日米の中央銀行総裁の任期が残り約1年となってきました。米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長の任期は2018年2月3日まで、日銀の黒田東彦総裁の任期は同4月8日までです。

 いずれも再任の可能性がなくはありません。ただ、トランプ米大統領はイエレン議長を再指名しない旨を明言しています(再任のためには、大統領による指名と議会上院の承認が必要)。また黒田総裁は現時点で70歳を超えており、さらに5年の任期に意欲を見せるかというと甚だ疑問です(同様に国会同意を得て内閣が任命)。

 残り約1年の任期中に、それぞれの総裁は何を成し遂げるでしょうか。

イエレン議長はバランスシートの縮小へ?

 イエレン議長の率いるFRBは、2015年12月に利上げに踏み切り、リーマン・ショック後に続いた「ゼロ金利」から金融政策の正常化を開始。2016年12月には追加利上げを行いました。FRBはイエレン議長の任期中に(再任がないとすれば)、さらに2回、ないし3回の利上げを行うものとみられています。

 それだけ米景気は堅調に推移しており、インフレ率もジリジリと上昇してきました。労働市場の改善に懐疑的で利上げに慎重だったイエレン議長も、徐々に楽観的な見方に変わってきたようです。

 次なる課題は、FRBのバランスシート(保有資産)の縮小でしょう。FRBは国債などの債券を購入する、いわゆる量的緩和(QE)をリーマン・ショック以降に断続的に行いました。QEは2014年10月に終了しましたが、その後もFRBのバランスシートの規模はほとんど変わらず、今でも4兆ドル以上の債券を保有しています。これは保有債券のうち満期償還される分を類似の債券に再投資しているからです。背景には、債券の新規購入を続けなくても、残高を維持するだけで金融緩和効果があるとする考え方があリます。

 非伝統的な緩和状態から金融政策を正常化するにあたって、利上げに加えてバランスシートの縮小は不可避です。FRB内部にはバランスシートの縮小を開始すべきだとの意見もある模様で、FRBがどこでその決断をするかが注目されます。実施にあたっては、市場の混乱を避けるために前もって十分にアナウンスすることが想定され、比較的早い段階で何らかのメッセージが出てくるかもしれません。

 イエレン議長の前任だったバーナンキ議長は2013年5月の議会証言で、「今後数回の会合で債券購入のペースを落とす可能性がある」と宣言し、翌年1月にQEの段階的縮小、いわゆるテーパリングを開始しました。その直後に、イエレン議長にバトンを渡した格好です(QE終了は2014年10月)。イエレン議長も、債券の再投資のペースダウンを宣言して、バランスシートの縮小に道筋をつけてから後進に道を譲ろうとするかもしれません。

黒田総裁は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の手じまい?

 他方、日銀の黒田総裁は就任直後から、2013年4月の量的・質的緩和(QQE)、14年10月のQQE拡大、16年1月のマイナス金利導入、同9月の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)と、2%の物価目標を速やかに達成するために次々と手を打ってきました。これは、資産購入などの新機軸を打ち出しつつも、量的緩和やマイナス金利に消極的だった前任の白川総裁から、ドラスティックに路線変更をするものでした。

 実際の物価は目標に全く届いていません。2%どころか0%近辺でウロチョロしており、デフレ(物価の下落)から脱却したとの確信すら持てない状況です。日銀の「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」でも、物価目標の達成時期の見通しが「逃げ水」のごとく後ろズレしており、直近では「2018年度ごろ」まで後退しています。つまり、日銀は黒田総裁在任中の目標達成を諦めてしまったようです。

 それでも、年間80兆円という現在の国債購入のペースや、長短金利操作のなかで打ち出した「長期金利を0%近辺で維持」との政策は(「80兆円」は目標からメドに格下げされているが)、続けることが徐々に困難になってくるはずです。

 そのため、黒田総裁は、これまで打ち出したさまざまな非伝統的政策の手じまいに向けて徐々にかじを切ろうとするかもしれません。それとも、それらの後始末も含めて後進に丸投げすることになるのでしょうか。

2月14〜15日のイエレン議長の議会証言に注目

 今後、日米の中央銀行総裁の発言は一段と興味深いものになっていくかもしれません。まずは、2月14・15日の両日に予定されている米議会の公聴会で、イエレン議長が何を語るかに注目したいです。

(株式会社マネースクウェア・ジャパンチーフエコノミスト 西田明弘)