お酒とは縁が切れない呑兵衛は相変わらず多いようだが、中でも「飲んだ翌日に疲れが残る」「二日酔いの日が増えた感じがする」と感じる人は要注意だ。

 酒好きな人でよく見られるのが、ビタミンなどの栄養不足。「物を食べると飲めなくなる」と、つまみに手を付けない酒の飲み方は大間違いだという。
 日本栄養専門学校で実践栄養学を教える准教授は、次のように説明する。
 「まず、アルコールを大量に摂取すると不足しがちになるのがチアミン(ビタミンB1)です。アルコールは小腸でのビタミンB1の吸収を阻害してしまう。さらに、アルコールを分解してエネルギーを作り出す際に、大量のビタミンB1が使われるため、大量にお酒を飲めば、それだけ不足することになるのです」
 ある研究グループでも、酒を飲んだグループと飲まないグループの血中ビタミンB1濃度を比較した結果、飲んだグループはビタミンB1濃度が下がっていたといい、アルコール依存症の患者は、不足している傾向が強いというデータも出ているという。

 また、別の専門家はこう指摘する。
 「二日酔いは、栄養不足が追い打ちをかけます。ビタミンB1やAなどが主ですが、他にもカリウムやナトリウム、リン酸なども、不足すると直接的な原因となる。中でも、ナトリウム不足は、疲労や虚脱感、さらに頭痛や吐き気、食欲不振などの低ナトリウム血症を引き起こします」
 ナトリウムはほとんどの食事に含まれているため、普段は不足することがない。しかし、アルコールの飲み過ぎやスポーツなどの発汗などにより一種の脱水状態になった場合、陥る場合が多い。飲酒後にラーメンなどしょっぱいものが欲しくなるのもこのためだ。

 また、カリウムについても同じことが言えるという。
 「カリウム不足は身体の疲れを生じさせ、足のつりや、こむら返り、食欲不振なども起きる。これらも酒の飲み過ぎが原因の場合が多い。赤ワインにはカリウムが多く含まれているため補うことが出来るものの、一方で利尿作用も強く働くので、多くはそのまま排出されてしまうことが多いのです」(同)

 ビタミンB1は、摂取した糖質をエネルギーに変える際に欠かせないもので、筋肉や脳神経機能を正常に保つ働きもある。不足すると、糖質の多くが疲労物質の乳酸になる上、神経が正しく機能せずに、イライラしたり、筋肉痛、肩こり、腰痛を起こす人もいるという。

 こんな一例を紹介しよう。会社員の足立篤さん(50)は、4月の歓送迎会で痛飲して以降、身体がだるくて仕方がなかった。しっかり寝ているのに身体に力が入らず、食欲もない。イライラが続き、心なしか手足にむくみもあった。
 ただ、膵臓病特有の症状である背中や腰に張りはなかった。それでも不審に思い自宅近くのクリニックへ行くと、「栄養が不足気味で特にビタミンB1が欠乏している」と医者に診断されたという。

 東京都多摩医療総合センター総合内科外来担当医は言う。
 「このように、ビタミンB1の欠乏を見過ごしたり進めてしまうと、神経障害や脚気にもなりやすく、意識障害や眼球運動障害を起こし、最悪の場合、死亡する場合もあるのです。ほとんど何も食べずに大量のお酒を飲み続けたり、極端に偏った食事をしていなければ、最悪のケースが起こることはありませんが、人間にとってビタミンB1は、それだけ重要な栄養素だということです」