トランプ政権「貧困層」をネットから追放 支援プログラム廃止へ 

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トランプ大統領が任命した連邦通信委員会(FCC)の新委員長であるアジット・パイ(Ajit Pai)はオバマ政権が推進してきた「ネット中立性」規則を撤廃し始めた。この影響で低所得者層向けのネット接続支援の廃止や、受刑者向けの電話通話料金の値上げなどが見込まれ、人々の生活に大きな影響が出始めている。

FCCは先週、AT&Tとベライゾンによる動画ストリーミングの「ゼロレーティング」に関する調査を打ち切ると発表した。ゼロレーティングとは、自社の動画アプリのデータ通信量を課金対象から除外することで、オバマ政権は公平な競争を阻害しているとして異議を唱えていた。FCCの決定を受けて、ネット中立性を支持する人々は、通信事業者がコンテンツごとに異なる価格を自在に設定できるようになると危機感を募らせている。

FCCは、ほかにも前政権下で作成されたブロードバンド基盤の整備に関する勧告書やサイバーセキュリティ対策の報告書、教育施設へのインターネット導入を支援する「E-rate」プログラムの刷新案などを破棄する方針を明らかにしている。ニュースメディアArs Technicaは「パイはネット中立性に関するFCCの規制をひっくり返す考えだ」と報じている。

FCCの中で唯一の民主党系委員であるMignon Clyburnは、パイのもとで矢継ぎ早に行われた決定は、FCCの掲げるミッションを遂行する上で大きな障害になっていると指摘する。「多くの部門が、まともな説明もせずに、前政権下で決定された公正な競争や消費者保護、サイバーセキュリティなどに関する規制を撤廃した。私の部署は見直しの対象となる10以上の項目の確認に2日しか与えられなかったため、期日の延長を申し込んだが拒否された」とClyburnは話す。

貧困層はネットが使えなくなる

FCCは、長年の議論の末にようやく実現した刑務所内からの電話通話料の引き下げについても撤廃することを明らかにした。かつては刑務所内からの電話には、1分間につき1ドルの通話料に加えて高額な料金が課せられていたため、オバマ政権下でFCCが上限金額を設けたていた。これに反発する通信事業者らがFCCを訴え現在も係争中だが、新FCCによる一連の政策は、これらの通信事業者を支援しているようにも見える。

FCCは、レーガン政権下でスタートした低所得者層向けの電話料金補助制度で、現在はブロードバンド接続支援も行っている「Lifeline」プログラムについても見直す方針だ。非営利団体EveryoneOnのCEO、Chike Aguhによると「通信事業者9社がプロバイダー指定から外れたためにユーザーは料金を自己負担しなくてはならなくなり、プログラムの活動は停滞を余儀なくされている」という。

「SNAP(低所得者向けの食料費補助対策)に依存する低所得者層にとって、Lifelineプログラムによる月額9.25ドルの補助がなければ、ネット接続費を支払うことができない。今日では大学の願書や求職申込の90%はオンライン化されており、ネット接続は電力などと同じように経済活動に欠かせない公共リソースとなっている。Lifelineプログラムの対象者は全米で4,000万人に上り、これらの人々がネットに接続できなくなる状況は避けなければならない」とAguhは話す。

Aguhのもとには、顧客や教育者たちから問い合わせが殺到している。中には、生徒がネットに接続できなくなってしまったために教師が宿題を出せないケースもあるという。

FCCはひっそりと行動したつもりかもしれないが、エンガジェットやThe Verge、BBC、ニューヨーク・タイムズといったメディアは、これまでのFCCの政策をことごとく見直す動きについて懸念を表明している。また、ネット中立性の擁護者たちもFCCへの批判を強めている。こうした状況についてAguhは「FCCが反対意見に耳を傾けてくれることを期待する」と述べている。

学校や非営利組織のほかにも、老人の孤立を防ぐためにネット接続を支援する団体など、様々な組織が声をあげ始めている。FCCに彼らの声が届くことは間違いないが、FCCが聞き入れるかどうかは不明だ。