「3年前に離婚していたことは、確かにみなさん驚かれたかもしれませんね。その後、病気が悪化した藤村さんを息子さんがよく面倒を見ていました」

こう語るのは40年来の親友で、藤村俊二さん(享年82)が都内で経営していたワインバー『オヒョイズ』に95年の創業時から閉店までシェフとして勤めていた夏目安彦さん(72)だ。

1月25日に心筋梗塞による心不全で亡くなった、俳優の藤村さん。長男で所属事務所社長の亜美さんが2月1日に会見し、藤村さんが2年前に小脳出血で倒れてから療養生活を続けていたことと、13年の12月には離婚していたことを明らかにした。

藤村さんは、96年4月に元タレントで28歳年下のみか代さんと再婚。15年12月には本誌の取材に“妻”として、そのみか代さんが藤村さんの近況を語っていた。当時、藤村さんは11年から続けていた『ぶらり途中下車の旅』(日本テレビ系)のナレーションを突然、降板。入院説や死亡説まで飛び交うなかのインタビューだった。

「藤村はこれまで胃がんや大動脈瘤など大病をいろいろしていますし、“ふつうの体”ではないんです」

こう語り、事実上芸能界を引退していることを認めた。夫の体を気遣う様子が印象的だったが、すでにこのとき離婚から1年たっていたのだ。プライベートを明かしたくないという、藤村さんの意向を汲んで離婚を隠し通そうとのではないかと、夏目さんは推測する。

「藤村さん夫妻の自宅は、バーのあるマンションの上階でした。仕事で遅くなっても藤村さんは毎日、店に顔を出していたんです。お客さんが来店すると『お帰りなさい』なんて、あの笑顔でおもてなししていましたね。藤村さんは奥さんのそばにいたくてしょうがなかったんです。あのバーは藤村さんが還暦を機に第二の人生をという意気込みで、スタートした店でした」

芸能人も訪れる人気店で、藤村さんの人柄もあって大繁盛だったという。しかし夏目さんは、みか代さんのサポートが大きかったという。

「奥さんは、気の利く人でした。マスター役の藤村さんはお客さんをいい気分にして帰らせる。それもこれも奥さんのアイデアだったのでは。奥さんが藤村さんを上手に操縦していたように見えました」

が、開店満15年を目前に夫妻の間である“もめごと”が起きたという。別の知人男性が語る。

「2人に決定的な“すれ違い”があったそうです。藤村さんは心臓手術を受けることを機に店をたたみ仕事も辞めようと思っていました。いっぽう、みか代さんは店も仕事もまだやれるから頑張ってほしい、と。無理して働くよりマイペースに暮らしたい藤村さんとしては、奥さんとゆったり過ごす老後の時間がほしかったのかもしれませんね」

10年に店を閉めることがきっかけで“すれ違い”が生じてしまったのだ。こうして離婚した藤村さんは前述のように15年10月に小脳出血で倒れ、千葉の病院で入院生活を送っていた。しかし昨年の夏に肺炎にかかり、藤村さんは転院を余儀なくされる。

「御殿場の病院に転院し、延命治療をしていました。このころから、意識が朦朧として会話もほとんどできなくなってしまったんです。長男が、深夜バスで東京から御殿場の病院まで通っては、献身的に看護されていたようですね」

孤独な療養生活を、都内の自宅で暮らしていた独身の長男が懸命に支えていた。小脳出血で倒れた藤村さんを発見し、救急車を呼んだのも長男だったという。亜実さんは会見で、藤村さんの最期を看取ったことをこう語った。

「私ひとりが、最期を見届けました。『お父さん長い間ありがとう。お父さんの子供に生まれて本当に幸せだった』と声をかけました。微笑んでくれたような気がします」

夏目さんは言う。

「私も息子がいますが、老いた父親をあそこまで面倒みられる息子がいるなんて、うらやましい限りですよ。オヒョイさんも大満足だったと思います」

伴侶と別れ、孤独な晩年を過ごした藤村さんだが、最愛の息子に見送られ微笑みながら天に召されたのだろう。