍首相はこんなことを言ったというのだ。

〈「実はあなたと私には共通点がある」
 怪訝な顔をするトランプを横目に安倍は続けた。
「あなたはニューヨーク・タイムズ(NYT)に徹底的にたたかれた。私もNYTと提携している朝日新聞に徹底的にたたかれた。だが、私は勝った...」
 これを聞いたトランプは右手の親指を突き立ててこう言った。
「俺も勝った!」
 トランプの警戒心はここで吹っ飛んだと思われる。〉

 安倍がトランプの心を掴んだ理由。それは、「俺は朝日新聞に勝った!」「俺もニューヨーク・タイムズに勝ったよ!」と意気投合したことだと言うのだ。......もはやぐうの音も出ない、ゲスの極みの会話である。

 だが、たしかにこのふたりは、メディアを心底憎んできた。たとえば安倍首相は、第一次政権時に大臣たちの相次ぐ政治資金問題などでマスコミからの批判に晒されたことで、特にリベラルメディアの象徴だと安倍氏が信じ込んでいる朝日新聞への憎悪を先鋭化させた。下野してからはFacebook上で朝日を"偏向メディア"として槍玉に上げ、総理に返り咲いてからも国会で朝日だけを名指しして批判するなど、あからさまに敵扱いしてきた。そして、圧力によるメディア支配という暴挙を繰り返し、現在にいたっている。

 一方、トランプは選挙戦において連発してきた暴言の数々やヘイトスピーチによる大衆煽動が、メディアから批判を浴びつづけた。これはメディアとして当然すぎる反応だったわけだが、このことに怒り心頭のトランプは、安倍首相と同じように自身に批判的なメディアを敵視し、今後も圧力を強めていくだろう。

 しかし、このような安倍やトランプの「メディアは敵」という姿勢こそが、民主主義の破壊者である何よりもの証拠なのだ。言うまでもなく、メディアというのは「権力の監視」が使命だ。権力者が人権を軽視していないか、国民不在の政治を行っていないか。こうしたメディアによる権力の監視、そうしてチェック機能が民主主義には欠かせない。つまり、民主主義に則らなくてはならない権力者側が、メディアを「敵視」して「勝ち負け」で判断することは、民主主義を蔑ろにしていることと同義なのである。

 だいたい、安倍とトランプは、何を判断基準に「勝った」と喜び合ったというのか。もしその「勝利」とやらが、自分や政権の政策への批判を書かせないということならば、トランプよりもはるかに安倍首相は「勝って」いるだろう。それは何も朝日新聞だけの問題ではない。

 実際、共同会見の質疑応答では、ニューヨーク・ポストの記者は大統領令に対する連邦控訴裁判所の判断についてトランプに問い、「まったく関係のない質問だ」とキレられたり、米メディア側も安倍首相にTPPについて2社とも質問していたが、日本側のNHK記者は「トランプ大統領の言う『偉大な国』とはどういう国ですか? 安倍首相にとって偉大な同盟国アメリカはどういう国ですか?」という、毒にも薬にもならない質問でお茶を濁した。そして、前述の安倍・トランプによるゲスな会話を"安倍首相の外交手腕"と言わんばかりに紹介した産経の田北記者は、トランプに対して中国や北朝鮮の危険性を強調し、なんとかトランプにアジア太平洋地域の危機を語らせようと必死な質問を繰り出したものの、「中国国家主席とは今後、とてもうまくやっていけると思います」と返される始末だった。

 一部を除けばアメリカのメディアはトランプに手加減しないが、かたや日本はこの有り様。もはやNHKや産経にとって、メディアの仕事とは「権力者から寵愛を受ける」ことなのだろう。そして、それ以外のメディアもまた、安倍首相から「敵」認定されないようにと大本営発表だけを垂れ流す現状は、安倍首相と一緒になって民主主義を破壊する「加担者」でしかない。
(編集部)