いよいよマスターズにも期待大?

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 経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、アメリカツアーでメキメキと実力を上げているプロゴルファーの松山英樹に注目。

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 松山英樹の快進撃が続いている。米男子ゴルフツアーのフェニックス・オープンでプレーオフを制して連覇を果たし、米ツアー通算4勝目は日本人初の最多勝利となった。

 それだけに日本だけでなく欧米メディアでも、彼の強さの秘密、勝利の要因を、様々な角度から分析している。大きな飛距離と安定したドライバーショットが強さの秘密とする記事もあれば、アプローチのうまさやプレーの精度、強い精神力と分析しているところもある。

 松山は今、世界で最もホットで勢いのあるゴルファーなのだが、優勝会見での彼は、にこやかな表情ながらも実に謙虚(?)だった。優勝当日のプレーについては「いいプレーかどうかわからないけど…」とわずかに首を傾げ、「いいプレーが続いているから優勝しているのでは?」との質問には「そんなにいいプレーをしているかなと感じるが…」と、またも首を傾げた。

 謙遜しているというより、自分のプレーに納得していないようだ。結果としてはいいプレーになっているのだが、本人としては「結果と自分のゴルフの内容がちょっと一致していない」らしい。それは“仏頂面”と指摘されるように、プレーの随所で見られる彼の表情からも伺える。

 ドライバーで、おぉ!というショットを打っても、画面に映し出される松山の表情はどこか冴えない。フェアウエーの責めやすい場所にボールが落ちても、難しそうな表情のまま。グリーンのピンそば近くにボールが落ちても、ニコリともせずに下を向いて歩き出す。

 微妙なスイングの違いなど素人の私にはわからない。だが、他のゴルファーを見ていると、好調な時と不調の時、うまくいった時とそうでない時では、動作や表情に何らかの変化が出やすいものだ。そんな変化が松山にはほとんど見られない。うまくいったと松山が感じた時が、実にわかりにくいのだ。

 もしかすると、これも松山の強さの秘密かも?と思う。松山の場合、プレーをしている間は、感情の揺れや振れ幅が小さいのではないだろうか。

 どんなスポーツでも、調子よく波に乗っている時がある。こういう時は、自信が出て、いくらでも勝てそうな気がするものだ。うまくいけばいくほど期待が大きくなり感情が高ぶり、できた!という喜びと、よかった!というほっとした安堵感から、逆に油断が生まれやすくなる。

 対戦相手がいる球技ならポイントを取った後、サッカーならゴールを決めた後、ゴルフならショットを打った後、やった!と思うと一瞬、気が緩みやすくなる。すると集中力や注意力、緊張感がそこでいったん途切れてしまいかねない。

 だが、プレーへの理想や基準が高いといわれる松山は、常に自分のショットのあちこちが気になるのか、そんな気の緩みが感じられない。

 集中力と注意力を邪魔するのは、マイナス感情だけでなく、喜びや嬉しさという感情の高ぶりや安堵感もプラスになるとは限らないのだ。スポーツマンが常に平常心を求められるのは、そのためでもある。強いメンタルは、マイナス要因だけに求められるものではないだろう。

 スポーツ心理学の第一人者、ジム・レイヤーは『メンタル・タフネス』という著書で、「何事においても実力を発揮するには、平常心を保ち、しっかり集中していることが必要だ」と書いている。そして冷静にすべきことをして、何事にも心を乱されないことが必要だという。

 さて、そう分析をしてみたものの、松山の場合、結果オーライのいいショットなのか、本人にとって納得のいくいいショットだったのか、その違いが見ていてイマイチ、いや、まるでわからない。

 どこかに、それがわかるような仕草や動作はないものか? そう思って画像を見ると、わずかに差が出る動作があった。

 歩き方だ。ゴルフの映像だと、歩き方がはっきり映るのはグリーン周りかグリーンの上だ。その時の松山の歩き方や、パターを打った後の足の運びに注目すると…。

 ボールがカップに入った時、松山はつま先を上に向けて歩くのだ。とても嬉しそうに、楽しそうに、つま先をピンと上に蹴りあげて歩く。つま先は身体の中でも、プラスの感情が出やすいところ。そのため、嬉しかったりいい気分だと、つま先が上を向きやすいと一般的にいわれる。

 グリーン周りのよい位置にボールがある時もそうだ。ボールに近づく松山のつま先は上を向いて持ち上がる。だがアプローチがうまくいかなかった時やボールがカップに入らなかった時、つま先はそれほど上を向いていない。

 パットをはずした時は、「あ〜あ、やっちまったよ」といった感じで、天を見上げたり、手をぶらぶらさせる仕草を見せるが、それを引きずらず、いい方向に変えていくのがうまいのも松山だ。最終ホールのパットをはずし、プレーオフになったことを聞かれると、「何で入らなかったのか?」と首を傾げて苦笑いしたが「悪いストロークではなかったので、プラスに考えてプレーした」と答えていた。

 今はまだ「日本で一番のプレーヤーとは思わない」と視線を落とし、大きく首を傾げたが、その後「そうなっていけるよう頑張る」と小さく頷いた松山。フェニックス・オープンで見せた力のこもった勝利のガッツポーズを、今年のマスターズでも期待しよう。