ワタミ創業者・渡邉美樹氏(写真:中西祐介/アフロ)

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 居酒屋チェーンのワタミの復調は本物なのか――。

 ワタミの2017年3月期通期の売上高は前期比22%減となる1000億円、純利益は97%減となる2億円の黒字を見込んでいる。

 16年3月期には、介護事業を損保ジャパン日本興亜ホールディングスへ売却し、その売却益で最終損益は78億円の黒字(15年3月期は128億円の赤字)にした。

 今期は介護の売り上げと介護事業の売却に伴う特別利益がなくなるため、期初予想は売上高990億円、純利益は2億円の赤字と公表していた。ところが、通期見通しを上方修正し、赤字の予想から一転して黒字を見込む。

●総合居酒屋「和民」を業態転換

 16年12月31日付産経新聞は「店名変更でワタミで復調!」と報じた。新業態への転換が大きいという。「和民」や「わたみん家」を「ミライザカ」や「三代目鳥メロ」に改名した効果で業績が復調したと伝えている。

 営業の3本柱のうち介護事業を売却したため、現在は弁当の宅配と国内・海外の外食が主力だ。16年3月期の外食は国内が15億円の赤字、海外が2億円の赤字で、2億9000万円の連結営業赤字になる最大の原因となった。

 外食事業は今期、10億円を投資してテコ入れする。具体的な表れが「和民」や「わたみん家」などの総合居酒屋の業態転換をはかり、店舗の看板を変えることだった。

 16年11月10日放送の『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)が、「ワタミ隠しで業績回復!?」と放映した。新業態の屋号に「ワタミ」という文字がないため、ワタミグループと知らずに客が入っていると伝えた。

 ワタミは08年、新入社員が過労死自殺したのをきっかけに「ブラック企業」のイメージが定着し、客離れを引き起こしていた。イメージを一新するために店名を変えるのは、企業として当然の防衛策といえる。

 ワタミの月次情報によると、改名前の16年5月の既存店売上高は前年比5.1%減、客数は4.4%減だった。業態転換を進めてからは、売り上げ、客数ともに回復。16年10〜12月の第3四半期の売上高は3.3%増、客数は0.4%増とプラスに転じた。全店合計でも売上高は2.9%増だ。改名効果といっていいだろう。

●創業者、渡邉美樹氏の存在

 ワタミの問題は、創業者の渡邉美樹氏の存在とイコールだ。

 渡邉氏の政治家志向は強い。現在は自民党の参議院議員だが、本当になりたかったのは東京都知事だといわれている。16年6月15日、自身のフェイスブックに舛添要一前都知事の辞任に関連して、都知事選を振り返り、「当選したかった。悔しさが残るのが本音です」と綴った。

 渡邉氏は「ワタミには1000%戻らない」と啖呵を切って政界に転じたが、現在でもワタミのオーナーであることに変わりはない。

 16年9月末現在のワタミの筆頭株主は、渡邉氏の資産管理会社である有限会社アレーテーで、発行済み株式の25.09%を保有している。2位がサントリー酒類の8.01%、3位が自己株式を保有するワタミの6.21%、4位はアサヒビ-ルの4.26%、5位が神明ホールディング(名義は神明)の4.19%だ。

 つまり、渡邉氏は創業者かつオーナーとして君臨し続けている。ワタミの経営陣は、本来、経営にはノータッチのはずの渡邉氏の顔色をうかがいながら経営せざるを得ない。

 この状態を解決するには、渡邉氏が二足の草鞋を脱いでワタミの経営に専念するか、ワタミの株式を売却してワタミから完全に身を引くしかない。これが実現した時に、初めてワタミの復調が、本気で語られることになる。
(文=編集部)